特集2017年5月15日更新

ブーム到来!?「刑事モノ」だらけの春ドラマ

2017年4月~6月期のいわゆる「春ドラマ」もスタートから1カ月たち、そろそろ評価も定まってきた感があります。人気シリーズの続編となるドラマ、豪華キャストの鳴り物入りで始まったのに視聴率や話題性がイマイチのドラマ、スタート時はそれほどでもなかったのに人気を博したドラマ…そんな中、今季のドラマで高視聴率を集める作品にとある傾向が見えてきました。それは「刑事モノドラマ人気」。その理由や、人気作品についてまとめてみました。

人気上位を刑事モノが独占

今季のドラマの傾向として、「刑事モノドラマ」が人気のようです。ビデオリサーチ社の調査によると、最新データとなる4月24日(月)~4月30日(日)の20~23時台、いわゆるゴールデンタイムに放映されたドラマの週間視聴率ランキングで、上位4作品を刑事モノドラマが占めています。

木曜ドラマ・緊急取調室(テレビ朝日・木曜21時~)14.2%
警視庁捜査一課9係(テレビ朝日・水曜21時~)13.9%
CRISIS公安機動捜査隊特捜班(フジテレビ・火曜21時~)12.0%
日曜劇場・小さな巨人(TBS・日曜21時~)11.7%)

この傾向はこの週だけたまたま、ではなく同時間帯で4月にスタートしたドラマの初回視聴率のランキングでも同じような結果となっています。視聴率だけでなく、そもそも今季のドラマは刑事や探偵などの「事件解決ドラマ」が通常よりも多く発表されているようで、手堅い人気を持っていると言えそうです。

乱発される「事件解決ドラマ」

現在、NHKで「4号警備」、TBS系で「小さな巨人」、フジテレビ系で「貴族探偵」、「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」「犯罪症候群」、「櫻子さんの足元には死体が埋まっている」テレビ朝日系で「警視庁捜査一課9係」「警視庁・捜査一課長」「緊急取調室」と合計9本のいわゆる「事件解決ドラマ」が放映中です。これは20~23時台に放送されている春ドラマが全18作品ですから、実に半分が「事件解決ドラマ」となります。なぜここまで人気なのでしょうか?
それは「数字を持ってるから」。

その理由は、「事件解決モノは、他のジャンルに比べてリアルタイム視聴が見込める」から。1話完結のフォーマットが多く、「内容がコンパクトでサクッと見られる」「何回か見逃しても問題ない」などの気軽さがあるため、他のジャンルよりも録画視聴される割合が少ないのです。
一方、テレビマンから見た事件解決モノは、「安定した視聴率を稼げて、大コケの心配が少ない」手堅いコンテンツ。また、前クールの平均視聴率1位が『相棒』(テレビ朝日系)15.2%、3位が『科捜研の女』(テレビ朝日系)11.7%だったように、ヒットシリーズになる可能性を秘めているのも魅力です。

人気のある「事件解決ドラマ」の中でも、刑事モノドラマは過去にいくつも名作のある鉄板コンテンツ。今季は人気シリーズの続編もありますが、安易な「数字がとれるから」ではなく、脚本やキャストに気合の入った力作も多いようです。
それでは、主な人気作品を紹介していきましょう。

緊急取調室 - SECOND SEASON

初回“ロケット発進”でトップ、その後も2桁視聴率維持

女優の天海祐希(49)が主演を務めるテレビ朝日「緊急取調室」(木曜後9・00)の第4話が11日に放送され、平均視聴率は12・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことが12日、分かった。
4月20日放送の初回は今年1月1日放送の同局「相棒season15 元日スペシャル」の17・3%を上回り、今年の民放ドラマ1位となる17・9%のロケット発進。第2話14・2%、第3話12・4%としたが、今回は前回と変わらず。4週連続で2桁をキープで、抜群の安定感で初回から高視聴率で推移している。

細部まで徹底したリアリティーへのこだわり

言葉遣いから身のこなし、道具の取り扱いまで

長年警視庁の刑事として活躍した監修者のバックアップのもと、言葉遣いから身のこなし、道具の取り扱いまで、事細かく確認しながら撮影が進められている。
「刑事が遺体の財布から免許証を見て身元確認する、といったいわゆる刑事ドラマ風な場面は出てきません。実際の現場で絶対にありえないことだそうで、専門家の徹底監修を受けながらとにかくリアリティーにこだわっています。小道具一つとってもそう。例えば、現場検証に使う定規。今回使われているのは竹でできたものです。刑事ドラマでは金属製のものをよく使っていますが、熱による膨張や収縮は金属製の方が起きやすい。だから実際は竹製のものを使うそうです」(ドラマスタッフ)

