SG会田アンダースロー(クイック)参議院選挙で財政緩和の方針が国民に信任された

ZUU online / 2019年7月22日 12時30分

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SG会田アンダースロー(クイック)参議院選挙で財政緩和の方針が国民に信任された(画像=PIXTA)

シンカー:デフレ完全脱却に向けて、経済政策を推進する環境として、これまでよりも政府の制約は緩和されている。昨年夏に、政府の基礎的財政収支黒字化の目標が、2020年度から2025年度へ、安倍首相の自民党総裁任期の外に先送りされたからだ。安倍首相の自民党総裁任期末である2021年度までは、財政政策を拡大してでもデフレ完全脱却を目指し、自民党の参議院選挙の公約のキーワードである「強い経済」を実現することに集中できることになる。参議院選挙で、連立与党が勝利した結果、基礎的財政収支黒字化目標の先送りを含め、財政イデオロギーが緊縮から緩和へ転換することが国民から信任されたことになる。高齢化に怯え、先人が築き上げた富の取り崩しをできるだけ長くもたせることを目指す縮小戦略として、ミクロ経済の会計のように早急な均衡財政を目指すイデオロギーを持つ守旧的な悲観派が支持を失うことになった。一方、高齢化でも生産性の向上を背景にまだ経済と所得のパイの拡大は可能であり、そのための投資を推進する拡大戦略として、マクロ経済の裏づけをもって、財政拡大をしてでもデフレ完全脱却と生産性の向上を目指す新たなイデオロギーを持つ楽観派が勝利することになった。今回の参議院選挙は争点が分からないという見方が多いが、野党との選挙戦を経た連立与党内での意見の変化が重要な意味合いだろう。連立与党内では財政再建より、インフラなどの生産性向上への投資や教育などの国民生活支援を柱とした戦略的な財政支出を重視する考え方が多数を占めるようになったことは確かだ。

政府はデフレ完全脱却のためにはリスクとなることは認識しているが、消費税率引き上げの建設的ではない議論を過去のものとし、デフレ完全脱却や生産性向上を含め、より重要な前向きの政策を強く進めるために、十分な対策を準備して、消費税率引き上げを実行することになる。デフレ完全脱却前に経済分析として必要とはみられないこの時点の消費税率引き上げを政治的な理由で行う中で、デフレ完全脱却を確実にするため、早ければ秋の臨時国会で、遅くても来年の通常国会の冒頭までには追加経済対策の補正予算を成立させ、消費者とマーケットの不安を更に緩和しようとするだろう。自民党の公約にもある7兆円程度の「防災・減災・国土強靭化の3ヵ年緊急対策」の下でインフラ投資なども加速させ、財政緩和で来年初以降の総需要を下支えすることになるであろう。ネットの資金需要が消滅した水準から安定的な水準(GDP対比3%程度)へ財政運営の基準が変われば、GDP対比3%程度(15兆円程度)の恒常的な財政支出の拡大余地が生まれることになる。市場経済の失敗の是正、教育への投資、生産性の向上や少子化対策、長期的なインフラ整備、防災対策、地方創生、貧富の格差の是正と貧困の世代連鎖の防止、そして科学技術の振興 (国際リニアコライダーなど) を目的に財政支出を拡大する余地がある。日銀の大規模な金融緩和効果が小さく見えるのは、財政緊縮などによりネットの資金需要が消滅してしまい、マネタイズするものが存在せず、マネーや貨幣経済の拡大を十分に促進できなかったのが理由である。企業活動の回復と財政政策の緩和によりネットの資金需要が復活すれば、日銀が現行の政策を維持しているだけで、それを日銀がマネタイズする形となることで金融緩和効果が著しく大きくなり、デフレ完全脱却への動きは促進されることになる。フランスでのG7財務省・中央銀行総裁会議でも、「財政政策は柔軟、かつ成長志向でありながら、必要なところで緩衝の余地を再び設けるものであるべきだ」と総括され、グローバルな政策の方向性も、財政緊縮から緩和に転じ、政府の制約は国際的にも緩んでいる。

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