特集2017年6月3日更新

時速320キロオーバーの迫力!マン島TTレース

最高時速320キロオーバーで一般道をバイクが次々に駆け抜けていく…そんな迫力あるレースを目の前で見られる場所があるんです。それが、マン島で毎年行われる『マン島TTレース』。今年も5月27日から予選が始まっており、本戦は本日6月3日から。その魅力をお伝えします。

マン島TTレースとは

世界最古の公道バイクレース

毎年、5月最終週から2週間の間、英国王室属国であるマン島の公道を使って開催されるバイクレース。その歴史は現存するバイクレースの中ではもっとも古く、1907年より開催されています。サーキットではなく、一周60キロの公道を平均時速200キロで走ります。最高時速は320キロオーバー。目の前をバイクが走り抜けていく迫力に熱狂的なファンも多く、 日本でも、現地で観戦できるツアーが販売されています。転倒やコースアウトの危険度が高く、死亡事故が多いことでも非常に有名なレースです。
本戦ではスーパーバイク、スーパースポーツ、スーパーストック、 TT Zero、ライトウエイト、シニア、サイドカーの7種目が競われます。

下の動画は1948年のもの。このレースの長い歴史を実感します。

マン島TTレースの歴史

マン島TTは、すでに100年以上の歴史があるんですが、そもそもは、1903年にイギリスで20mphのスピード規制が設けられ、レースができなくなってしまったことが発端でした。(ってことは、その前はイギリスにスピード制限などなく、公道でレースをすることが合法だったんですかね?)。でも、『グレートブリテン&アイルランド・カークラブ』のサー・ジュリアン・オードというひとが、1904年にマン島当局にかけあって、マン島でトライアルレースをやる許可を出してもらったんですね。
そして公道レースが始まったんですが、最初は4輪のレースでした。それが1907年から新たに2輪のレースが始まり、途中でコースが変わったりもしつつ、現在に至るそうです。

1963年には日本人選手が優勝したことも

マン島TTレースの長い歴史の中では、何と優勝した日本人がいるんです。1963年のウルトラ・ライトウエイトクラスで優勝した伊藤光夫選手は、マン島TTレースで優勝した唯一の日本人選手だそう。今後の日本人選手の活躍に期待したいところですね。

マン島ってどういうところ?

マン島ってどこにあるのか? グレートブリテン島とアイルランド島の中間、まさにイングランドとスコットランドとウェールズとアイルランドの真ん中ぐらいというユニークな場所にあるんです。
地勢的にもそういう面白い場所にあるんですが、政治的にも面白いんです、ここ。イギリスの一部みたいな場所にあるんですが、正式には『グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国』(いわゆるイギリスの正式名称)の一部ではなく、イギリスの王室属領なんだそうです。とはいえ、独自の議会、政府を持っていて、自治権を持っている。イギリスの一部のようなイギリスとはちがうような、微妙なポジションなんですね。そして独自の文化を持っているようです。

レースの魅力

何と言っても臨場感がすごい!

マン島TTレースの魅力は、何と言ってもその臨場感。目の前を高速で走り抜けるバイクを見られる体験は、一度味わうと癖になる大迫力。レースを公道で開催しているのはマン島だけではありませんが、もっとも有名な公道レースがこのマン島TTレースでしょう。

世界一危険なレースとしても有名

250人以上が死亡している危険なレース

公道で開催されることから、コースアウトや転倒時に周囲にある民家の石壁に激突するなど、事故の際にライダーが死亡しやすい環境であること、また、マッドサンデーと言われる、速度無制限、一般参加可能な走行枠で、バイクで来場した観客が亡くなることもあり、常に問題視されています。昨年は、4人が亡くなり、開催以来の死亡者は250人を超えました。

下記は事故の様子をおさめた動画です。ショッキングなシーンも含まれるので、心臓の弱い方は再生をお控えください。

昨年は1日で2度の死亡事故が

マン島レースで命を落としたのは、ベル氏で252人目となる。今年のレースでは、オーストリア出身の27歳、ドワイト・ビーア選手と、英国出身の50歳、ポール・シュースミス選手が6月5日、同様にサイドカーレース中に命を落としている。

