特集2016年11月14日更新

「働きすぎ」で死なないために~過労死問題特集

大きな話題となった電通新入社員の過労自殺問題。この問題は特別な“事件”ではなく、近年の日本ではこういった過労死のニュースは非常に多くなってきています。なぜ、そしてどんな環境で過労死は起こるのか?過労死しないためには?まとめてみました。

最新ニュース

長時間労働、撲滅を=連合系メーデー―東京

時事通信 / 2017年4月29日 12時39分

 連合主催の第88回メーデー中央大会が29日、東京・代々木公園で開かれた。主催者発表で約4万人が参加し、「長時間労働の撲滅」「格差是正」などを訴えた。 [全文を読む]

電通の新入社員が過労自殺

電通社員が自殺◇事件のあらまし

2015年12月 広告代理店の電通社員だった高橋まつりさん(当時24)が2015年12月に自殺
2016年9月30日 三田労働基準監督署(東京)が過労による労災を認定
2016年10月7日 高橋さんの母親と代理人弁護士が記者会見することでマスコミが報道し始める

2015年12月30日、電通社員が投身自殺

《男性上司から女子力がないだのなんだの言われるの、笑いを取るためのいじりだとしても我慢の限界である》──。そうツイートした5日後、彼女は社員寮4階から身を投げた。
大手広告代理店「電通」社員の高橋まつりさん(当時24才)が昨年12月25日に自殺。

過酷な労働内容をTwitterで吐露

以下《》内は、彼女が残したLINEやツイッターの一部だ。
《神様、会社行きたくないです》(10月4日)
《土日も出勤しなければならないことがまた決定し、本気で死んでしまいたい》(11月5日)
《今から帰宅だが、どう見積もっても時間が足りないぞ?》(12月9日午前4時)
過重労働が極限状態に達していたことがうかがえる。

10月14日、電通に立入検査

電通本社に立ち入ったのは、東京労働局監督課の過重労働撲滅特別対策班、所轄の三田労働基準監督署の署員を含む労働基準監督官複数人。また、電通の支社にも、同日までに各都道府県の労働局が同様の立ち入り調査を行った。
東京労働局の担当者によると、調査内容は「主に労働時間」。担当者は、今回立ち入り調査を行った理由の1つとして、三田労基署が9月30日に高橋さんの自殺を労災認定したことを挙げ、「罰則のついている調査なので、送検も考えられます」と説明した。

残業時間を過少申告させていた?

代理人弁護士によると、電通はこの70時間を死守するために「労働時間集計表」に過小申告するように指導していた。亡くなった高橋さんも昨年10月は「69.9時間」、11月は「69.5時間」と記載していた。
しかし、実際の残業時間は100時間を超えていた。こうした実態が高橋さんに限らず、他の社員にも及んでいたとなれば36協定違反で上司などの責任者を逮捕し、送検することが可能になる。

10月25日、電通「22時一斉消灯」開始

広告大手の電通は2016年10月24日から、新入社員だった高橋まつりさん(当時24)の自殺が過労による労災と認定されたことを受けた労務環境改善の一環として、22時での一斉消灯を始めた。

日常的なパワハラも蔓延?

「私は新入社員の時、部署の人々との飲み会で『脱げ!』と言われて強制的に服を脱がされて、何度も素っ裸になったことがあります。翌年に入ってきた新入社員も、嫌がっているにもかかわらず同じことをやらされていました。また、飲み会の席で上司に思い切り平手で殴られたこともよくありました。

25年前にもあった電通の過労自殺事件

●25年前に起きていた、もうひとつの悲劇
電通では25年前の1991年にも過労自殺が起きている。このケースでは、遺族が電通の損害賠償責任を追及するため裁判を起こし、最高裁まで争われた。労働法の分野では「電通事件」などと呼ばれる著名な裁判だ。
一 長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた労働者がうつ病にり患し自殺した場合に使用者の民法七一五条に基づく損害賠償責任が肯定された事例

