最低賃金引上げにみる東京一極集中と地方の抵抗~「過去最高の引上げ」の裏で進む危機~

ZUU online / 2018年10月2日 15時55分

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最低賃金引上げにみる東京一極集中と地方の抵抗~「過去最高の引上げ」の裏で進む危機~(画像=PIXTA)

■要旨

「このまま人口移動が収束しなければ、全国896の自治体が消滅する可能性がある」。そう警告した2014年の「増田レポート」以来、東京一極集中や地方のあり方に関する議論は活発化し、政府は地方創生に取り組んでいる。しかし、東京圏への人口流出は止まらない。実は、最低賃金に焦点を合わせると、近年、東京と地方の格差は拡大しており、東京一極集中を助長しかねない状況が生じているのである。このような事態に対し、今年度の改定で、地方が格差拡大に抵抗しようとする顕著な動きが見られた。これは、格差拡大による若者の流出を何とか抑えようとする地方の姿勢の現われだと考えられる。地方が置かれた危機の大きさを認識し、最低賃金の審議においても、地方創生と整合性の取れた取り組みを行う必要があるのではないだろうか。

■はじめに

「このまま人口移動が収束しなければ、全国896の自治体が消滅する可能性がある――」。2014年に日本創成会議が発表した通称「増田レポート」は、次世代の再生産力がある若年女性人口の減少に着目し、全国の半数の自治体が消滅の危機にあると警告した(1)。しかも、多くの若者が流出する東京は、結婚して子どもを産み育てる環境が良くないために出生率が低く、結局、東京一極集中は日本の人口急減をもたらすと指摘した。それ以降、東京と地方のあり方に関する議論は活発化し、政府は「地方創生」に取り組んでいる。

しかし依然、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)への人口流出は止まらない(2)。東京圏の日本人住民の総人口は、2018年1月1日時点で前年を約16万人上回る約3,647万人となり、過去10 年間に約205万人増加した。日本全体の人口に占める割合も前年より0.2ポイント、10年前より1.5ポイント上昇して28.6%となった。地方から東京圏に流出する住民の中心は10~20歳代の若者であり(3)、多くが進学や就職をきっかけとした移動だとみられる(4)。就職時の上京には、所得格差が関連していると考えられる(5)。そこで最低賃金に焦点を当ててみると、近年、東京と地方の格差は拡大しており、東京一極集中を助長しかねない状況が生じている。このような状況に対し、今年度の最低賃金改定に際しては、地方が格差拡大に抵抗しようとする顕著な動きが見られた。

本稿では、最低賃金という視点から、東京と地方の格差拡大について検証するとともに、今年度の各都道府県の改定状況を分析することで、地方の受け止めや姿勢を考察し、最低賃金のあるべき姿について検討したい。

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