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国交省と「認証不正」事件とは?

財経新聞 / 2024年6月15日 17時41分

Photo: 誕生のきっかけはS県の陸事のチョンボだった「4ナンバー3トントラック」 ©sawahajime

 先に大問題になった「型式認定」の不正事件が一段落ついて、メーカー各社が社内の総点検をしたら、何社かで「不正」が見つかったと言うので、この問題が再燃した。

 確かに、国で定められた試験を、不正な方法で誤魔化して掻い潜ったのであると、これは大きな問題である。だがいろいろと解説を聞いていると、「国土交通省」が、ここまで居丈高に叫ぶ姿勢には、少々疑問を感じる。

●ヤリスとクラウン、追突されて被害が大きいのはどちら

 例えば、トヨタが「後部からの追突」試験で「1800kg」のテスト器具を使用したのは、定められた「1100kg」のテスト器具では無いので「不正」であるとされている。

 一般に、自動車が追突された場合、後部から突っ込んだ車がヤリス(980~1180kg)とクラウン(1750~1910kg)であれば、ヤリスに追突行された方が、クラウンに追突されたよりも、被害は軽微な筈だ。

 従って、例えばクラウンで追突試験をクリアしたから、(もっと軽い)ヤリスでは実際に試験をしていないが、試験はクリア出来るとした判断は、間違っていない。

 しかし国交省は、「定められた1100kgで試験をせずに、他の試験で実施した1800kgの実験結果を利用したのは不正だ」としているのだとか。

●お上が正しいとする役人根性

 「お役人」は「無謬(むびゅう)性」と言って、「自分達は、間違いはしない」と過信している。

 そこで、自分達よりも下位にある(と、彼等が勝手に思い込んでいる)「一般企業」=「下々」は、命令に従わせれば良いと、勘違いしがちだ。

 陸運事務所で、見解の相違によるトラブルがあった場合でも、メーカーや傘下の系列ディーラーは、例え無理難題を吹っ掛けられても、ひたすら謝って、穏便に収めようとする。

 陸運事務所で、係官相手に怒鳴り声を上げているのは、「街のモーター屋さん」位のものだ。

 彼等は「小役人」なんぞには意に介さない。なにしろ役人からしっぺ返しされても、屁とも思わないからだ。

●馬の尻尾で前方視界が遮られるか?

 昔、フロントガラスが「強化ガラス」が主流だった頃、マツダだけは高価だが安全性の高い、2枚のガラスをポリビニールブチラールで貼り合わせた「安全合わせガラス」を使っていた。

 1972年に登場した2代目ルーチェは、ポールアンテナなら風切り音や折損等が問題になるので、フロントガラスに馬の尻尾よりも細いアンテナ線をサンドイッチした。

 ところが当時の運輸省は、そのアンテナが「前方視界を妨げない証明をしろ」と宣った。

 馬の尻尾で前から来る車が隠れるか?

●3トンダンプ誕生の経緯

 きっかけはS県の陸運事務所が当時、4ナンバー小型車(全長4700mm×全幅1700mm×全高2000mm)は寸法内であっても、最大積載量は2トン未満に規制されていた為、3トン車は1ナンバーとなるべき所、間違って4ナンバーを交付したことだった。

 自分達の確認ミスだったにも拘わらず、「紛らわしい仕様を設定した」と逆恨みして、「陸運事務所に恥をかかせた」意趣返しで、メーカーにまでトバッチリが来て、結果的には、次期モデルの発売が遅延する事態も発生した。

 詳しくは『「4ナンバー」「最大積載量3000kg」トラック誕生裏話』(2022年7月25日付)を参照されたいが、小役人のメンツだけで、自動車メーカーの年間スケジュールまで狂わせる、許認可権を笠に着た所業であった。

●他にもあった迷惑行為

 トヨタがコロナを、「コロナ」と、その上級車種としての「コロナ・マークII」との2車種に発展成長させた。

 マツダも同様に、2代目ルーチェを、「ルーチェ」と、その上級車種として「ルーチェ・レガート」にしようと考えた。

 1977年の東京モーターショーでのマツダの配布資料は「ルーチェ・レガート」で作成されていたが、「ルーチェのモデルチェンジならレガートと表記するのはおかしい」とのクレームが付いて、モーターショー開会前夜に、関係者総動員で「黒塗り作業」をする事態が発生した。

 その時、トバッチリを受けたのが、いすゞフローリアンである。

 いすゞの配布資料に「フローリアン・S2ディーゼル」と表記されていたのを、マツダに対する「ご指導」への非難回避の目的であったか、これも一緒に「黒塗り作業」を課せられた。

 結果的には、2代目ルーチェは、2車種に発展成長することなく3代目ルーチェへのモデルチェンジとなった。

 いづれにしても、実情を理解出来ない監督官庁は、自らを省みる努力が必要だと考えさせられる事象である。

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