特集2017年1月27日更新

競争が激化するコンビニ業界の今

店舗数も年々増え、もはや毎日の暮らしに欠かせない存在となったコンビニエンスストア。ファミリーマートとサークルKサンクスが統合したことにより、コンビニ業界の勢力図も変わり始め、さらに競争が激化しています。セブン-イレブン、ファミリーマート&サークルKサンクス、ローソンに焦点を当ててまとめてみました。

コンビニ業界年間販売額&店舗数

競争が激化するコンビニ業界。近年では飽和状態が近いとも言われている中、年間販売額、店舗数ともに年々増加傾向にあります。

コンビニ業界の勢力図

コンビニ各社の売上推移

コンビニ各社の売上推移は長らくセブン-イレブンが業界トップを走り続けています。2016年のファミリーマートとユニーグループの経営統合により、売上3位のファミリーマートに同4位のサークルKサンクスの売上が加算されます。それにより実績からすれば2016年はファミリーマートが同2位のローソンを追い抜くことが決定的となっています。

コンビニ各社の店舗数

店舗数においてもセブン-イレブンが業界1位。2016年の秋に同3位だったファミリーマートがユニーグループと経営統合し、ユニー傘下のサークルKサンクスと合併。ローソンを抜いて2位となり業界勢力図が大きく変わることになりました。

コンビニ業界は、セブン-イレブンが1万9166店舗(16年11月末時点)を構え、数の上ではローソンの1万2839店舗(同)を大きく上回る独走状態だった。そこに割って入ろうとしたのが、今回の業界再編で、ローソンより少なかったファミリーマートの店舗は、一気に1万8140店舗(同)まで拡大し、店舗数ではセブン-イレブンに肉薄した。

店舗数でファミリーマートに抜かれたローソンですが、国内の店舗拡大が遅れを生じる中、海外出店で活路を見出そうとしています。

7月18日付「日本経済新聞 電子版」記事「ローソンの海外店舗、20年までに最大5,000店に」において、「ローソンは18日、2020年までに海外店舗数を現在の約6倍にあたる最大5,000店に引き上げる目標を明らかにした」と報じられました。

一方で、セブン-イレブンも2018年にこれまで進出していなかった沖縄県に出店を予定しており、出店エリアを拡大していく目論見のようです。

コンビニの陣取り合戦は激しさを増している。 最大手のセブン-イレブン・ジャパンは、2018年に沖縄県に出店する。

コンビニ各社の平均日販と平均客単価

店舗数に限らず、各店舗の平均客単価、平均来客数、平均日販を比較しても、すべての項目でセブンイレブンが業界トップであり、特に来客数と客単価の掛け算で売り上げが計算されるため、乗算されるとその差はより大きなものとなります。

セブン―イレブンを訪れる客数は1日約1000人で、各店舗の平均日販(65万6000円)から平均客単価は656円となる。一方のファミリーマートのマニュアルリポート2016によると、1日の平均客数は914人で、客単価は565円だ。セブン―イレブンを訪れた客はファミリーマートの客より85円多く消費する計算となる。

コンビニ各社の動向

それではコンビニ各社ごとに、現在の強みや展望、推し進めている戦略について取り上げてみます。

セブン-イレブン

“美味しさ”を生み出せる企業力

年間販売数、店舗数、平均客単価、平均来客数、平均日販、そのいずれも業界トップに立つセブン-イレブン。その理由は“美味しさ”を生み出せる企業力にあるようです。
セブン-イレブンの惣菜は、お手頃な値段であるにも関わらず、主婦層を中心に美味しいと評価が高いことで有名です。セブン-イレブンはプライベートブランド商品の開発にも力を入れています。

セブン&アイ・ホールディングス <3382> のプライベートブランドであるセブンプレミアムの商品で、惣菜やスイーツなどの商品を充実させるほか、ワンランク上の味を提供するセブンゴールドシリーズも好調で、通常商品より価格が高めに設定されているが、食パンやビーフシチューなどが人気を呼び、客単価のアップに寄与する。

高品質である秘密は工場の製造能力の高さ。クオリティの高い惣菜を作るために性能の高い機械を導入しているようです。

たとえばサンドイッチ。セブン-イレブンの工場はパンをカットする機械に「丸刃スライサー」を導入しており、従来のものよりも断面がなめらかに仕上がるという。さらに、口当たりがしっとりするだけでなく、挟んだ食品とも馴染みやすいそうだ。

