特集2017年6月25日更新

若者に負けるな!活躍し続ける大ベテラン選手たち

厳しく激しいトップクラスの競い合いをみせるスポーツの世界にあって、年齢に負けず活躍し続ける大ベテランと呼ばれる選手たちがいます。次々に現れる若い選手たちや自身の肉体の衰えと戦いながら、素晴らしい戦績や記録を残し続ける各スポーツ界の大ベテラン選手たちをまとめました。

43歳イチロー、メジャーで奮闘

今年も記録を生み出し続けるイチロー

「劇的なホームラン」で25シーズン連続本塁打達成

今年で44歳を迎えるイチロー。これまで数多くの記録を生み出してきた大スターも今季は出場機会に恵まれず、苦しいシーズンを送っています。しかし、そんな中でも結果を残しているところはさすがです。
4月19日には、メジャー1年目から長く在籍したマリナーズの本拠地シアトルで行われた一戦で本塁打を放ち、オリックス時代から続くシーズン連続本塁打記録を25シーズン連続と伸ばして、 リッキー・ヘンダーソンが持つメジャー最長記録に並びました。また、この本塁打でメジャー通算761打点とし、松井秀喜の記録を超えて日本人メジャーリーガーで歴代1位となりました。

 9回裏。先頭打者のイチローが内角高めのフォーシームを捉えた。打球はライトスタンドで待つ熱狂的なマリナーズ・ファンのグラブに収まった。「(ファンが)全部期待以上のもので表現してくれるから、本当に打てて良かった」。イチローにとってメジャー通算115本塁打。セーフコ・フィールドでは通算54本塁打となった(球団史上5位タイ)。さらに、この今季第1号によって、メジャーに渡ってから17年連続本塁打、日米通算では25年連続というメモリアルアーチとなった。

“ジーター超え”となる交流戦歴代1位の通算365安打

6月14日には交流戦通算365本目の安打を記録。これで元ヤンキースのスター選手、デレク・ジーターの記録を抜き、歴代最多記録となりました。

大リーグ・マーリンズのイチローは、2017年6月14日(米時間)のアスレチック戦に代打で出場し、5試合連続安打となる内野安打を放った。
これで交流戦通算365本目の安打となり、元ヤンキースのジーターを抜き歴代1位となった。

イチローを上回るメジャー最高齢現役選手

44歳のバートロ・コローン

現在43歳のイチローでも肩書は「メジャー最年長“野手”」で、「メジャー最年長」ではありません。その「メジャー最年長」の称号を現在保持する選手は、アトランタ・ブレーブスに所属する44歳のバートロ・コローン。1973年生まれでイチローの“同級生”ながら、すでに誕生日(5月24日)を迎えていて、この選手が引退しない限り、10月22日生まれのイチローは最年長選手になれないのです。
このコローン選手、メジャー最年長の称号だけでなく、最優秀投手賞「サイ・ヤング賞」の受賞経歴を持つ一流選手でもあります。加えて、その外見から「愛されキャラ」でもあるそうです。

コローンはその名前の“ノドごし”通り、丸っこいデブである。
(中略)
年齢を重ねるごとに体重が増し、今では野球選手であることが奇跡と思えるほどの丸っこさ。こうなるとすべてのプレーがコミカルに見え、コローンの笑顔に癒されてしまう。ゆるキャラ的な可愛さに全米が虜になっている。

まだまだいるメジャーの超ベテランたち

年長順4位は上原浩治

メジャー現役選手の年長ベスト5を調べてみたところ、1位はコローン、2位はイチロー、3位はR.A.ディッキー(ブレーブス)、4位は上原浩治(カブス)、5位はジェイソン・グリーリ(ブルージェイズ)となり、上位5人の中に日本人選手が2人も入っています。
42歳の上原は中継ぎ投手としてチームに貢献していて、特に6月に入ってからは絶好調。19日のサンディエゴ・パドレス戦まで6試合連続の無失点を記録し、抜群の安定感をみせた。

 上原は、1点差まで詰め寄られた8回に3番手として登板。いきなり先頭のトーレンスに左安打を許し、無死一塁に。続くアイバーの犠打で一死二塁のピンチを迎えるも、ダーノーを中飛、コルデロを二ゴロに退け、1イニングを1安打無失点に抑えた。

ただ、上原(1975年4月3日生まれ)の“同級生”で昨シーズンまで現役で活躍し「年長ベスト10」に入っていた選手たち、アレックス・ロドリゲス(7月27日生)、ランディ・チョート(9月5日生)、デビッド・オルティーズ(11月18日生)、ジョエル・ペラルタ(76年3月23日生)は相次いで引退しています。
「現役続行か、引退か」が毎年話題となるような厳しい年齢に差し掛かっているのは間違いありませんが、少しでも長く活躍してほしいものです。

