ドイツの政局不安で新たなユーロ危機か⁉
財経新聞 / 2024年11月25日 18時56分
●ドイツ連立政権崩壊でユーロ安
11月に入りユーロが急落し、ユーロ・米ドルが一時1ユーロ=1.04ドルを下回り、2022年11月以来の水準まで低下した。背景には、11月5日の米国大統領選挙でトランプ氏が当選したことによりドル高が進んだことや、6日にドイツのショルツ首相が自由民主党のリントナー財務相を解任したことにより、3党による連立政権が崩壊したことが影響していると見られている。
米長期金利が上昇する一方、ドイツの長期金利が低下し、独米の金利差が拡大している。
ユーロの盟主であるドイツの不安により、再びパリティ割れ(1ユーロ=1ドル)が現実のものとなり、新たなユーロ危機となるのだろうか?
●ドイツ連立政権の崩壊の顛末
背景にはドイツの景気低迷がある。2024年の実質GDP成長率予測はマイナス0.2%で、このままでは2年連続でのマイナス成長となる。これは、2002年~2003年以来で、東西ドイツの統一後では2回目となる。物価高による個人消費の停滞、中国経済など他国経済の悪化による輸出の伸び悩み、VWに象徴されるような製造業の落ち込みなどが、原因に挙げられる。
景気低迷の中、2025年予算案を巡って、政権与党3党の対立が深まっている。
ショルツ首相属する社会民主党(SPD)と緑の党は、景気刺激や環境対策のための財政支出に積極的な姿勢に対し、リントナー財務相属する自由民主党(FDP)は財政規律を重視するため、意見が対立。
SPD・緑の党・FDPによる連立は崩壊することになり、ショルツ氏は2025年1月に信任投票を実施すると表明したものの、その後の協議で12月16日に前倒しされることになった。2025年2月には、総選挙も前倒しで行われる見込みだ。
●他国も対岸の火事ではない
ユーロ安は輸出大国であるドイツにとっては追い風のはずだが、その恩恵を相殺するほど景気悪化の危機感がある。ユーロ圏全体のGDPで見ると、0.4%のプラス成長で、ドイツにとってユーロ安メリットは得られなくても追い風ではある。
しかしトランプ氏は就任後の関税引き上げを示唆しており、欧州も影響を受けることは間違いない。
日本など、ドイツ同様に少数与党である国は政治の停滞が警戒され、連立政権の動向が大きく注目される。決められない政治は、政治リスクとして市場では売りの対象になりやすい。
インフレによる景気停滞、世界経済の減速、利下げ問題といずれもドイツだけの問題ではなく、他国も同様のリスクには警戒が必要だ。
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