「犬のように気分が悪い」「犬のように疲れた」? 犬にまつわる英語イディオム
財経新聞 / 2024年12月2日 13時19分
前回に引き続き、今回も犬にまつわる英語のイディオムを紹介したい。
犬は人間と古くから深いかかわりを持つ動物だから、その習性や行動が多くの表現の着想源となってきた。今回紹介する、体調や疲労を表すイディオムには、犬の生活や歴史的な背景が色濃く反映されている。ふだん何気なく使われる英語表現にも、興味深い由来が隠されているのだ。
■Sick as a Dog
「sick as a dog」とは、気分が悪い様子や病気であることを意味するイディオムだ。吐き気や体調不良をユーモラスに強調したい場面でよく使われる。この表現の由来は、歴史的な犬の暮らしぶりに起因すると考えられている。現代では、犬は家族の一員として扱われ、栄養価の高いドッグフードや獣医による専門的なケアを受けられる。しかし過去の犬の暮らしは、非常に厳しいものであった。
その昔、犬は家畜として飼われ、食事は人間が残した食べ物、いわゆる残飯が主だった。野菜くずや骨、また腐った食べ物が含まれることも珍しくない。
このような食事は、当然ながら犬の消化に大きな負担をかけ、頻繁に嘔吐や下痢を引き起こしていたとされる。また当時は、獣医のような専門的なケアもなく、病気や体調不良に苦しむ犬が多かった。
このように、まさに犬の苦しむ姿から、「sick as a dog」というイディオムが誕生したのである。
使用例 ・After the roller coaster ride, she was sick as a dog. (ジェットコースターに乗った後、彼女はひどく気分が悪くなった)
■Dog Tired
「dog tired」とは、極度に疲れている状態を表すイディオムだ。この表現は、体力を使い果たした状況や心身ともに消耗しきった様子を描写する際に用いられる。このイディオムの背景もまた、犬の習性が関係している。犬は遊ぶときや何かに夢中になっているとき、全力で行動する傾向がある。そしてエネルギーを使い果たした後は、その場に倒れ込むように休む。このような犬の疲労した姿が、「dog tired」という表現につながったようだ。
また一つの説として、他の多くの英語表現と同様、シェイクスピアの戯曲に由来があるという話もある。具体的には、『The Taming of the Shrew(じゃじゃ馬ならし)』の中で、従者の一人が次のように述べている箇所だ。
・Oh Master, I have watched so long that I am dog-weary. (ああご主人様、あまりにも長く見張りを続けていたので、犬のように疲れ果てました)
この「dog-weary」という表現が後に「dog tired」として広まり、一般的なイディオムとして定着したという説だ。
使用例 ・After moving furniture all day, I was dog tired by the evening. (1日中家具を運んで、夕方にはすっかり疲れ果てていた)
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