高齢でも活躍する現役スポーツ選手たち

三浦知良(50歳・サッカー)

日本サッカー界のレジェンド

“カズ”の愛称で知られる日本サッカー界のレジェンド。若干15歳で単身ブラジルに渡り、18歳で名門サントスFCとプロ契約を結ぶなど、日本人として初めて“サッカー王国”で活躍。1990年に日本に戻り、Jリーグの初代MVPに輝くなど、日本のサッカーブームを牽引しました。
また、1994年にはイタリア・セリエAのジェノアに移籍し、アジア人初のセリエAプレイヤーとなり、その後もクロアチア・ザグレブやオーストラリアのシドニーFCに移籍するなど、現在では当たり前のようになっている海外移籍を果たす日本人プレイヤーの先駆け的存在としても知られています。

Jリーグ最年長ゴール記録を更新中

現在50歳となったカズはJ2横浜FCに所属し、3月21日に自身の持つJリーグ史上最年長ゴール記録を更新。さらなる更新が期待されています。

横浜FCの50歳FW三浦知良はザスパクサツ群馬戦の前半40分に先制点を記録。今季初ゴールを挙げ、自身の持つJリーグ史上最年長ゴール記録を50歳14日に更新した。

「代表復帰してほしいベテラン」5位

「外れるのはカズ、三浦カズ」の衝撃でも知られるカズは、もともと日本代表のワールドカップ(W杯)出場に貢献するため日本に戻ってきた経緯があるだけに、W杯出場への思いは人一倍強く、50歳になった現在でもW杯でのプレーを夢見ています。
ちなみに、最近行われたアンケート「代表復帰してほしいベテラン」で第5位になるなど、ファンも「W杯に出てほしい」「もう一度見たい」と代表復帰を夢見ている模様です。

「(50歳になったが)自分はまだW杯でプレーすることができる。夢を見続けることが重要。だからW杯でプレーするのは、まだ自分の夢です」。

葛西紀明(45歳・スキージャンプ)

海外でも尊敬を集める「レジェンド」

1992年のアルベールビル五輪に19歳で初出場して以来、史上最多となる7大会連続の冬季五輪出場、日本人男子最多となるW杯通算17勝、W杯最年長優勝(42歳176日)などの記録を打ち立て、国内外から「レジェンド」と称えられるスキージャンパー。かつては、身体をスキー板より前に出るほど深く前傾させるダイナミックな飛行姿勢が本場ヨーロッパで人気を集め、「KAMIKAZE(カミカゼ)」の異名で呼ばれていました。
葛西の登場までスキージャンパーの選手寿命は35歳くらいで、40歳を超えても第一線で結果を残す姿は異例。それだけに、ファンのみならず、選手やコーチ陣からも尊敬を集め、40歳を越えた頃から海外で「レジェンド」と呼ばれるようになったといいます。
近年、各スポーツのベテラン選手たちを「レジェンド」と呼ぶようになったのは、葛西の「レジェンド」による影響が大きいと思いますが、気のせいでしょうか?

3月に「最年長表彰台」更新 平昌五輪は「金を目指す」

今月6日に45歳を迎えた葛西は、3月に自身が持つW杯最年長表彰台の記録を更新(44歳293日)し、現在は来年2月に開幕する平昌五輪に向けてトレーニング中。出場を果たせば史上最多を更新する8度目の五輪となりますが、本人は出場だけにとどまらず「金メダルを目指す」とたびたび公言しています。また、今年開かれた講演会では平昌の次、北京五輪出場も視野に「50歳までは現役を続ける」とも宣言しています。

伊達公子(46歳・テニス)

25歳の若さで引退…37歳で現役復帰

小1でテニスを始め、インターハイでシングルス・ダブルス・団体の3冠を達成するなど活躍し、高校卒業と同時にプロテニスプレーヤーに転向。1994年に海外ツアー初優勝を果たし、日本人選手として初めて世界ランキングトップ10に入りました(9位)。95年にはランキング4位まで駆け上がり、96年には当時世界1位で現在でも“史上最強”と称されるシュテフィ・グラフを撃破。同年11月に25歳の若さで惜しまれつつ引退するも、2008年4月にプロテニスプレーヤーとして復帰し、復帰からわずか7カ月で全日本女子シングルス・ダブルスで優勝。その後、世界ツアーへ挑戦の場を移し、09年には13年ぶり8度目となるWTAツアーシングルス優勝を果たしています。38歳11カ月30日での優勝はビリー・ジーン・キング(アメリカ)の記録に次ぐ歴代2位の年長優勝記録です。