非価格競争

販売業は価格競争に陥りがちですが、セブン-イレブンは安易にディスカウントに踏み切ることはしませんでした。 値下げではなく、いち早く需要をキャッチし、世間のニーズにあった高品質の商品を提供することで売り上げを上げています。

ロットの小さな惣菜を取り扱うようになったのも、零細小売業の減少よりコンビニ客の高齢化をいち早く察知したからこそ。さらに、日本各地の味の好みに合わせた新作弁当やスイーツの開発にも余念がない。全国展開であってもエリアの特性にも目を光らせている現場主義だからこそできる取り組みだ。

ファミリーマート

サークルKサンクスを経営統合

ユニーグループとの経営統合後、既存のサークルKサンクスの店舗がファミリーマートに変わったり、店舗内の商品も徐々に変わっていきました。

両コンビニが経営統合してから、少しずつ店舗が変わったり商品が変わったりしてきたが、依然としてサークルKサンクスの面影が強く残っていた。ところが今回、ファミリーマートの看板商品であるファミチキがついに登場したことで合併が実感される。

商品開発やコラボ商品にも注力

ファミリーマートも商品開発に力を入れています。特に電子レンジで加熱して調理する「チルドラーメン」は消費者から高品質と好評で2016年10月の段階で、1日約10万個を売り上げる大ヒット商品に。実際の商品はファミリーマートの公式サイトにも掲載されています。

このラーメンは、15年に大々的にリニューアル。14年10月の段階では、1日に1店舗約1200円程度の売り上げしかない商品だったが、リニューアル後は4000円強を売り上げる。3倍以上も売り上げを伸ばすのは、コンビニ商品でも異例中の異例だ。

その他、RIZAPとのコラボ商品なども多数販売。パンやスイーツなどを手がけ、ダイエット中の消費者にも販売を促進しました。

"おいしさもコミット!"をテーマに、共同開発第1弾として発売になった精鋭たち。デザートについては、天然由来の甘味料エリスリトール(1キロカロリー/グラム)を使うなど工夫し、「商品総量の10%以下、かつ糖質量10グラム以下」という、糖質量の基準を設けています。

店内で栄養相談ができる薬局併設店舗も

店内にて、栄養相談ができる「栄養ケア・ステーション」を設置した店舗も展開。メディカルフーズなども購入でき、買い物客はコンビニと両方の需要を叶えられます。

栄養ケア・ステーションは薬局エリア内に設けられ、管理栄養士が無料の栄養相談に応じるほか、ライフスタイルに合わせた有料の栄養相談コース(食事バランスチェックコースや体スッキリコースなど)もある。

ローソン

店舗形態の変化

働く女性やシニア層の増加を受けて、スーパーマーケットの代わりとなるような店舗を目指し、利用客の需要に的確に応えてきました。

実際に、既存店では、デリカや日配食品、冷凍食品の売り上げが大幅に伸びた。こうした需要を取り込むため、各店舗では、商品陳列への投資として什器の高層化、冷凍平台導入、冷凍ケースの増設とともに、惣菜など品ぞろえを拡充。

客単価アップへの施策

セブン-イレブンとの客単価の差を縮めるべく、「ウチカフェスイーツ」のシリーズでスイーツの販促に注力。消費者の「あともう一品」の購買意欲を刺激しました。

ローソンは大ヒットとなったプレミアムロールケーキをはじめ、「ウチカフェスイーツ」のラインナップを揃え、客のもう1品買いを促進することで、平均日販の数値を上げている。

コンビニ銀行に参入

コンビニ銀行に新規参入を予定。2016年11月下旬に、三菱東京UFJ銀行とローソンバンク設立準備会社を設立すると発表しました。

株式会社ローソン(本社:東京都品川区、以下「ローソン」)は、本日の取締役会において銀行事業を検討する準備会社の設立を決議しましたので、下記の通りお知らせ致します。準備会社は、これまで展開してきた金融サービスを基盤とし、関係当局の許認可等を前提に銀行の設立準備を進めて参ります。
LANsはローソンと銀行42社による共同出資会社。手数料収入の利益貢献が限定的であるほか、ローソンが独自の判断で金融サービスを展開することはできない。こうした縛りをなくしたいというのが、ローソンが銀行業参入を決めた理由だ。

飽和状態とも言われて久しいコンビニ業界ですが、今後もしばらくは業界トップを走るセブン-イレブンをファミリーマート、ローソンが追う3強の激しい争いは続きそうです。サービスの多様化により、ますます私たちの生活になくてはならないものになったコンビニエンスストア。今後も各社の提供するサービスに期待してしまいます。