相場展望7月8日号 米国株: 米早期利下げ観測で、株価指数は最高値も、市場変化に留意 日本株: 投資家心理は強気続くが、過熱感と夏枯れに留意
財経新聞 / 2024年7月8日 10時20分
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/4、祝日・独立記念日で休場 2)7/5、NYダウ+67ドル高、39,375ドル・労働市場の軟化を示す6月雇用統計を受け、景気対策としてのFRBによる早期利下げ観測が強まった。
・それが、債券市場で金利低下となり、株式相場にとって追い風が吹き、S&P500とナスダック総合指数が最高値を更新した。
・ただ、トランプ氏が大統領選挙で優位となると、金利上昇のリスクが高まため、秋の大統領選にも目を離さないようにしたい。トランプ氏の政策は、 (1)景気浮揚のためのバラマキ政策で財政悪化 (2)対中国の関税60%引上げで輸入コスト増によるインフレ (3)移民政策で移民数が減少し、労働コストの上昇と購買力増加 を抑制を招き、インフレと金利高への懸念がある。
2)異変告げているのか、ビットコインの急落に注目 ・ビットコインの推移 6/7 71,230ドル 7/5 56,292ドル 差異 ▲14,938ドル安、▲20.97%下落
・ビットコインの急落は、仮想通貨市場で警戒感が強まっていることを示唆。
・この急落が、株式相場に波及するか否か、注目したい。
3)エヌビディアの株価は反落 ・アナリストの投資判断が引下げを機に、反落している。
・エヌビディアの株価推移 6/18 135.58ドル 7/05 125.83ドル 差異 ▲9.75ドル安、▲7.19%
・下落局面入りとされる▲10%安からみると、踏みとどまっている。ただ、一時▲13%安となってからの反発である。
・エヌビディアが米国株相場を牽引する主役となっていただけに、今後の米株式相場を占う意味で注目したい。
4)フランス総選挙が株式相場にとって波乱要因だが、7/7の決選投票で懸念が薄まる ・調査会社の予測では、極右・国民連合(RN)は3位に後退、左派連合が第1党で、マクロン大統領の与党連合が2位。
●3.トランプ氏が勝利なら米金利が急上昇、関税でインフレ加速も=市場筋(ロイターより抜粋)
1)エドモンド・ドゥ・ロスチャイルド・アセット・マネジメントのベンジャミン・メルマン最高投資責任者は7/4、11月の米大統領選でトランプ前大統領が勝利すれが、米国の長期債利回りが急上昇する可能性があるという認識を示した。2)メルマン氏は、トランプ氏の掲げる関税や移民政策によって、米労働市場と経済全体が圧力にさらされると指摘。トランプ氏とその政策は「かなりのインフレを引き起こすだろう」とし、「債券市場を巡る環境は強気かもしれないが、米国の政治リスクのため、さほど強気とは言えない」という考えを示した。
3)トランプ氏は、中国からの輸入品に対し最大60%の関税を課すことを提案しておりこれが値上げという形で米消費者に転嫁されれば、インフレが加速する可能性がある。
4)テレビ討論後、現職のバイデン大統領の不調が鮮明となったことを受け、米10年債利回りは3週間ぶりの高水準となる4.5%に迫った。トランプ氏の勝利に対する市場予測の高まりを反映しているとの指摘がある。
●4.米国のインフレ退治で大幅な進展も、目標達成には「まだ距離」=NY連銀総裁(ブルームバーグ)
●5.エヌビディアに異例の投資判断引下げ、更なる上昇余地見込めない (ブルームバーグ)
1)エヌビディアの株価は、2023年に約+240%、2024年では+156%値上がり。株価は「十分に評価されつつある」。■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/4、上海総合▲24安、2,957 2)7/5、上海総合▲7安、2,949■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/4、日経平均+332円高、40,913円 2)7/5、日経平均▲1円安、40,912円●2.日本株 : 投資家心理は強気続くが、過熱感と夏枯れに留意
1)日経平均が7/5に日中だが史上最高値を更新し、投資家心理は強気が続いている ・日経平均の推移 6/17 38,102円 7/05 40,912円 差引 +2,810円上昇、+7.37%上昇・日経平均は6/17を底に、短期間で大幅上昇をした。米国株の堅調がフォローの風となって、投資家心理の強気が奏功している。
・ただ、あまりの短期間での大幅上昇のため、いつ息切れがあっても不思議ではない。
2)過熱感を示す指数に留意(7/5現在) ・ストキャスティクス総合が89、FASTが95、SLOWが94と高水準。
・日経平均は7/1に▲1円安となった。値上がり銘柄数は303に対して、値下がり数は1,314と、相場に高値警戒感が出ている。もっとも、新高値銘柄数は102、新安値数は16と、少数の値がさ株に牽引される状況は健在である。
3)4~6月期決算ラリーは7月下旬~8月上旬、それまでは材料なく夏枯れ ・米国株高と円安進行が追い風となり、日本株は高値相場が続いている。
・ただ、円安は自動車・商社・機械など輸出関連企業の業績にプラスに働くが、エネルギー・食品・飼料など輸入コスト増が内需企業と家計に重くのしかかる。
・現実としては、賃金上昇を上回る物価高騰で、実質賃金のマイナスが2年間を超えるなど国民生活を直撃している。
・企業もコスト上昇に対して値上げで対応し、利益増に寄与してきた。その結果、政府の税収は企業からの法人税で大幅増収となっている。コスト増を上回る便乗値上げをしたためである。しかし、実質賃金マイナスが長引くと、家計を護るため消費支出の抑制となる。すでに、大手スーパーなどは一部商品の値下げで購買力を刺激する動きが出てきた。日本の国内総生産(GDP)はやがて縮小に向かうだろう。
・株式市場にも日本のGDP減退の影響が及んでくる。これからの2週間は、株式市場にとって材料が乏しくなることに、留意したい。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4004 レゾナック 黒字転換 ・6902 デンソー 業績好調 ・6966 三井ハイテック 業績好調執筆者プロフィール
中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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