過去には日本人選手も命を落としている

2013年には松下ヨシナリ選手が、それ以前にも1966年に藤井敏雄選手、2006年に前田淳選手が事故で亡くなっています。

マン島で開催中のマン島TTレースで、日本人の松下ヨシナリ選手が予選走行中、事故を起こし死亡した。享年43歳。事故が起きたのは、Ballacrye(バラクライ)という場所で、ここでは2011年の同大会でも2名が事故死している。

現地の様子

昨年のレース結果

マイケル・ダンロップ選手が史上最速記録で優勝

マイケル・ダンロップ選手が"同レース史上最速の男"に輝いた。現在27歳のダンロップ選手は、今年最初のレースとして行われた「RST スーパーバイク TT」でラップタイムとレースタイム両方の最速記録を更新。最初の2周でそれぞれ17分を切り、その後もスピードを緩めることなくレースを展開し優勝した。

TT Zeroで無限のバイクが3連覇

日立マクセルは、2016 年 6 月 8 日に開催された「2016 年マン島 TT レース TT Zero Challenge クラス」の決勝レースで、日立マクセル製リチウムイオン電池を搭載したM-TEC(以下、無限) の電動バイク「神電 伍(SHINDEN GO)」が3連覇を達成したと発表しました。

今年のマン島TTレースは?

今年の注目選手2人

今年のプログラムの表紙を飾った、マイケル・ダンロップ選手とイアン・ハッチンソンの二人に注目が集まっているようです。今年は誰が優勝するのでしょうか?そして、記録更新はあるのでしょうか?レースの行方が楽しみですね。

マイケル・ダンロップ

マイケル・ダンロップは、昨年、ラップレコードとコースレコード両方で史上最速記録を更新し、スーパーバイクとシニアTTクラスで優勝した、28歳の大注目選手です。今年はどんな走りを見せてくれるのでしょうか?

イアン・ハッチンソン

イアン・ハッチンソンは、2010年にサイドカーを除くすべての部門で優勝するという快挙を成し遂げ、その後、事故で脚を負傷するものの、劇的な復活を遂げた、37歳のベテラン選手です。ドキュメンタリー映画『CLOSER TO THE EDGE マン島TTライダー』でもその姿を見ることが出来ます。

無限の4連覇なるか

『神電 六』に期待がかかる

電動バイク部門、TT Zeroで3連覇中の無限が、今年も優勝できるかも見どころの1つです。

2012年から始まった無限独自のプロジェクト、オリジナル電動バイクによるマン島TTレースへの挑戦は2014年、2015年、2016年と3年連続で優勝を達成した。今年も優勝獲得と更なる記録更新に向けて「神電 伍」からさらなる性能の向上を施した「神電 六」でマン島TTレースTTゼロチャレンジクラス(6月1日〜6月7日)に挑戦する。

ジョン・マクギネスが事故による負傷で欠場

昨年まで参戦していたジョン・マクギネス選手が転倒による怪我で不参加となり、今年はブルース・アンスティ選手が起用されました。マクギネス選手の走りを楽しみにしていたファンには、期待と不安が入り交じるレースになりそうです。
マクギネス選手の優勝回数には及ばないものの、アンスティ選手もマン島TTで何度も優勝している素晴らしい選手です。4連覇、ぜひ成し遂げてほしいものですね。

ネットでも楽しめるマン島TTレース

Twitter

公式Twitterや、実際に観戦している方のツイートなど、現地の空気が伝わってきます。今年から電子タバコ禁止というのが時代を感じさせますね。

Facebook

公式サイトは英語で読みづらい、という方にも親切なファンページ。スケジュールや注目選手の情報が日本語で投稿されています。

YouTube

YouTubeの公式アカウント。過去の動画も見られるので、ついつい時間を忘れて見入ってしまいますね。

来年以降のマン島TTレース

数年先まで日程が決まっている!

来年も参加する人は、もうすでにフェリーやホテルの予約を始めているとか。リピーター率70%とはすごいですね。公式サイトのスケジュールには、2020年までの日付が載っています。チケット情報も公式サイトで見ることが出来る(現在は2017年分が掲載中)ので、行きたい方は早めの手配をオススメします。


世界最古にして、世界一危険なバイクレース。その危険さゆえに、毎年存続が危ぶまれているという話も。死者が相次ぐのは悲しいことではありますが、命知らずのライダーたちの迫力ある走りを楽しみたいのもファンの願いです。公道である以上、安全面に配慮というのもなかなか難しいのかもしれませんが、死者が増えないように、素晴らしいレースを繰り広げてほしいものですね。