AIを駆使した自律型火星探査の現状 NASA
財経新聞 / 2024年7月21日 21時49分
NASAはMSR(Mars Sample Return、火星サンプルリターン)ミッションの一環で、火星にPerseverance Rover(パーサヴィアランス・ローバー)を送り込み、生命の痕跡を探るべく探査を継続中だ。一連の探査によって得られたサンプルを地球で受け取れるのは2033年の予定で、非常に息の長いミッションとなるだけに、如何に有益なサンプルを探し出し、地球に持ち帰れるかがミッション成否のカギを握る。
今回は、火星で大活躍中のマーズローバーの、AIを用いた自律制御に関する話題をとりあげる。そもそもマーズローバーの自律制御が必要な理由は、地球と火星の距離にある。
月面ローバーの制御なら、地球と月の間の電波の往復にかかる時間は2.6秒のため、地球からの制御であってもさほどのタイムラグは生じないが、マーズローバーでは、地球から火星までの距離を電波で往復するのに約40分もかかり、地球からローバーを制御するのは実用的ではないからだ。
つまり、火星探査で得られた情報から、AIによって、リアルタイムにローバーが次に何をすべきか判断し、必要となる情報を臨機応変に適切に得ていく自律制御が必要だったのだ。これがなければ、これまでに得られた実績をさらに上げることは、困難だった。
NASAによれば、これまでの3年間はAIを駆使したローバーの自律制御のテストを繰り返し、AIの性能向上に費やされてきた。
具体的には、火星で採取した岩石の組成を分析し、その結果をリアルタイムに捉え、より深く探査する価値のある鉱物が含まれているかどうかを判断。そのような有用なサンプルが得られるサイトを、探し求めてきたのだ。
有用なものが存在しない場所はスキップし、有用な鉱物が見つかった場所では立ち止まって精査するという行動の繰り返しによって、ローバーが自律制御で探査した場所では有用な鉱物の分布を示すミネラルマップが作成されている。
もちろんAIによる行動パターンと得られたデータは毎日地球に送られ、必要に応じてブラッシュアップも行う。AIは学習すればするほどその性能は高まっていくため、火星での探査機会が増えれば増えるほど、探査の効率はより高められていくことだろう。
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