元渋谷署署長、警察の“生き字引”による監修

第1話の撮影現場ではこんなやりとりがあった。所轄と県警本部の刑事が出会う何気ないカットで監督が「こんな場合の挨拶って?」と聞くと、倉科氏は「殺人現場の緊迫した中なので会釈くらいで十分ですよ」とアドバイスし、役者に指示が出る。
遺体を運ぶシーンでは、倉科氏の「“PS(ポリスステーション)行きます”で、どうですか」という提案を受けて、それまでの台本が書き換えられた。プロの助言を受けてよりリアルなドラマへと磨かれていくのだ。

ドラマを支える演出とベテランの演技

「人間の怖さ」がテーマ、演出にも工夫

実力派揃いの名優たちが脇を支える

キャストに関しては、シーズン1から引き続き、キントリのメンバーに、田中哲司、でんでん、大杉漣、小日向文世など豪華なメンバー。犯人役となるゲストも、毎回、実力派を揃えている。
「舞台出身の役者さんが多く、皆さんには思う存分自由にやっていただいています。犯人役に関しては、芝居がしっかりできて、まるで舞台を観ているような独特の雰囲気を作れる方をキャスティングしています。取調室というワンシチュエーションで、天海さんと対峙しなければいけない役どころですからね。キャスティングも含めて、流行に取びつくことはせず、地に足がついたドラマ作りをしているつもりです。その安心感や安定感も視聴者に楽しんでいただけているのかもしれません」

説得力がハンパないと話題、第1話での三田佳子の演技

「三田は49歳年下の配送員に本気で恋をする77歳の老婆を演じましたが、説得力がハンパなかった。天海祐希演じる真壁有希子からの取り調べに対し、年齢からくる物忘れで供述にあいまいな点が出てくるものの、恋する配送員の顔を見たい一心で毎日自分宛に荷物を出し続け、恋心を踏みにじられて殺人に至る…という難しい役を大女優と呼ばれるだけの演技力で見事に演じ切りました」
 この圧倒的シーンには視聴者からも「迫力にビビッた」「ぐいぐい引き込まれた」「手に汗握った」と絶賛の声。

警視庁捜査一課9係 season12

亡くなった渡瀬恒彦さん主演の人気シリーズ

10年目を迎え、意気込みを語っていた渡瀬さん

“昼あんどん”と揶揄(やゆ)されているが実はキレもの、という渡瀬恒彦演じる加納倫太郎係長の下、井ノ原快彦演じる若手刑事・浅輪直樹ら個性豊かな6人の刑事たちが、個性が強過ぎるが故に(!?)捜査中に対立しながらも、それぞれの正義感で最後にはまとまり難事件を解決する刑事ドラマ。'06年4月にスタートした「9係」シリーズは、ことしで12年目を迎える。
渡瀬は「倫太郎の役作りといっても、作っていない部分もありますから(笑)。自然と役には入っていけますね。12年目を迎える『9係』は僕にとって、『やらせてください、やりたいんです』と言いたい作品。そういう存在です」と作品に対する思いを明かす。

1、2話目まで収録を終えていた渡瀬さんだが…

シーズン12の放映直前となった3月14日、渡瀬さんは多臓器不全のために亡くなりました。芸能界、そして視聴者からは渡瀬さんへの哀悼の声とともに、主演を失った同作への不安の声も聞かれました。

で、私が懸念しているのは4月から始まる予定の『警視庁捜査一課9係シーズン12』である。1・2話はすでに収録を終えているらしいが、その後は渡瀬の存在をどう表現するのか。9係を観ていない人のために、簡単に解説しておくと、9係は捜査一課のなかでもいわゆる特殊な課である。渡瀬は敏腕刑事なのだが、我が道を行く捜査手法で、組織のなかではどちらかというと鼻つまみ者という役柄だ。

第1回の放送では渡瀬さん演じる主人公が特命により不在となるシーンから始まりました。そして9係メンバーによる回想シーンも。

「今回の放送に、ネット上では『回想シーン、まじ泣けた』『まだ渡瀬さんがいないことが信じられない』『やっぱり9係は渡瀬さんがいないと』など、名優不在を寂しがる声ばかりです。ドラマの感想も、大黒柱を失った違和感を指摘する意見が多いですが、『渡瀬さんの分まで盛り上げていこうという空気を感じた』『みんなで頑張っている感がすごかった』など、今後に期待を込めた言葉も。

