アリペイに日本が学ぶべきこと、信用スコアの可能性と課題――アリババ日本代表ら登壇のイベント

ZUU online / 2019年3月2日 12時5分

信用スコアが進むことによるメリット・デメリット 法律の専門家が議論

次のセッション「デジタルマネーVS個人データ」では、著書『AIと憲法』(日本経済新聞出版社)などで知られる慶應義塾大学法科大学院の山本龍彦教授と、佐藤明夫弁護士(佐藤総合法律事務所代表)が信用スコアや個人データの是非、課題などについて議論した。

山本教授はスコアそれ自体には基本的に賛成としたうえで、ポジティブな側面として、(1)効率化(それによる余暇の増大)、(2)取引の安全の向上、(3)社会の安全の向上(規範の内面化)――を挙げた。その一方、ネガティブな側面として、(1)過去の差別の再生産(人種、ジェンダー、特定地域の居住者等へのバイアスなどが入り込む危険)、(2)超監視社会の出現(AI社会とはより多くの情報を必要とする「モアデータ社会」であり、監視社会を加速化させうる)、(3)バーチャル・スラムの誕生(ロースコアの者が社会の下層に固定化される問題)、(4)スコアに遺伝情報などが使われることによる、生まれによる差別の復活などを挙げた。

佐藤弁護士は、百科事典とWikipediaを引合いに出してネット前の時代とネットの時代における個人の心理の変化を説明。前者は「無謬」(間違っていないこと)が当然の前提だったが、後者は、利用者も「間違っているかもしれない」という推定の下で使っている、つまりネットの情報そのものが、ある程度間違っていても社会的に許容されることを前提になっていると解説。それゆえ「ネットの削除要求、つまりネットの情報を正しいものにしようとすることは、本気でやろうと思うと相当タフ」として、一度誤った情報がネット上に記録されてしまうと、それを正しくしていくことは現実問題として相当難しいと話した。

また佐藤弁護士は、「日本は歴史的にはムラ社会で、自分のプライバシーに対してある程度寛容だった結果、現在でも、諸外国と比べ、自分の情報がネットに出ていくこと、スコアリングされることについて感受性が低いのではないかと疑っている。ただし、それをそのままにしていると、スコアリングが進んで格差が広がり、さらには格差が固定化される社会になっていくが、それは、戦後の極めて平等な社会を生きてきた我々にとって、経験したことのない、恐ろしい社会と向き合うことを意味する」とも述べた。

山本教授は「スコアリングは100%ではないので、これに対して争うことができないといけない」と認めたうえで、中国でさえ、法律により争う権利を認めるなどGDPR(EU一般データ保護規則、「忘れられる権利」などプラットフォーム企業による個人データの濫用に対するけん制・規制を目的とするEUのルール)のスタンスを部分的に採用していると解説した。

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