特集2017年6月17日更新
「何のために」は愚問?意味のない商品たち
昨年からアメリカで大ブームを巻き起こしていたという「ハンドスピナー」が、今年に入って日本でもブレイクしているようです。ハンドスピナーは、誕生の経緯はさておき、基本的には手持ち無沙汰を解消するだけの“意味のない”商品とされていて、ほかにも似たような商品があります。それらをいくつか紹介していきましょう。
「ハンドスピナー」が全世界で大ヒット!
日本では5月上旬にいきなりブレイク
海外では昨年あたりからすでにブームになっていたという「ハンドスピナー」。日本では3月末に有名YouTuberがハンドスピナーを取り上げてじわじわと認知度を増し、5月5日に日本テレビ系の情報番組「ZIP!」で取り上げられたのを皮切りに各メディアで取り上げられるようになり、一気に知られることになりました。
ハンド・スピナーは、プラスチックや鉄でできた本体に、グリップが3点ついた回転部分と、回転をなめらかにするベアリング(軸受け)が埋め込まれた中心部分からなる。だいたい手のひらに収まるサイズで重さは50~100g程度だ。
遊び方は、中心部分を2本指で挟み回転させるだけ、といたってシンプル。遊びなれたユーザーは、回転の長さを競いあったり、指を組み替えるといった「ワザ」を編み出したりと、独自の遊び方を開発して思い思いに楽しんでいる。
もともとは筋無力症の子供向けの玩具として発明された
もともとは1990年代に米国フロリダの発明家であるCatherine A. Hettinger(キャサリン・A・ヘッティンガー)氏が筋無力症の我が子のために原型を作り、玩具メーカーで商品化する計画もあったが中止。ヘッティンガー氏は資金不足から特許を維持できなくなり、誰でも自由に作れるようになった、とか。
遊び方は…回すだけ!
海外では持ち込み禁止になる学校が出るほどのブームになっているというハンドスピナーですが、遊び方は“回すだけ”という単純なもの。しかし、その回している感触が「クセになるかも!」という中毒性があるとかで、これがブームの秘密なんでしょうね。
ちなみに、集中力を高めたり、気分を落ち着かせたりする効果もあるといいます。
付属の商品説明を読むと、
「これで何をするの?とよく聞かれるのですがそんな皆さんに警告です。物事に意味を求めてしまう時点で、すでに現代病に侵されています。このおもちゃは何かをするためのものではなく、何もしないを楽しむコペルニクス的大転換の暇つぶし器具です」
と、文言が並ぶ。
あーもうハマったわ。沼だわこれ。ハンドスピナー沼にどっぷりつかったわ。 pic.twitter.com/GD7d6wZ19C
— YUKIchannel (@YUKI_channel_) 2017年4月29日
最初は「え、これ回すだけ?」「これ以外の遊び方はないの?」「なんでこれが流行するの!?」と困惑する声が多数。しかし、ほとんどの人がしばらく触っているうちに、催眠術にでもかかったように「面白くはないけどなぜか触っちゃう……やばい」「これ買っちゃうかも……」とトロンとした目で語っていたのが印象的でした。どうなってんだ。
意外な活用法も
例のやつ、買ったぶんの元を取れた pic.twitter.com/ZzWvgbldZg
— ぴっ太 (@pitta552) 2017年5月12日
このおもちゃで猫たちが快感を感じているのかは不明だが、画像ではその動きに興味を持ち、2匹で仲良く楽しんでいるように見える。これを見て「とても可愛らしい動画ですね」「猫様達が楽しんておられる!」など、愛らしいその様子に癒されてしまう人は多かったようだ。
まだまだある! 意味のない商品たち
ここからは、ハンドスピナーと同じように基本的には“意味のない”商品を紹介していきましょう。まずは、ハンドスピナーと同時期にアメリカで話題を呼んだ「Fidget Cube(フィジェットキューブ)」です。
Fidget Cube
