相場展望11月11日号 米国株: トランプ氏の関税引上げ策が引き起こす、貿易戦争に警戒 中国株: デフレ懸念が続く中国国内経済、デフレを輸出し嫌われる中国へ
財経新聞 / 2024年11月11日 13時44分
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)11/7、NYダウ▲0.59ドル安、43,729ドル 2)11/8、NYダウ+259ドル高、43,988ドル●2.米国株:トランプ氏の関税引上げ策が引き起こす、貿易戦争に警戒
1)トランプ氏の関税引上げ策が引き起こす、貿易戦争に警戒 ・米国はトランプ氏の大統領選で掲げた方針 ・中国に対する関税を60%に引上げる。 ・大幅な減税。 これが米国でインフレを再燃させ、財政赤字の拡大をもたらすという見方から、米国では長期金利が上昇傾向にある。 米国長期金利の推移 9/16 10/1 11/6 11/8 米国10年債利回り 3.551% 3.732 4.432 4.306・米国長期金利上昇で各国の長期金利差が拡大し、ドル高・各国通貨安となっている。
・各国の通貨安は、各国から米国への輸出攻勢を強めることになる。
2)そして、トランプ氏は2期目の大統領就任後に、同盟国に対しても関税引上げ ・現在の欧州は企業の工場閉鎖など経済不振が明らかになっている。それだけに、米国の関税引上げは世界の貿易を縮小させる可能性がある。
・トランプ氏の関税引上げが、世界経済を混乱させる要因となり得る。
●3.米国FRBは11/7、▲0.25%利下げを決定、利下げは2会合連続(NHK)
1)インフレ率は、FRBの目標である2%に向かって進展している、とした。9月の消費者物価指数は前年同月比+2.4%の上昇と、6カ月連続で前の月を下回り、インフレの鈍化傾向が続いている。労働市場の逼迫が改善してきたという認識を示した。 2)この決定によって、政策金利は4.5~4.75%の幅になる。 3)トランプ氏が大統領選で勝利したことで、追加関税の導入や減税などの政策がインフレを再加速させるという見方も出ており、今後の物価の動向やFRBの利下げペースが焦点となる。■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)11/7、上海総合+86高、3,470 2)11/8、上海総合▲18安、3,452●2.中国株:デフレ懸念が続く中国国内経済、デフレを輸出し嫌われる中国へ
1)デフレ懸念が続く中国国内経済 ・中国の10月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+0.3%増と低水準が続いている。内訳でみると、生鮮食品や豚肉などの食料品の高騰があっての+0.3%である。・生産者物価指数(PPI)は前年同月比▲2.9%に低下し、25カ月連続で前年割れとなった。予想の▲2.5%を下回った。
・中国国内の需要が低迷し、デフレが進行している。中国では習近平・総書記による不動産会社への「3つのレッドライン」によって融資が絞られ不動産業業界で経営不振が蔓延した。結果、新築住宅建設は停止し、不動産価格は下落した。中国の家計資産の7割が不動産投資であるだけに、家計を直撃した。国民は家計を守るため、消費支出を切り詰めて債務返済を優先した。中国では不動産業界はセメント・鉄鋼・家具など幅広い業界を巻き込み中国国内総生産(GDP)の約3割を占めている。それだけに、業界の苦境はそのまま給料遅延・失業者増大へと直結した。さらに、地方政府の財政収入の4割を占める土地売却益が激減した。地方政府は中国でのインフラ投資を担っているが、財政悪化でインフラ投資が滞り、雇用悪化に波及した。さらに、地方政府は年金基金も運営しているが、年金支給にも影響している。また、地方公務員の給与カット、解放軍への手当支給減少なども生じている。
・習近平・指導部による経済テコ入れ策は、患部の中心を外した周辺部を対象に実施されている。これでは苦境する中国経済ではなく⇒困窮する中国経済への途上にあるといえる。外科手術が必要なのに、いまだに内科的処置に埋没しているとしかみえない。中国経済はデフレからの脱却は容易ではない。
