「犬小屋の中」とは?意外な歴史を持つ犬にまつわる英語イディオム
財経新聞 / 2024年11月24日 15時6分
「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」、「飼い犬に手を噛まれる」など、犬にまつわることわざやイディオムは日本語に無数にある。英語でもそれは同様だ。
今回はそんな犬にまつわる英語のイディオムの1つ、「in the doghouse」を紹介する。ユーモラスで皮肉めいた英語の文化が息づいているイディオムだが、どのようにして日常会話に定着したのかを掘り下げてみよう。
■In the Doghouse
「in the doghouse」、直訳すると「犬小屋の中」だが、イディオムとしては、誰かを怒らせたり失望させたりして、好意を失った状態を意味する表現である。この言葉は特に家庭内でのやり取りや親しい人間関係において使われることが多い。このイディオムの起源には複数の説があるが、いずれも確証はない。
ある説では、奴隷貿易の時代にまで遡るという。奴隷貿易に従事していた船では、乗組員の寝床として犬小屋スタイルの小屋が甲板に作られることがあった。これらは暑く、湿気が多く、快適さに欠けたため、それに由来して、不快な状況に置かれることを「in the doghouse」と呼ぶようになったということだ。
列車や船舶の宿泊設備に由来するという説もある。19世紀、列車や船での旅では、低所得者向けに「dog houses」と呼ばれる小型で質素な寝床が提供されることがあった。もちろんそれは、裕福な層が利用するキャビンとは対照的な低待遇である。この差別的な待遇が、「犬小屋に入る」という否定的なイディオムに発展したという説だ。
もう1つ、『ピーター・パン』の影響という説も有名だ。J.M.バリーの戯曲『ピーター・パン』(1904年)では、父親のダーリング氏が子供たちがいなくなった責任を感じ、自ら飼い犬ナナの犬小屋に入るシーンが描かれている。このエピソードから「in the doghouse」がイディオムとして広まったという説だが、他の説と同様に確定的なものではない。
いずれの説も明確な決定打はないものの、20世紀初頭にイディオムとして定着したと考えられている。特にアメリカ英語圏で用いられるようになり、その後、他の英語圏にも広く普及した。今でも「不興を買う」「お目玉をくらう」といった意味で、日常会話で頻繁に登場する表現だ。
例文 ・After forgetting her birthday, I was in the doghouse for a week. (誕生日を忘れた後、1週間も彼女に冷たくされた) ・He broke the rules and now he’s in the doghouse with the coach. (彼はルールを破り、コーチに叱られている)
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