特集2018年3月9日更新

話題騒然のテレ東番組『池の水ぜんぶ抜く』特集

国内における外来種が問題視される中、突如テレビ東京で始まった外来種を駆除するために“池の水を全部抜く”テレビ番組、その名もずばり『池の水ぜんぶ抜く』。この斬新な番組は大きな反響を生み、4月からの月1レギュラー放送が決定しました。今回は『池の水ぜんぶ抜く』の人気の秘密に迫ります。

目次

『池の水ぜんぶ抜く』が4月より月1レギュラー番組に

2カ月に1回から月1回にペースアップ

テレビ東京は2日、東京・六本木の同局本社で4月改編の説明会を開催。人気バラエティ特番『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』を、月1回のレギュラーで放送することを発表した。
これまで、2カ月に1回のペースで放送してきたが、月1回にペースアップする。
過去6回の特番で大きな話題を呼び、視聴率も最高13.5%を記録。番組で募集したところ、500件以上もの応募が殺到したという。さらに、思いも寄らない人からの出演希望も相次いでおり、ゲストも出演していく予定。

『池の水ぜんぶ抜く』とは?

「ただ池の水を抜くだけ」というシンプルな内容

『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』は、田村淳(ロンドンブーツ1号2号)と田中直樹(ココリコ)がMCを務め、池の水を抜いて何が潜んでいるのか生態系などを探るという人気番組。
同番組は、危険生物に悩まされる近隣住民のSOSを受け、外来種が大量発生している池の水を全部抜き、そこには何が潜んでいるのかを調査、除去していく。

視聴率右肩上がり 最新回では在京1位の快挙

第1弾=8・3%、第2弾(4月23日)=8・1%、第3弾(6月25日)=9・7%と徐々に数字を上げ、第4弾(9月3日)=11・8%、第5弾(11月26日)=12・8%と推移。シリーズ第6弾のお正月3時間スペシャル(1月2日)では13・5%を記録し、同時間帯在京1位の快挙となった。

第6弾では環境大臣が異例の現場訪問

同シリーズは「ただ池の水を抜くだけ」というシンプルな内容。しかし昨年9月に放送された第4弾では佐賀藩江戸上屋敷の歴史的に珍しい瓦、続く11月の第5弾では絶滅寸前の希少生物「二ホンイシガメ」が発見された。第6弾では中川雅治環境大臣(70)が収録現場に訪れたこともあり、視聴率も右肩上がりだ。

月1レギュラー化に番組MCからは驚きと嬉しさ

4月より日曜19時54分からの『日曜ビッグ バラエティ』枠で月一回のレギュラー放送決定の報を受けた田村は「月1回抜くの!? うわぁ、大変だなぁ」、田中は「非常にうれしいです!」とビデオでメッセージを寄せた。

また、レギュラー化決定の発表後に行われた伊勢志摩体験イベントに登場した田村淳は、月1放送にやる気を見せました。

「伊勢市にもきっといい池がありますよね? 伊勢神宮の中の池とかあれば抜いてきれいにしたい。抜かしてもらえないですかね? お伊勢様の池の水もぜひ抜かせていただきたい。まだ神社の水を抜いたことがないので、お寺は抜いてるんですけど」と伊勢神宮の池に興味を示し、「伊勢神宮じゃなくても、伊勢市のいい池があったら紹介していただきたい」とアピール。
「環境大臣もお墨付きの番組ですから。ぜひ抜かせてください!」と呼びかけた。

伊藤隆行プロデューサー「地方にも出ていきたい」

「昨年21池をやりましたけど、(池の水を抜いてくれという)応募総数が520件くらい来てるので、このペースだと25年くらいかかってしまうので、ペースを上げていきます。(月1回でも)10年くらいかかるので、まだ足りないくらいだと思っています」と意欲を示した。
「学術的にはあの表自体が価値を持ち始めているそうなので、日本の生態系の研究に、ぜひ役立ててもらいたい。北海道と九州にはまだ行っていないので、地方にも出ていきたいと思います」と展望を語った。

“日曜日の20時” 人気番組ひしめく激戦区に参戦

そんな人気シリーズが日曜ビッグバラエティ「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」(日曜後7・54~)として放送される。日曜午後8時枠は日本テレビ「世界の果てまでイッテQ!」が君臨し、NHK大河ドラマが放送されるなど、激戦区となる。
縄谷太郎編成局編成部長は「激戦の日曜日にテレビ東京らしい戦い方で視聴率アップを目指す」と意気込んだ。
4月から月1レギュラー番組となることで、『イッテQ』、大河にとって、“脅威”となるのは必至。『池の水ぜんぶ抜く』が放送される週は、さらに熾烈な「日8」戦争が展開されることになりそうだ。