5月、左膝手術から復帰

医者が「引退勧告」するレベルの左膝を昨年2月と4月に手術した伊達は、長いリハビリを経て今年5月3日に1年4カ月ぶりの復帰戦を行いました。

岩瀬仁紀(42歳・野球)

日本プロ野球界最年長

日本のプロ野球における40歳超えの選手は以下の7人(6月時点)。

岩瀬仁紀(中日・1974年11月10日生・42歳)
井口資仁(ロッテ・1974年12月4日生・42歳)
松井稼頭央(西武・1975年10月23日生・41歳)
福浦和也(ロッテ・1975年12月14日生・41歳)
相川亮二(巨人・1976年7月11日生・40歳)
新井貴浩(広島・1977年1月30日生・40歳)
福留孝介(阪神・1977年4月26日生・40歳)

最年長となる中日のレジェンド守護神・岩瀬仁紀は、今シーズン中継ぎとして活躍。中継ぎながら、すでに2勝を挙げています。

 通算歴代1位の402セーブ、通算歴代3位となる928試合に登板している中日の岩瀬仁紀。友利結投手コーチは「まさに彼はレジェンド」と称賛する。
 “レジェンド”は今年でプロ19年目の42歳。昨季限りで1学年上の三浦大輔氏が現役を引退し、気が付けば井口資仁(ロッテ)とともに球界最年長となった。

伊藤剛臣(46歳・ラグビー)

激しいコンタクトスポーツで46歳現役

相手と激しくぶつかり合うコンタクトスポーツのラグビーは、その激しさゆえに肉体への負担が大きく、30代半ばを過ぎて現役であることは稀です。そんな中、強豪・神戸製鋼コベルコスティーラーズに18年間所属し、日本代表でもプレー経験がある伊藤剛臣は、46歳になった今でも2012年シーズンから加入した釜石シーウェイブスで現役を続けています。
ロックという厳しいポジションでレギュラーとして体を張り続け、チームの好成績に貢献しているほか、19年に日本で開催されるラグビーのW杯について、「代表に呼ばれたら48歳の体で駆けつけます!」と意欲を示しています。

 伊藤は、一時代を築き上げたレジェンドのひとりだ。日本代表のキャップ(国際試合出場数)は62を数え、ワールドカップには2度出場。法政大学時代には大学日本一を達成。神戸製鋼コベルコスティーラーズでは、日本選手権7連覇など中心選手として活躍した。

的場文男(60歳・競馬)

地方競馬通算7000勝 還暦超えの「大井の帝王」

通算21回の大井競馬リーディング(最多勝)を誇り、その圧倒的な勝負強さから「大井の帝王」と称される的場文男は、昨年9月で還暦を迎えた大ベテランジョッキー。大井だけにとどまらず、帝王賞(G1)、東京大賞典(G1)、川崎記念(G1)など、全国からトップクラスが集結する交流G1や重賞で数え切れないほどの勝利を挙げています。
今年の5月17日には地方競馬通算7000勝を達成。これは歴代2位の記録で、「不滅の大記録」とされる歴代1位、鉄人・佐々木竹見の7151勝を超えることも期待されています。また、7000勝を達成したレースでは自身の持つ重賞最年長勝利記録(60歳8カ月)も更新している現役バリバリの騎手です。

神山雄一郎(49歳・競輪)

G1・16勝 競輪界の「神」

日本競輪学校61期をトップで卒業し、1989年4月にS級に昇格してすぐにG3初優勝と順調な選手人生を歩み、G1レース16勝、生涯獲得賞金27億円超などの史上最高記録を持つ競輪選手。記念競輪(G3)優勝(2016年・47歳329日)、G2優勝(15年・47歳22日)といった最高齢記録も保持しています。
なお、2000人を超える競輪選手はレース結果によってランク付けされ、その最高峰となる「S級S班」に選ばれるのは、わずか9人。神山は2016年にもS級S班に在籍するなど、49歳になった現在でもトップ選手として活躍しています(現在はひとつ下のS級1班)。


年齢を重ねるごとに、どんな名選手にも必ず肉体の衰えはやってくるもの。超一流と呼ばれる彼らの長きに渡る活躍ぶりは日々の鍛練と身体のメンテナンスがあってこそなのでしょう。これからも年齢に負けない彼らの活躍を見守りたいですね。