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相場展望1月30日号 米国株: 中国DeepSeekショック、FRBは金利を据え置き 日本株: 日経平均の先行きも安心してはおれない

財経新聞 / 2025年1月30日 14時13分

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/27、NYダウ+289ドル高、44,713ドル  2)1/28、NYダウ+136ドル高、44,850ドル  3)1/29、NYダウ▲136ドル安、44,713ドル

●2.米国株:中国DeepSeekショック、FRBは金利を据え置き

 1)1/27、中国DeepSeekショックで、半導体と電力関連株に売りが殺到   ・中国DeepSeek(ディープシーク)の低コスト人工知能(AI)アプリの出現で、米国半導体大手エヌビディアなどのAI優位性を脅かすことへの懸念から、世界的にハイテク株が売られ大幅安となった。

  ・DeepSeekのアプリは、米欧AIアプリの30分の1のコストと画期的。より安価なAIによって、実生活でのAIの利用が爆発的に増える可能性がある。

  ・これにより、半導体の需要が減り、大量の電力生産の必要性が減り、大規模なデータセンターの必要性が減る可能性がある。

  ・リスク回避で債券が買われて債券利回りが低下、VIX指数は大幅上昇し、為替は円高・ドル安が進行した。

  ・DeepSeekショックで急落した銘柄。      エヌビディア▲17%安、ブロードコム▲17%安、オラクル▲14%安、      マイクロン▲12%安、アーム▲10%安、アプライド▲7%安、AMD▲6%安

  ・VIX恐怖指数は+21%増と急騰。

  ・AI投資が比較的少ないアップルは+3.1%高した。

 2)投資家はリスク回避で安全資産とされる国債に資金をシフト⇒米国金利低下⇒日本・米国の金利差縮小で円高

 3)1/28、ディープ・ショックから米国ハイテク株が回復   ・AI半導体・エヌビディア株価は1/27に▲17%下落⇒1/28に+9%高と反発した。

  ・DeepSeekの恩恵を受け、開発コストが下がり・AIの普及拡大が見込めるとの見方が浮上し、セールスフォースやアップルが+4%高、マイクロソフトも+3%高と上昇した。

 4)DeepSeekのAIアプリの正答率は17%と低く、競合する米欧の11アプリの中で10位との信頼性評価   ・米欧の競合するアプリの正答率62%と比べると17%と低く優位性はない。(ロイター)

  ・中国に関する微妙な質問に対して、「回答できない」が多い。例えば、習近平・毛沢東・天安門など。中国以外の質問に対しても、中国共産党や中国政府の見解を繰り返すなど、中国の立場に立ったた回答事例が目立った。

  ・DeepSeekのAIアプリは、新華社や環球時報、人民解放軍機関紙と並ぶメディアとなりそうだ。

  5)米国FRBは4会合ぶりに「利下げ見送り」   ・12月の消費者物価指数が+2.9%と3カ月連続で上昇しているため、FRBとしては金利を現在の水準にとどめることでインフレの再燃を防ぎたいとの考えのようだ。

  ・トランプ大統領は米国経済の好調を持続させるために利下げ要求をしており、パウエルFRB議長の考えと食い違いがある。今後、FRBとトランプ氏との綱引きに注目したい。

●3.パウエル米国FRB議長のFOMC後の記者会見要旨(ロイター)

 1)米国連邦準備理事会(FRB)は1/28~29に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25~4.50%に据え置いた。

 2)会見の要旨   ・経済は目標に向かって大きく進展   ・インフレ目標にさらに近づいたが、いくぶん高止まり   ・2024年のGDPは+2%超の伸びとなった見通し   ・設備投資は減速したもよう   ・労働市場の状況は堅調で、おおむね均衡している   ・失業率は安定し、低水準にとどまっている   ・労働市場はインフレ圧力の源には、なっていない   ・昨年12月のPCE総合は、前年比+2.6%上昇、コア指数は+2.8%上昇   ・FRBの目標達成に対するリスクはおおむね均衡   ・政策金利、政策スタンスの調整を急ぐ必要はない

 3)FRB議長、トランプ氏の利下げ要求にコメントせず、新政策を注視と述べた。

●4.原油先物▲1%超下落、トランプ氏の価格引下げ圧力の影響が続く(ロイター)

 1)トランプ大統領は先週、米国の石油・ガス生産拡大に向けた措置を発表したほか、石油輸出国機構(OPEC)に価格引下げを要求した。WTI先物は▲0.89ドル(▲1.19%)安の73.77ドル。

 2)「原油価格が低下すれば、ロシア・ウクライナ戦争は直ちに終結する。現在の価格は戦争継続を可能にするほど高い水準にある。原油価格を引下げる必要がある」と主張した。

 3)ロシアのプーチン大統領は1/24、ウクライナ戦争やエネルギー価格などについて、トランプ氏と協議する用意があると表明した。

●5.米国政府、コロンビアと不法移民送還で合意し、関税・制裁を停止(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/27、上海総合▲2安、3,250  2)1/28、春節(旧正月)のため休場  3)1/29、春節(旧正月)のため休場