3月11日放送『池の水ぜんぶ抜く大作戦7』の見どころ

月1レギュラー化を前に、3月11日には第7弾となる『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦7』が放送されます。

田村淳は真田家ゆかりの寺「龍顔寺」(長野県)へ

龍顔寺は、戦国武将・真田幸村の叔父にあたる真田高勝の位牌が安置されている、真田家ゆかりの寺。昨年8月の豪雨で樹齢300年の御神木が池の中に倒れてしまったため、池から取り除き、外来種も駆除したいと住職から申し出があった。

池松壮亮がロケ参戦

2017年1月期のドラマ『銀と金』に主演し、『バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~』にも2度本人役でゲスト出演するなど、ここ最近はテレビ東京に縁がある池松。
初めて池の水抜きに挑戦した池松は、ロケ終了後に「すごく楽しかったですね。夢があっていい な、と思いました。思いのほか大変で、ここまでだとは思っていなかったですけど、なんか、いい疲れです」と語った。

田中直樹はビオトープ「笠松トンボ天国」(岐阜県)へ

笠松トンボ天国は、生物群が存在できるように環境条件を整えた自然保護地域で、国内有数の規模の広さを誇る。
SOSの内容は、40年ほど前までは38種類を超えるトンボがいたのだが、現在は23種類くらいまで減ってしまったとのこと。地域住民や小学生と一緒に守っているトンボのヤゴが、外来種に食べられているのが原因のようだ。
エリア内には大小6つの池があるが、その中で一番大きい「トンボ池」に近年、ライギョやアカミミガメが繁殖しているので、何とか手を打ちたいとの要請を受けた。当日は地元からおよそ1,000人が集結し、泥んこになりながら外来生物を捕獲していく。

あばれる君が参戦する「鳥飼八幡宮」(福岡県)

福岡市の鳥飼八幡宮の池の水抜きに、あばれる君(31)が参戦する。
100年の歴史を誇る池が真緑に汚く濁ってしまい、今の汚い状態のままだと神社の景観を損なうため、そのままでは池を潰すことになるかもしれない。かいぼりを実施してキレイにし、池を存続させることができるのか、こちらも見どころ。

超巨大池のその後に迫る「山田池公園」(大阪府)

2017年11月放送の第5弾で水を抜いた超巨大池、「山田池」のその後。前回は少し池の水を残していたが、今回はぜんぶの水を抜き、ライギョの全捕獲に挑む。

『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦7』予告動画

話題を集めた過去の『池の水ぜんぶ抜く』

2018年1月2日放送「池の水ぜんぶ抜く大作戦6」

金色のバブリーなコイに平野ノラもビックリ

平野がMCのココリコ・田中直樹(46)と向かった「そうか公園の池」は、草加市を代表する公園の中心にある大きな池。
平野は「あんなに歩けないものだと思わなかったです」と振り返ったが、魚の捕獲については「でっかいコイ、バブリーな金色のコイとかも獲って、あと巨大な貝(=ヌマガイ)もビックリしました。自分の想像をはるかに超えていて、本当に楽しかったです」と興奮したようだ。

伊集院光「一歩間違えれば死んでいた」壮絶な裏話

12月25日放送のラジオ番組「伊集院光 深夜の馬鹿力」(TBSラジオ)で、「一歩間違えれば死んでいた」という壮絶な裏話を明かした。
新春特番では、各地の水を抜いたVTRを観ながらあれこれしゃべりまくるというシチュエーションだった。ただし場所はスタジオではなく、池のほとり。12月の寒風吹きすさぶ日比谷公園の池のほとりで、エンエン収録が続いたという。

2017年11月26日放送「池の水ぜんぶ抜く大作戦5」

小泉孝太郎が“逆オファー”で参戦

テレビ東京のドラマ『警視庁ゼロ係』のスタッフから「小泉孝太郎さんが『池の水抜いてみたい』と言っている」と番組に情報が入る。
所属事務所へ連絡してみると「本当です」とのことで、今回の出演が実現した。
小泉:まず、番組のタイトルからしてワクワクするじゃないですか。タイトルからスゴい!
普段は池とか、どんな生物がいるとかわからない。でも水を抜いたらどんな地形かもわかるし、どんな生物がいるのかも見えてくる。ワクワク感を久々に感じましたね。