渡瀬さん不在後に視聴率が急落も、その後持ち直し2桁に

3月14日に多臓器不全のため亡くなった俳優の渡瀬恒彦さん(享年72)が主演を務めてきたテレビ朝日の人気ドラマシリーズ「警視庁捜査一課9係」(水曜後9・00)の第5話が10日放送され、平均視聴率は9・4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことが11日、分かった。
初回11・5%、第2話11・6%、第3話13・9%と推移。第4話で7・2%と急落したが、今回は2・2ポイント伸ばす回復力を見せた。

小さな巨人

「半沢直樹」の流れを組む異色作

「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」「下町ロケット」などのヒット作を生んだ伊與田英徳プロデューサー(49)、福澤克雄監督(53)が再びコンビ。今回、福澤監督は監修に回り、田中健太氏(37)渡瀬暁彦氏(36)池田克彦氏(35)が演出を担当。伝統ある同枠において30代トリオが演出を務めるのは極めて異例。脚本はTBS「TAKE FIVE?俺たちは愛を盗めるか?」フジテレビ「無痛」などの丑尾健太郎氏(40)。「半沢直樹」などの八津弘幸氏(45)が脚本協力を務める。

2桁連発で視聴率は好調

俳優の長谷川博己(40)が主演を務めるTBS日曜劇場「小さな巨人」(日曜後9・00)の第4話が7日に放送され、平均視聴率は13・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことが8日、分かった。
初回(4月16日放送)は13・7%と好スタート。第2話は13・0%、第3話で11・7%と数字を落としたが、今回は1・8ポイント上昇とV字回復した。

脇役というには強烈すぎる?個性的な出演者たち

「半沢」再び!?香川照之の顔芸炸裂!

一方、香川の名演に「香川照之さんの表情筋はどうしてあんなによく動かせるんだろう。頭で考えたことを顔に表すの上手すぎる」「香川照之さんの顔芸演技が炸裂するドラマには外れなし!」「不穏な香川照之っていうか、絶対裏切って高笑いする系の香川照之だ」と香川の“顔芸”ならぬ名演にも注目が集まっている。

その香川に「顔芸ライバル」が登場

主演の長谷川博己(40)をはじめ、役者陣のアップをこれでもかと多用。「半沢」で“ミスター顔芸”の称号を得た香川照之(51)は、今回も主人公の敵役。歌舞伎の舞台でさらに磨きをかけた“ミスター”の右に出る者はいないかと思いきや、強力なライバルがひとり。バイプレーヤーの安田顕(43)だ。
今作では所轄の泥臭い刑事役。自殺で処理されてしまった被害者女性の墓前で当時を述懐するシーンでは、そっと指で目元をぬぐうしぐさをし、充血させた目から涙をこぼすことなく、ぐっとこらえる表情を見せた。その苦労と後悔をにじませた面持ちは初回ピカイチともいえる顔芸であった。

高視聴率を叩き出す「北海道の顔芸スター」

また、同番組の札幌地区の平均視聴率が15・3%を記録。瞬間最高視聴率は17・1%で、午後9時32分、同46分、同47分の3カ所で記録した。長谷川演じる主人公が赴任した所轄の部下・渡部役で、北海道出身の安田顕(43)が出演しており、地元出身の人気俳優の存在もあってか、北海道では初回の番組平均視聴率が18・0%をマーク。好スタートを切っている。

「シン・ゴジラ」矢口&尾頭さんが夫婦役 シンゴジオマージュも?

本作は長谷川博己と市川実日子が夫婦役として登場しますが、二人は『シン・ゴジラ』でも矢口蘭堂、尾頭ヒロミ役として登場したのは記憶に新しいところ。
それに加えて本作冒頭では、奥さん役の市川が「シャツにおわない?」と長谷川に鼻をクンクンさせるシーンも見られました。これ『シン・ゴジラ』の“あのシーン”のオマージュでは?とネット上でも話題になりました。そう、連勤の矢口蘭堂(長谷川)に向かって、市川演じる尾頭ヒロミが「正直、部屋も服も少し匂います。シャワーくらい浴びてもよろしいかと」と目線を落としたまま早口でいさめるあの場面ですね。

「感じ悪い」岡田将生の悪役ぶり

一方、事件に進展を見せる香坂の、あと一歩というところで邪魔をしてくる山田役の岡田の演技に対して「山田のポジショニングがもういちいち面白い」「岡田くんちょっと非現実的なくらい感じ悪いな」「岡田君は役の幅が広がるね。観てる人をムカつかせるのも立派なお芝居」とその筋金入りの悪役ぶりに注目する声も多く寄せられている。