2)デフレを輸出する中国、欧米そして東南アジアからも嫌われ始めた中国 ・米国はトランプ氏の大統領選で掲げた方針 ・中国に対する関税を60%に引上げ。 ・米国内での大幅減税。 これが米国でインフレを再燃させ、財政赤字の拡大をもたらすという見方から、米国では長期金利が上昇傾向にある。 米国長期金利の推移 9/16 10/1 11/6 11/8 米国10年債利回り 3.551% 3.732 4.432 4.306
・米国長期金利が上昇し、米国ドル高:中国人民元が下落 中国は人民元安が進展し、輸出攻勢を掛けやすい為替相場になってきた。
・米国トランプ氏が中国製品に対して60%の関税を課すと、米国への輸出が抑制されるが、東南アジアに中国から安価で大量の製品が押し寄せることになる。
・中国は生産過剰能力を削減しないため、東南アジア諸国では警戒感が高まる。中国製品の安価で大量輸出は、輸出相手国への「デフレの輸出」も引き起こす。タイ国では、中国から輸入される、400円と安価で大量の綿パンツが出回って、タイの現地企業を廃業に追い込み、失業者を増やしている。さらに中国資本企業による、フライドチキンが1個70円、コーヒーが200円などが登場するなど、中国の飲食チェーンはタイ国の通常価格から3割安い価格の店舗が急拡大している。このように中国製品や中国企業の存在が、タイ国では現地企業が追いやられ失業者が増えるなど社会不安を増大させている。インドネシアでは輸入が拡大したニットなど繊維製品を対象に緊急輸入制限措置を講じて、国内企業の保護に乗り出した。
・中国では過剰生産を抑制しないため、輸出攻勢を掛けることになっている。その輸出製品は、繊維製品にとどまらず電気自動車や太陽光パネルなど多種に拡大している。
・中国はすでに欧州連合(EU)や米国と貿易摩擦を引き起こしている。EUでも中国製電気自動車(EV)の大量・安値輸出で、EU内の自動車製造企業の生産縮小・工場閉鎖・従業員解雇など社会不安が起きている。
・中国は洪水のようなの安値輸出で、中国の過剰生産能力と雇用を維持してきた。ところが、コロナ禍では一転して中国国内への供給重視に転換し、輸出を止め、世界のサプライチェーンを混乱させた。そして、コロナ禍が終わると、中国経済の悪化にともない、強烈なデフレ輸出へと突き進んでいる。しかし、それが世界からの孤立化することに繋がっている。中国本位の輸出でなく、輸出先の国の状況を踏まえながら秩序ある輸出を求める行動に転化しなければ、世界の嫌われ国になってしまう可能性がある。
●3.中国、10月消費者物価+0.3%上昇に鈍化、9月から▲0.1%鈍化した(共同通信)
●4.中国への直接投資、今年は1990年以来の初の流出超過か?、景気低迷を嫌気(ブルームバーグ)
1)中国・国家為替管理局(SAFE)が11/8発表したデータによると、中国の国際収支における対中国直接投資は7~9月期で▲81億ドル(約▲1兆2,400億円)の流出超過だった。1~9月が約▲130億ドルの流出超過。2)中国への直接投資は2021年に過去最高を記録したが、その後3年にわたって大幅に落ち込んでいる。地政学的な緊張の高まりや中国経済に対する悲観、自動車などの一部業界で中国企業との競争激化していることが背景にある。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)11/7、日経平均▲99円安、39,381円 2)11/8、日経平均+118円高、39,500円●2.アイシン、上半期決算で純利益▲9割近く減少し80億円の黒字(東海テレビ)
1)中国市場での苦戦と、国内メーカーの生産停止の影響。●3.マツダ、中間決算最終利益は▲67%減の353億円黒字、通期予想は下方修正(NHK)
1)米国での販売奨励金がかさんだため。 2)通期最終利益予想は1,500⇒1,400億円黒字に引下げ、前期比▲32.6%減。■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・5706 三井金属鉱山 業績好調。 ・7369 シマノ 業績回復期待。 ・8750 第一生命 業績好調。執筆者プロフィール
中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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