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米FRBは金利引き下げ、一方で日銀政策委員会のメンバーは相次いで金利引き上げ語る

財経新聞 / 2024年9月20日 17時26分

(c) 123rf

 日本銀行の植田和夫総裁が、7月31日に行われた金融政策決定会合後の記者会見で「タカ派」と受け止められる発言をしたことから、8月5日に株式相場が暴落と言われる値下げを記録したことはいまだに鮮明な記憶である。

 8月7日に内田真一副総裁が講演の中で、植田発言を意識したかのように「金融資本市場が不安定な状況で利上げをすることはない」と発言したことがきっかけとなって、株式市場が落ち着きを取り戻した。

 植田総裁は23日にも、「物価見通しが実現すれば金融緩和の度合いを調整する」(金利を引き上げる)と述べた。27日には氷見野良三副総裁が、「今後の金融政策は7月の利上げの影響を見極めつつ、金融緩和の度合いを調整する」と発言して植田総裁と足並みを揃えた。

 日銀の最高意思決定機関である日銀政策委員会は、植田総裁、内田・氷見野副総裁と、安達・中村・野口・中川・高田・田村氏の6名の審議委員で構成され、総員で9名である。奇数であるのは言うまでもなく、議論が紛糾して全員の意見が同じ方向でまとめられない場合に賛否の数で決定することを想定しているからだ。

 9月5日には高田創審議委員が「経済・物価の見通しがある程度実現していけば、それに応じて(金融緩和の度合いを)段階的に調整していく」と述べ、6日後の11日には中川順子審議委員が「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、金融緩和の度合いを調整していくことになる(要は:物価が想定通りに上昇するなら金利を引き上げる)」と続いた。

 翌12日には田村直樹審議委員が「(経済・物価が想定通りに推移するなら)段階的に金利を引き上げ、適切な短期金利の水準を探る必要がある」と述べた。(内田副総裁は函館、植田総裁は衆院・財政金融委員会(国会閉会中審査)で、氷見野副総裁は山梨県、高田氏は石川県、中川氏は秋田県、田村氏は岡山県での発言で、植田総裁以外は経済金融懇談会での発言である)。

 経済金融懇談会は例年恒例の行事なので、今後安達・中村・野口氏の各氏が数カ月のうちに登場するだろう。

 結局株式相場の暴落後に登場した日銀政策委員会の構成委員6名は、いずれもお役所的で分かりにくい表現を駆使しているが、「金利を引き上げたい」という共通の意識のもとに「状況は慎重に見極めるが、金利引き上げの時期になれば段階的に見直していく」と歩調を揃えている。

 半数を超える委員が引き上げを匂わせていることを考えると、今後の関心は実施時期と引き上げ幅に尽きる。

 日本は世界の金融政策の中で、周回遅れのランナーだ。宿願だった金利の引き上げが実現したとは言っても僅か0.25%である。円滑な金融政策を実施するためには最低でも1~2%程度の金利水準が必要だろう。想定外の幸運が続いて半年毎に0.5%の金利引き上げが実現できたとしても、来年中に中立金利(緩和でも引き締めでもない金利水準:8月の経済金融懇談会で氷見野副総裁が提唱した)を実現することは至難である。

 米FRBの金利引き下げが具体的な検討課題になっている。世界経済を牽引する米国が金利引き下げに向かっている中で、日銀が金利引き上げに向かうというチグハグさは、周回遅れのランナーの悲哀そのものだ。米国がゴールに飛び込もうとしている時に、並走している日本はゴールまであと1周(或いはそれ以上)を残しているのだから。

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