●2.中国の人工知能(AI)台頭を警戒し、欧米市場ではリスク回避(時事通信)

 1)円相場は一時6週間ぶりに153円台に急伸した。

●3.中国のDeepSeek、トップクラスのAIモデルに匹敵する性能、はるかに低コストで実現(ブルームバーグ)

 1)創業1年余りの中国の人工知能(AI)新興企業であるDeepSeek(ディープシーク)は、世界トップクラスのチャットボットに匹敵する性能を、その数分の1程度のコストで実現する画期的なAIモデルを披露し、シリコンバレーを感心させると同時に慌てさせている。

 2)ディープシークの登場は、未来のAUI開発には際限ない電力とエネルギーが必要だという一般的な考えを覆すものとなるかもしれない。

 3)ディープシークの革新性に対する期待が膨らみ、投資家が米国のライバル企業やそのハードウェアサプライヤーへの影響について考え始めたことで、世界のテクノロジー株は1/27に急落した。

●4.中国の1月製造業PMIは49.1と急落(ロイター)

 1)前月の12月から▲1.0減と大幅低下した。

●5.中国工業部門企業利益、2024年は▲3.3%減と3年連続で減少(ロイター)

 1)トランプ新政権による関税を巡る懸念が高まる中、当局による支援強化の必要性が浮き彫りになった。

 2)2023年通年は▲2.3%減少だった。

 3)不動産市場や内需の低迷、企業の信頼感の落ち込みなどにより、経済は打撃を受けている。

●6.中国製造業購買担当者景気指数(PMI)、1月は4カ月ぶりに50割れ、予想下回る(ロイター)

 1)1月の中国製造PMIは49.1で、好不況の分れ目である50を4カ月ぶりに下回った。予想は50.1だった。

 2)国内需要の停滞を背景に新規の受注が低迷した。          (NHK)   ・企業に規模別では、大企業が49.9、中規模企業が49.5、小規模企業が46.5と、いずれも節目の50を下回った。   ・中国では、米国のトランプ大統領の就任で、米国・中国間の貿易摩擦が激化することへの懸念が出ており、景気の先行きに不透明感が広がる中、中国政府が今後、不動産不況の改善や内需の拡大につながる対策を打ち出せるかが焦点となる。

●7.中国非製造業PMI、1月は50.2に低下、12月の52.2から低下した(ロイター)

 1)製造業とサービス業を含めた総合PMIは50.1、12月は52.2だった。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/27、日経平均▲366円安、39,565円  2)1/28、日経平均▲548円安、39,016円  3)1/29、日経平均+397円高、39,414円

●2.日本株 : 日経平均の先行きも安心してはおられない

 1)中国DeepSeekショックと円高が重荷に

 2)1/28の日経平均大幅下げ▲548円下落は、半導体関連3銘柄で説明できる   ・日経平均下落寄与   寄与額   株価下落幅     アドバンテスト   ▲269円   ▲1,023円     東エレク      ▲146    ▲1,480     ソフトバンクG    ▲100    ▲ 505      合計       ▲515円    ー

 3)1/29の日経平均はナスダック総合指数の落ち着きもあり、+397円高と反発   ・日経平均上昇の寄与  寄与額     アドバンテスト   + 94円高     東エレク      + 56     ファーストリテイ  + 56     ソフトバンクG    + 44     TDK        + 40   ・1/28の下落幅に対して、1/29の戻り幅が小さいことに先行き懸念が見える。

 4)米国フィラデルフィア半導体株(SOX)の動向からも、DeepSeekショックから立ち直っていないことが証明。   ・SOX指数の推移     1/22  5,469     1/27  4,853     1/29  4,918

  ・SOX指数は1/22高値から▲616下落(▲12.26%安)したが、1/29までの戻り幅は+65であり、下落幅に対する戻り率はわずか+10.55%に過ぎないことに注目したい。また、1/29の米国市場で、エヌビディアが▲4.1%安、マイクロソフトが▲1.1%と反落している。

  ・先行きの不透明感は依然として残っている。

 5)日経平均の先行きも安心してはおられない   ・NYダウがナスダック総合指数などハイテク株に比べて落ち着いているのは、今まで見向きされなかった割安株に買いが向かいNYダウを支えたことにある。

  ・1/29の日経平均でも同様の動きが出て、反発した。アドバンテストや東エレクなど、前日の下げ幅を取り戻せていない。

  ・中国・DeepSeekショックからの立ち直りを見極めたい。      

●3.HIS、コロナ雇用調整助成金の受給条件を満たさず62億円を返還へ(テレビ朝日)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・5423 東京製鉄    業績底入れ  ・6561 HANATOUR    業績回復   ・6985 浜松ホトニクス 業績回復

執筆者プロフィール

中島義之 (なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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