CRISIS 公安機動捜査隊特捜班

小栗が1年半かけて準備した激しいアクションとストーリーが好評

「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」では、警察庁の秘密部隊“公安機動捜査隊特捜班”が、テロリストや麻薬組織など、国家を揺るがす巨大な犯罪に立ち向かう。「SP 警視庁警備部警護課第四係」(07)、「BORDER」(14)を手掛けた金城一紀が原案と脚本を担当。構想5年超という入魂の作品だ。見る者の善悪の概念を揺さぶるような濃密なドラマに加え、最近の刑事ドラマには珍しいハードなアクションが見もの。
当サイトに掲載されている主演の小栗旬のインタビューによると、本作のために1年以上掛けて「カリ・シラット」という武術を学んだとのこと。その成果が、マンションからの飛び降りやスピーディーな格闘シーンなど、見応えのあるアクションに結実。現代社会に一石を投じる重厚なドラマはもちろんのこと、刑事アクションという観点からも注目したいドラマだ。

「総合視聴率」で20%超え連発し好調に推移

なお、リアルタイム視聴率とタイムシフト視聴率を合算して重複分を差し引いた総合視聴率(関東地区)は、第1話(4月11日放送)の23.6%に続き、第2話(同18日放送)も20.2%と、連続で20%超をキープした。

「ドラマ満足度」でも春ドラマでトップに

ネットニュースやSNSでは、ドラマに関する話題で日々賑わっているが、視聴者が感じている作品の真の「満足度」はいかがなものだろうか? そこで、オリコンの週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』では、毎週各話の放送後に実施している自社のドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」の結果から、現時点(5月2日放送終了分まで)の累積平均を作品ごとに算出しランキング化。結果、小栗旬主演の【CRISIS公安機動捜査隊特捜班】(関西テレビ・フジテレビ系)が、100Pt満点中87.8Ptを獲得し、現時点で4月期ドラマ満足度1位となった。

主役の魅力だけではない高評価

『CRISIS~』は、ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』シリーズ、『BORDER』などの脚本を手がけてきた、直木賞作家・金城一紀氏による最新作で、警察の秘密部隊の活躍を描いた物語。Ptの内訳を見ると「視聴量」(19.5Pt)に加え、「主演」、「主演以外」の項目でともに20Pt満点中18.3Ptという高い数値をマーク。小栗×西島秀俊による緊迫感あふれるアクションに加え、長塚京三や田中哲司など、脇を固めるキャストの好演が見応えを与えている様子が伺い知れ、視聴者からは「俳優陣のコンビネーションが良く映像に迫力があって面白い」(20代女性/兵庫)との声が寄せられている。

小栗旬「実現可能なアクションはすべて出し尽くした」

「役者のできるアクションとしては、視聴者が驚いてくれるものができたんじゃないでしょうか」と自負する。「今回、実現可能なアクションはすべて出し尽くしました。毎話、毎話、やっていると、『今の、前々回と似てない?』みたいなことになって、新しいアクションを考えるのもだんだんしんどくなっていって(笑)。それでも、作っている僕らがドキドキ、ワクワクできないようなものを、視聴者にお見せするわけにはいかないので、最後まで攻め続けました」。

現場も緊張感…「言葉を必要としない」演技に称賛

小栗と西島の視線がぶつかり合い、張り詰めた表情が印象的だったが、放送後に行われたTwitter質問企画でも、この場面の脚本や撮影についての質問が相次いだ。
原案・脚本の金城は「あの場面で言葉を交わすのは、野暮だと思った。進む稲見と止める田丸の心のぶつかりを、無言の中で見せたかったんです」と語り、演出した鈴木浩介監督も「思わずカットをかけるのをためらうほどの緊張感だった。カットの後も、みんな無言のまま、その場の空気と感情を保っていました」と振り返った。
放送中、Twitterでは視聴者からも、2人の“言葉を必要としない”演技に称賛の声が数多くつぶやかれていた。

クール別ドラマ振り返り、今回は趣向を変えて「刑事モノ」に絞って紹介してみました。特徴として気づいたのが、主役もさることながら、脇役やゲストを存在感のある実力派や個性的なタレントで固めているところ。「緊急取調室」の 三田佳子、「CRISIS]の石田ゆり子や長塚京三、「小さな巨人」の香川照之、安田顕…小さな巨人に和田アキ子も登場予定、なんていう話題もありましたね。また、警察を舞台にするだけあって監修などで細部にも気を使っているのも特徴的です。そういった要因が、ストーリーに厚みを出し、人気を要因になっているのかもしれません。今回紹介した作品が今後どんな展開になっていくのか、楽しみです。