手持ち無沙汰を解消する「ただのスイッチ」
実は、ハンドスピナーはアメリカでは「フィジェットスピナー」と呼ばれていて、同じようなアイテムは「フィジェットトイ(Fidget Toy)」と呼ばれています。
「fidget」とは、「落ち着かない」「そわそわする」という意味を持ち、「フィジェットトイ」は「手持ち無沙汰を解消する玩具」ということです。また、「手遊び(手慰み)ツール」「指遊びツール」などとも呼ばれています。
さて、能書きが長くなりましたが、本題の「Fidget Cube」とは…
これは六面体にボタンやスイッチ、ダイヤル、スライドパッドなどがついている。
ただ、それだけ。
これらのスイッチ類に機能はないのだ。Bluetoothに接続してスマートフォンなどを操作できるわけでもない。ただ単に、指を動かすためだけのスイッチだ。
6つの指遊びを楽しめる
以下6つの指遊びを楽しむことができます。
・ペンのボタンのカチカチクリック
・グイングインまわして操作するミニ・ジョイスティック
・スイッチのON/OFF
・ウォーリーストーン(癒しグッズ)をなでなで
・スーツケースのダイアルロックのクルクル回転
・スピンできる小さな丸状のミニ・円盤
クラウドファンディングで7億円集める
昨年、商品化のために1万5000ドル(約160万円)を目標としてクラウドファンディングサイト「Kickstarter」に出展されると、最終的には640万ドル超(約7億円)もの出資を集めることに成功し、大きな話題となりました。
あまりの反響にニセモノが横行…
「7億円集める!」で世界中から注目されたことにより、コピー製品が出回ることになってしまったようです…。
Fidget Cubeの開発チームは、先着250名を対象に製品を14ドル(約1,600円)の値段で提供していた。ところがプレオーダーの最中にコピー製品がAmazonに登場し、わずか4ドル(約450円)で販売されている。
当然ながら、Fidget Cubeは大損害を被った。しかも悪いことは立て続くもので、Fidget Cubeは当初発表していた初回出荷のスケジュールを遅らせてしまっている。なのにコピー製品はすでに市場投入されているという不思議な状況だ。
次に紹介する「MOKURU」の公式サイトにデカデカと警告文が表示されていることからもわかるように、コピー製品の横行は「資金がないからアイディアだけで勝負」というクラウドファンディングに「背後霊のごとくつきまとう問題」だと指摘する記事もありました。
MOKURU
日本発の“やみつきになる”卓上おもちゃ
この「MOKURU」は日本発の発明品で、このアイテムもKickstarterに出展されて話題となりました。
若干ビア樽状になっている円筒形のデザインで、縦に転がせるようになっている。
製品の機能に関する説明は、これだけ。
だが、シンプル故に様々な遊び方が可能だ。万年筆のキャップで遊ぶシーンをヒントにしたというMOKURUは、自由自在に回転させることで百花繚乱のパフォーマンスを創造できる。ジャグリングのようなこともできるし、複数人でゲームをしてもいい。
ちょっと練習が必要な分、やみつきに
卓上でバランスよく転がるさまがおもしろく、簡単そうに見えるが……。
しかし、これはちょっと練習が必要らしい。
簡単に遊べるおもちゃは作らないという製作者のおもちゃ作家・野出正和さん。遊びがいがある台詞だ。
説明によると数分で習得できるらしいが、覚えれば覚えるほど、もっと上級、もっとトリッキーなことがしたくなってくる。
∞にできるシリーズ
250万個以上売り上げた「∞プチプチ」
無限プチプチ見つけた pic.twitter.com/IW2BkRtx11
— ノルクネ (@NRKN_ec_6) 2017年4月29日
