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相場展望8月12日号 米国株: 米株式市場の関心は、(1)米国経済の成長・(2)FRBの金融政策 日本株: 米金利の低下で「円高」へ転換、政府・日銀の混乱が目立つ

財経新聞 / 2024年8月12日 10時36分

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/8、NYダウ+683ドル、39,446ドル  2)8/9、NYダウ+51ドル高、39,497ドル

●2.米国株: 米国株式市場の関心は、(1)米国経済の成長・(2)FRBの金融政策

 1)8/8、米国経済への懸念が和らぎ、米国株式相場が上昇、NYダウは+683ドル上昇   ・要因     ・新規失業保険申請件数が減少。          前週比▲1.7万件減の23.3万件、予想24万件も下回る。     ・半導体株指数(SOX)が8/8に大幅持ち直し。      SOXが8/8に前日比+6.86%増と大幅上昇。     ・エヌビディア時価総額が▲0.9兆ドル減少し、投資投資妙味。      株価は6月半ばの最高値から▲27%下落。      人工知能(AI)への投資は継続しており、長期投資に値ごろ感が出やすい位置にある。     ・米国長期金利上昇し、米国経済の堅調さ示す。

 2)NYダウの8月上旬は▲1,300ドルあまり安、急落前の位置に戻らず   ・NYダウの推移     7/31終値 40,482ドル     8/09   39,497     差引   ▲1,345ドル安・下落率▲3.32%

 3)やはり、米国経済は失速、金利は低下方向にある   ・7月ISM非製造業景況感指数は51.4と予想51.0を上回り、6月の48.8から改善。そして、2カ月ぶりに景況感の境目となる50を上回った。それで、米国経済の底堅さを示したとして、米国株式相場は反発し上昇した。   ・失業率は7月に予想外に4.3%に上昇し、景気後退が近付きつつあると示唆。   ・失業率は前年同期比から約+0.5%上昇し、経験則からは景気失速が濃厚となる。ISM非製造業景況感指数は景気の境目となる50を超えたが、境目付近にあり、米国経済の底堅さを示したとは言い切れない。

 4)米国株式相場の関心は、(1)米国経済の成長 (2)FRBの金融政策に集中   ・8/1~7は、NYダウは▲2,079ドル安となった要因。    ・7月失業率が4.3%に上昇するなど経済指標が悪化し、米国経済後退への警戒感からNYダウは下落した。    ・FRBによる金利低下策で、低迷する米国経済のテコ入れの声が強まった。

  ・8/8~9に、NYダウが+734ドル上昇した要因。    ・労働市場で新規失業保険申請件数が前週から減り、改善した。このため景気悪化への懸念が和らいだ。    ・大型ハイテク株と半導体株の株価が持ち直した。    ・米国経済への先行き不透明感から、市場の関心は①米国経済の成長と②FRBの金融政策に集まっている。    ・7月の米国消費者物価指数(CPI)、米国小売売上高の公表内容に注目。

●3.米国・新規失業保険申請件数は23.3万件、前週比▲1.7万件減、利下げ観測後退(ロイター)

 1)FRB利下げ観測後退。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/8、上海総合+0.07高、2,869  2)8/9、上海総合▲7安、2,862

●2.中国の7月新車販売台数は前年同月比▲5.2%減と、2カ月連続で減少(TBS)

 1)節約志向が強まり、国内需要の落ち込み鮮明。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/8、日経平均▲258円安、34,831円   2)8/9、日経平均+193円高、35,025円 

●2.日本株 : 米国長期金利の低下で「円高」へ転換、日本政府・日銀の混乱が目立つ

 1)8月上旬の大荒れの要因   ・米国経済の後退懸念   ・FRBによる政策金利引下げ確率が急伸。   ・日本の実質賃金のマイナス成長が26カ月連続で消費支出が弱く日本経済に懸念。   ・日本経済が不透明感を強めるなか、逆行して日銀が不意打ち的に利上げ実施。   ・日米の金利差が急速に縮小し、円高へと突如急伸。米国は金利低下、日本は金利上昇で、金利差縮小⇒円高へと転換。   ・7月時点では、日経平均の株価収益率は高い水準にあって、売られやすい位置にあった。

 2)NYダウと日経平均の8月上旬の動き   ・NYダウと日経平均の推移            NYダウ     日経平均     7/31終値  40,842ドル    39,101円     8/09    39,497      35,025      下落幅  ▲1,345ドル安   ▲4,076円安 ⇒ 8/1~5 ▲7,643円安      下落率  ▲3.29%安    ▲10.42%安    8/6~9 +3,567円高   ・日経平均は8月上旬は▲4,076円安となったが、前半▲7,643円安・後半+3,567円高だった。前半の下落幅に対して、後半は+46.6%戻した。前半の下げの結果、年内の株価上昇を帳消しにした銘柄が多いのが目立った。後半の上げの場面でも、戻し幅は8/6こそ大幅上昇したが、8/6~7の上昇は限られた。個別銘柄では、チャート上からは「上に行くか・下に行くか」の分岐点にある銘柄が多くあったのが目立った。

