米エヌビディアに見る、経営者が果敢に決断する凄み
財経新聞 / 2024年7月27日 15時57分
米NVIDIAの株価は、7月23日の終値で122.59ドルをつけた。1カ月前の6月18日には135.58ドルで時価総額が526兆円となり、主役の座をGAFAから奪ったと大騒ぎになった。当時の熱狂を考えると、マーケットには落ち着きが戻ったようだ。
どんなに好調に業績を伸ばしていたとしても、永遠に伸ばし続けることはあり得ないから、現在は次のステップに向けての踊り場なのだろう。もちろん、様々な見方が存在するのは当然で、「まだ伸びる」という意見と共に、「壁に当たった、もうダメだ」という意見もある。
NVIDIAは19年に大きな転機を経験している。16年~17年にかけてNVIDIAが開発・販売していたGPU(グラフィックス処理半導体)がバカ売れしていた。暗号資産(仮想通貨)のマイニング作業に最高の適性があると認められていたためだが、マイナーと呼ばれるマイニング参加者が増加して競争が激しくなったことや、電気の爆食いをすることから先行きを懸念する声は出ていた。
※マイニングとは、取引データなどをブロックチェーンに保存する作業を指し、暗号資産を対価として受け取ることができる。英語で「採掘」を意味し、イメージに沿うとしてこの呼び方が定着した。
19年1月に米ラスベガスで開催されたCES2019(テクノロジー展示会)で、ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は「仮想通貨はおしまいだ」と断言して、暗号資産からの決別を宣言した。
公表されていない背景があるにしても、好調な売れ行きを見せていた自社の看板商品からの撤退を決断する胆力は並ではない。
逆に、ソフトバンクグループ(SBG)は16年に約3000億円で取得した同社の株式を全て売却して最大4000億円程度の損失発生を回避したと、19年2月の四半期決算説明会で発表した。もしそのまま持ち続けていたら、SBGは今頃20兆円前後の含み益を享受していたはずだ。両社経営者の器量に結びつけるのは短絡だが、時代認識と自社とを結びつける感性には大きな隔たりを感じる。
現在の状況を見ていると、NVIDIAがマイニングに特化したGPUの販売を続けていたとしても、尻すぼみにはならずに済んでいたかもしれないが、今日の栄光とは比較にならない地位に甘んじていることは間違いない。
何しろフアンCEOが、「NVIDIAはもはや半導体メーカーではない」と発言しても、違和感を感じさせないほどの存在感を見せている。
NVIDIAが3月に発表したB200 GPUには、合計2080億のトランジスターが搭載されている。著者のようなシロウトは「凄い」と感じるだけで、具体的なイメージはさっぱり湧いてこないが、今秋1,100万円程度で発売されることが見込まれるB200GPUの売れ行きが、「凄さ」の社会的評価を決定する。
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