2017年9月3日放送「池の水ぜんぶ抜く大作戦4」

「佐賀藩江戸上屋敷の瓦」を発見

2017年9月3日にテレビ東京で放送された『緊急SOS!超巨大生物が出た!出た!池の水ぜんぶ抜く大作戦4』で、日比谷公園の雲形池(1905年頃に作られた、公園等の装飾用としては日本で3番目に古い「鶴の噴水」で有名)から発見された、佐賀藩江戸上屋敷の軒丸瓦と軒平瓦の破片。軒丸瓦には、佐賀藩鍋島家の「杏葉紋」が残っています。

芦田愛菜からまさかの“逆オファー”

芦田が出演することとなった経緯は、7月のとある日、伊藤Pの元へ、ドラマ担当のプロデューサーから1本の電話が入ったことがことの発端だという。そこで「女優の芦田愛菜が池の水を抜きたい、と言っている」というまさかの“逆オファー”があり、出演が実現したのだとか。
たまたま番組を見ていたら、「楽しそうだなぁ~自分もやってみたいな」って。実際に自分で体験してみると、テレビで見ていたとき以上の面白さ……自分の想像を超えました(笑)!

2017年6月25日放送「第3弾 池の水ぜんぶ抜く」

伊集院光がラジオ番組で出演依頼

前回の放送でMCのロンドンブーツ1号2号・田村淳(43)が「出たいタレントがいたらご連絡ください」と言っていたのを受け、自身のラジオ番組で「すげぇ行きたい!」と話していた。
「なんで出たかったのか皆に聞かれるんですけど、出たくないですか? 普通。
子供の頃、近所でドブさらいとかやっていると何が出てくるのかと思ったり、池の水が減ってきて魚の背中が出たりしているとワクワクしましたよね。
しかも、人に喜ばれる。そりゃやりたいでしょ」

自身のTwitterでも「池の水」に関する話題を投稿していて、番組に対する“熱さ”を感じます。

『池の水ぜんぶ抜く』人気の秘密とは

番組プロデューサーが語るヒットの要因

『池の水ぜんぶ抜く』の魅力は「シンプルさ」

――伊藤Pがお考えになる「池の水ぜんぶ抜く」の魅力って何でしょう?

童心というか、“池の中から何が出てくるんだろう”という純粋な思いだけで見ていられる番組なので、おじいちゃんやおばあちゃんでも子どもに帰って「何が出てくるんだろうねえ」って楽しめるところがいいのかなと思います。ただそれだけのシンプルさがうけているのかなと。

ヒットの要因は「人間のちょっと悪い部分」

ヒットした要因を問われると、「平気でごみを捨てたこともあったり、家で飼っていた外来種みたいなものをパッと捨てた方も、この会場にもたくさんいらっしゃると思うんですけど、やっぱりあそこ(池)を空けた時に出てくる、そうした人間のちょっと悪い部分」が視聴者の関心を呼んだのではないかと分析。

ちなみに、環境問題の要素についてはプロデューサーも驚きだったようです。

――番組も第4弾となりますが、企画の発足当初と比べて変わったことはありますか?

池の水の下で、目に見えないところで日本古来の生物が駆逐されていたり、外来種が勝手に放り込まれていたり、実は環境問題が隠されていたことが驚きでした。池の水が国際化していることを発見するなんて思ってもみなかったですね。正直最初は“なんか取れたら取れたで…”程度の気持ちだったんです。

テレビ関係者・評論家からも称賛の声

演出家・テリー伊藤氏「子供からおじいさんまで誰でもわかる」

「池の水を抜くって、子供からおじいさんまで、誰でもわかる。ワンコンセプトだから“感性”がいらない。だから、みんなで楽しく見られる。こういう番組を次から次に考え出すのはすごいよね」

評論家「見たことのないもの」「プロレス感覚の演出」

評論家のスージー鈴木氏は『池の水ぜんぶ抜く』が大成功に至った要因を次のように分析しています。

水を抜いた池の底など、ほとんどの人々は見たことがなかっただろう。見たことがない映像は、当然のことながら、スマホで検索されることはない。結果、人々は、水を抜いた池の底や、そこに生息していたアリゲーターガーやブルーギルを、スマホではなく、テレビで初めて見て、驚嘆するのである。
さらに視聴率を押し上げた要因として、1つには、外来種対在来種という、非常に分かりやすい対立図式にまとめ上げていく構成の妙もあろう。
言わば、悪役(ヒール)=外来種と善玉(ベビーフェイス)=在来種の戦いという「プロレス感覚」の演出である。存在すら知らなかったアリゲーターガーやソウギョなどの外来種が、いかにも悪役レスラーのようなグロテスクな見た目をしているのも、「プロレス感覚」をいやおうなしに盛り上げる。