 3)円相場の流れは「円高」   ・円・ドル相場は、日米金利差の動向に影響されやすい。   ・日米の長期金利差は縮小方向にある。     ・日米金利差の推移       7/01    3.393%       8/03    2.851       8/05    3.010       8/08    3.142       8/09    3.087     ・つまり、日米金利差の縮小しており、為替は「円高」方向にある。   ・円相場     ・円相場の推移       7/03       162円/ドル       7/31       149       8/05       141       8/06        145       8/07       146       8/08       146       8/09       147       8/09 米国時間  146     ・円・ドル相場は、7/03⇒8/05までの約1カ月間で「+21円もの円高」と急伸した。その後、8/09までは反動で「▲6円の円安」になった。そして、8/09の米国時間では前日比「+1円の円高」傾向を示した。     ・日銀の総裁で「円高」、副総裁の発言で「円安」に転じた影響もあろうが、本質的には米国長期金利の変動によって、為替が変化したと受け止めるべきである。

 4)米国の長期金利は低下する方向   ・米国経済は軟化傾向にあり、労働市場も失業率7月に4.3%に上昇し悪化。   ・失業率は予想外に上昇⇒米国経済の後退が近付きつつあると示唆。   ・米国FRBは政策金利の横ばい⇒米国経済失速へのテコ入れの必要性が高まるとみる。    ・米国のインフレ率は昨年同時期から下がり、目標値の2%に近付きつつある。    ・FRBは利下げを検討する時期にあり、実施可能性の確率が高いとみる。早ければ9月にも利下げの可能性があろう。    ・そうなれば、米国長期金利が低下し、日米金利差が縮み、円高が予想される。

 5)海外短期筋は「円売り」⇒「円買い」へ転換したとみる   ・為替が円高へと急伸した背景に、海外短期筋の「円売り持ち高の解消」にある。その解消を進めたのは、8/5の植田・日銀総による「金利引上げ」会見がある。それは、円安による物価高で生活苦による国民の不満を解決し、支持率向上を意図した岸田首相の思惑がリードした結果での「利上げ」決定であった。日銀の金利決定の主要メンバーのうち5人が政府関係者である。また、植田・日銀総裁に任命したのも岸田首相である。最近まで、植田・日銀総裁は「物価上昇が2%超えの定着はみられない」と発言しており、金利引上げは慎重であった。巨額な為替介入しても、円安傾向が収まらないとみた首相が、金利引上げによる円高を企てたとみている。

  ・ところが、日本株式市場は8/5、日銀の金利引上げを受けて、海外短期筋が主導して売り攻勢をかけ、売りが売りを呼んで、追証の売りも発生させて、日経平均は▲4,451円安と大幅下落した。

  ・政府と日銀は株価の急落におののき、翌日8/6に内田・日銀副総裁は講演会で日銀総裁の発言訂正を迫られた。「当面、現在の金利水準で金融緩和をしっかり続ける必要がある」との発言をして訂正した。しかも「金融市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」とも明言した。結果、金利引上げの不安感が打ち消された日経平均は+3,217円と大幅高で切り返した。

 6)海外短期筋にひれ伏した岸田政権と日銀   ・同時に、円相場も8/5の141円台から、翌8/6に146円近辺に5円の円安を演じた。海外短期筋は株価指数先物を積極的に買って、日経平均を押し上げた。もちろん、海外短期筋は円売りも同時並行で行ったと思われる。

  ・円相場が1日で5円もの円安進行したのは異常である。日銀総裁の発言を、翌日に副総裁が否定するというあり得ないことが起こった。日銀は、海外短期筋にひれ伏したことになったことになる。

  ・為替が円高へと急伸した背景に、海外短期筋の「円売り持ち高の解消」もある。そもそも、米国の景気失速懸念から景気テコ入れのため、FRBは金利低下を探る局面入りをしている。つまり、それだけで日米金利差は縮小傾向の段階に入ったと言える。そこに、日銀の金利引上げが加わった。さらに日米金利差が縮むことになった。ただ、日銀の金利引き上げ幅は、米国金利引き下げ幅よりは小さい。つまり、円・ドル相場をみる上での日米金利差は「米国金利の下げ幅」を軸にみることになる。

  ・したがって、日銀は、8/5に金利引上げを決定する必要はなかった。日本の金利を引上げなくても、米国経済失速・失業率の問題解決のため、米国が金利引下げをして日米金利差は縮小⇒円高に動くためだ。日米金利差が縮小することが分かっている海外短期筋は、為替先物市場で「円安には賭けない」。彼らは「円高」に動くとみて、為替市場でも「円買い」で仕掛けてくるだろう。円相場は、円安・ドル高⇒円高・ドル安局面に入ったのである。

●3.シャープ、4~6月期純損益▲12億円の赤字(前年同期は55億円の黒字)(時事通信)

 1)液晶事業の不振に加え、事業構造改革費用を▲34億円計上したことが響いた。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・3776 ブロードバンドタワー   黒字転換。  ・3865 北越           業績堅調。  ・6902 デンソー         業績好調。

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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