プラザ合意に学ぶ、意図的な相場の暴走:トランプ相場への不安
財経新聞 / 2025年1月9日 13時25分
米ドナルド・トランプ大統領の「関税」「金利」「円高」政策等々を巡り、「恐れ」を前面に諸説飛びかっている。さて・・・
1980年代終盤の「バブル」、以降「失われた20余年間」の日本経済の悲惨の流れがどうしても蘇ってきてしまう。その原因の契機は「プラザ合意」(1985年9月27日)という固定概念があるからだ。当時は中年記者として取材の現場に居た。がありていなところあの時代の感としては、「バブル酒に酔った」印象の方が強い。
バブル酒の酔いに恥じながら、後日「何故、かくも円は急上昇したのか」をプラザ合意時の大蔵省財務官:故大場智満氏(国際金融情報センター理事長)に聞いた。
「バブルはプラザ合意が、少なくても意識して生みだしたのではい」と言い、懇切丁寧にこう説明してくれた。
『第1期こそ強い米国を求め成功したレーガン政権だが、第2期入り早々一転し破綻に追い込まれた。「為替相場の見直しが必要ではないか」と1983年の先進国首脳会談で提唱したのは、当時のフランスのミッテラン大統領だった。当時私は大蔵省の財務官。交渉の場に臨んだ。検討の当初、米国は為替市場の協調介入に懐疑的だった。一転したのは85年初め。ベーカー財務長官・マルフォード財務次官体制が誕生してからだった。為替の市場介入も「不均衡是正」も有力な方向で進んでいった。
大蔵省にも「円は過小評価されているという思いがあったから、ある程度の円上昇は仕方がないというつもりで交渉の場に臨んでいた。個人的には15%程度、205円前後の円高は仕方がないと前交渉に臨んでいた」』とした上で、こう続けた。
『があれほどのドル安(円高)が進むとは、席についていたメンバー(通貨マフィア)の誰もが予想していなかったことだ。間違いない。86年には1ドル/160円から170円で落ち着くかにもみえた。87年2月にはG7の間で「ドル高修正の目的は達した」というルーブル宣言が出された。しかし円は一気に120円台まで駆け上がっていった・・・』。
何故、という問いに大場氏は「予想外の引き金」を語った。87年、米国の金利が上昇に転じた。『金利上昇、債券下落。金利が下降局面のうちはドル安に為替差損も、債券価格の上昇でカバーしうるから米国債投資は減らない。がドル安債券安となると事情は一変する。米国債投資(ドル買い)減少に転じる。金利上昇がドル安スパイラルを加速させてしまった』。
一括りで言えば「仕掛けられた相場には、予期せぬ事態が伴い枠を取っ払ってしまう」ということか。
トランプ大統領の仕掛けにも、同様な流れが生じきれないという保証はどこにもない。故に、仕掛けられた相場は怖い。
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