“本来は一度しか楽しめない感触を無限に楽しめる”をコンセプトに、バンダイが発売している「∞(むげん)にできるシリーズ」。その第一弾であり、今から10年前の2007年9月に発売された「∞プチプチ」は、緩衝材を潰す感触を無限に楽しめるとして当時大きな話題を呼び、累計販売数250万個を突破する大ヒット商品となりました。
「∞エダマメ」も200万個の大ヒット
∞プチプチの翌年に発売された「∞エダマメ」も200万個を超えるヒット商品となりました。こちらは、枝豆の豆をプニッと押し出す感触を無限に楽しめるというものです。
このほかにも「∞にできるシリーズ」は、お菓子の開け口をペリッとめくる感触を無限に楽しめる「∞ペリペリ」、プルタブを開ける感触とシュワッと泡が弾ける爽快なサウンドが無限に楽しめる「∞缶ビール」&「∞ソーダ」、ところてんをニョリッと押し出す感触を無限に楽しめる「∞ところてん」、板チョコをパキッと折る感触を無限に楽しめる「∞チョコレート」といった商品が販売されています。
ほじれるんです。
好きなだけ鼻をほじれる
「∞プチプチ」を手がけた高橋晋平氏が企画開発を担当した商品。心おきなく鼻の穴をほじることができるカプセルトイです。
本商品は、4種類の異なる形状の「鼻」をモチーフとした、合成ゴム製のボールチェーン付きマスコットで、好きなところに取り付けて持ち歩ける他、鼻の穴を好きなだけほじることができます。人間は皆、鼻をほじりたい欲求を本能的に持ち合わせているのに、普段、人前で鼻をほじることは恥ずべき行為とされています。しかし、この「ほじれるんです。」をほじることにより、恥をかくことなく、欲求を満たすことができる、画期的アイテムとなっています。
開発で「大切なものを失っている気が…」
―開発で苦労したところなどは?
高橋 「ほじれるんです。」でもそうだったんですが、同僚の女性に鼻やクチビルを見せてくれと頼みまして。そうしたら本気で引かれてしまって……。社内でのイメージはかなりおかしなことになっているかもしれません。新商品開発のたびに大切なものを失っている気がします。
iSpin
カスタマイズ可能な真鍮製ハンドスピナー
iSpinはクラウドファンディングサイト「Indiegogo」にて目標出資額の15倍以上を集めた人気アイテム。先に紹介したハンドスピナーの一種ですが、精密削り出しの真鍮製で高精度のベアリングが用いられています。「しらべぇ」の記事では「工業機械」と表現されていて、暇つぶしのためのグッズとしては「贅沢なもの」だとしています。
『iSpin』は、船の舵のような形のディスクトイである。
一見、何に使用するのか分からない。だが、これは指先で回すもの。PR動画を見ると、勢いよく回転しているのが分かる。開発者曰く、ペン回しの延長線上だという。
これだけの製品だ。回るからといって、何か特別な機能を果たすというわけではない。
自分好みにデザインできる
iSpinはパーツごとに分解してカスタマイズすることができる点が特徴的で、カラフルで美しい自分だけのハンドスピナーを作ることも可能です。
18個のカラフルなOリングと10のブラスパーツ、ベアリングなどをひとつずつ取り外して分解することができる。
パーツを分解して組み合わせることにより、自分好みのハンドスピナーをデザインすることが可能となるのだ。
回転するスピンは虹色のように映り、美しい。
いくつかの記事で、昨年の大河ドラマ「真田丸」で草刈正雄演じる真田昌幸が手の中でクルミを回していた、という点に触れていましたが、これが史実かどうかはさておき、現代でもペン回し、ボールペンやシャーペンの“カチカチ”ノック、貧乏ゆすりなど、集中力を高める際に、もしくは集中力が高まった際に思わずやってしまう行動があります。これらは今回紹介した意味のない商品たちに重なるものがあり、人間の本能にダイレクトに通じるものだからこそ、大ヒットや大ブームにつながるのでしょうね。
ついつい御託を並べてしまいましたが、こうやって真面目に頭で考えるのではなく、まずは本能にまかせて手に取って体感したい商品たちだといえるでしょう。