記事ではさらに、池から外来種やゴミが取り除かれる「デトックス感覚」とでも言うべき快感や、「生態系を守ろう」という教育的な読後感を残すことも支持される要因として挙げています。

タイトルに偽りなし

メディアプランナーチーム「指南役」によるコラム記事でも『池の水ぜんぶ抜く』の強さの秘密に言及されています。

『池の水ぜんぶ抜く』の強さの秘密は何か。
よく言われるのが、そのシンプルなタイトルだ。実際、同番組は池の水を全部抜く。そこに何も足さない、何も引かない――そう、タイトルに偽りなし。ウケた理由の1つは、そんな分かりやすさにあると思う。
『池の水ぜんぶ抜く』は、最初からタイトル=企画内容である。つまり、「この番組はこの企画一本でやりまっせ!」という姿勢。実に潔いし、何よりそれは、「池の水を全部抜く」という企画が優れていることを意味する。

この記事では、ほかにも「極めてテレビ的に王道のフォーマット」や「能動的に働くゲスト」といったポイントが挙げられています。

生物の専門家からも絶賛の声

「教材としても非常に価値がある」

「この番組に外来生物の専門家として出演している静岡大学教育学部講師の加藤英明博士は『教育的な要素が強い』と評し、自身の教材としても使っているほど意義深い番組だと絶賛しています。番組では、マンパワーとして一般参加も呼び掛けているのですが、子供たちの参加が回を重ねるごとに増えているそうです。加藤博士が『番組のおかげで身近にある自然を少し覗いてみようかなと思う子供たちが増えている』とコメントを寄せるほど、いい影響を与えているようです」

一方で一般参加者やネットからは批判の声も

絶賛の声の一方で、ロケに参加した一般参加者が投稿したブログも話題になっています。

ブログエントリのタイトルは「池の水ぜんぶ抜く大攪乱! 2/18」。岐阜県笠松町のトンボ天国にあるトンボ池で行われた収録に参加したブログ主。現地には、子どもを含む大勢の一般参加者がいたものの、スタッフからの事前説明は一切ない。
「泥の攪拌や参加者の踏み荒らしにより,イトモロコやゼゼラ等の小型魚を中心に瀕死個体や死体が池の各所に浮く」「瀕死の大型魚(コイやカムルチー)も散見」といった状況だったという。
今回の番組企画趣旨では「トンボのヤゴが、外来種の魚に食べられているらしいので駆除してほしい、との要請を受け出動」となっているが、その外来種を判別できる専門家がいない状態だったようだ。

以前には、奈良県で行われる予定だった企画が取材NGになり放送中止になることもありました。

奈良県の箸墓古墳に隣接する池の水を抜く企画を立ち上げて予告編まで放送したものの、地元から取材NGを言い渡され、この企画の放送が中止となったのだ。

「池の水をぜんぶ抜く」ことの生物学的メリットとは

池の水を抜くことを「かいぼり」と呼ぶ

池の水を一時的に抜いて、水質や生態系の改善を図る作業を「かいぼり」といいます。もともと日本の農地では、農作業をしない時期にため池の水を抜き、魚の捕獲や護岸の補修・点検をしていました。これが、かいぼりの始まりです。

メリットは“水質改善”と“生態系の保全”

かいぼりは、池の底を空気にさらすことで、水質改善を可能にしています。水が濁っている池は、庭泥から窒素やリンが水中に溶け出し、アオコなどの植物プランクトンが繁殖しています。しかし池底を空気にさらせば、窒素が空気中に発散され、リンは水に溶けにくい状態に変わるのです。
また、池の水を抜いた際に、生態系を荒らす外来生物の駆除、水生植物の管理、ゴミの駆除なども行うことができるという点も、かいぼりのメリットとして挙げられます。池の中の生態系が守られれば、在来種が外来種に食べられてしまったり、絶滅してしまったりすることを防ぐことができます。

テレビ東京が発信する子供からお年寄りまで楽しめる「環境バラエティ番組」とも言えそうな『池の水ぜんぶ抜く』。月1レギュラーにパワーアップして、さらなる期待がかかります。そして、この番組が身近にある「池」を見つめ直すきっかけになったり、環境再生への足がかりになれば…とも感じます。