長時間労働が全社的に常態化?次々と発覚する電通

大手広告会社の電通に勤めていた高橋まつりさん=当時(24)=が過労自殺した問題で、電通の中部支社(名古屋市)でも平成22年8月、違法な残業を社員にさせていたとして、名古屋北労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが分かった。電通は26年6月に関西支社(大阪市)が、27年8月に本社(東京都港区)が同じ理由で是正勧告を受けている。

「過剰な残業」を擁護し大炎上

武蔵野大学教授「残業100時間で過労死情けない」

翌日に削除されたが、彼はこう述べていた。
<月当たり残業時間が100時間を超えたくらいで過労死するのは情けない。会社の業務をこなすというより、自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば、残業時間など関係ない。自分で起業した人は、それこそ寝袋を会社に持ち込んで、仕事に打ち込んだ時期があるはず。更にプロ意識があれば、上司を説得してでも良い成果を出せるように人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。それでも駄目なら、その会社が組織として機能していないので、転職を考えるべき。また、転職できるプロであるべき長期的に自分への投資を続けるべき>

批判殺到で本人だけでなく大学も謝罪

世間をお騒がせいたしましたことにつきまして、謹んでお詫び申し上げます。
(中略)
事実関係を調査の上で然るべき対応をとりますとともに、規律遵守を徹底し、再発防止に全力を尽くす所存であります。

その他の過労自殺をめぐるニュース

今年4月、高浜原発の審査めぐり関電課長が過労死

関西電力の男性社員(40代)が自殺しましたが、労働基準監督署は「労災」認定しました。いわゆる過労自殺です。高浜原発(福井県)の1号機と2号機の運転延長に関する、原子力規制委員会の審査対応に当たっていたといいます。出張先の都内のホテルで、今年の4月20日、自殺していたことが見つかったものです。

海外からの実習生も過労死する問題も

岐阜労働基準監督署は今年8月、外国人技能実習生として働いていたフィリピン人男性について、長時間労働が原因で過労死したとして労災認定を行いました。フィリピン人男性は2011年に来日、岐阜県の鋳造会社で、鉄を切ったり、金属を流し込む型に薬品を塗る作業を担当していましたが、2014年4月に従業員寮で心疾患のため亡くなりました。死亡する直前には、1カ月あたり100時間を超える残業を行っていたそうです。

月200時間超残業も手当なく自殺

亡くなる前の7カ月間で取れた休みは、有給休暇の2日間のみ。朝から深夜まで働かされ、残業時間は少ない月でも162時間、多い月では227時間に及んだという。厚労省が定める過労死ライン(80時間)をはるかに超える時間だが、残業手当は支給されていなかった。

過労自殺並ぶ「ブラック企業大賞」受賞企業

今回ノミネートされた国立大学法人・東北大学を含む8社では、計7人が主に長時間の過重労働によって死亡している。主催者の配布資料やこれまでの報道によれば、それぞれ以下のような状況だった。
大賞を受賞したワタミフードサービスでは2008年6月、入社2カ月の女性社員(当時26歳)が精神疾患を発症し過労自殺した。手帳には「どうか助けてください。誰か助けてください」などと書かれていた。
特別賞の東北大学では2人が死亡。ノミネート理由になった1人目の死者は薬学部の助手(当時24歳)で、07年12月に「新しい駒を探してください」との遺書を残して自殺した。

「過労死白書」発表

「過労死白書」から見る日本の現状

長時間労働の多い企業の特徴は…

こうした長時間労働の理由について過労死白書はどのように分析しているのか。「所定外時間が必要となる理由」における企業調査の箇所を見ると、「業務量が多い」や「人員不足」「顧客対応」が圧倒的に多い。つまり、長時間労働は労働者の「生産性の低さ」が問題ではないことが示されている。「労働時間の法整備や、いっそうの企業の自主努力が必要」(今野氏)であることは明らかだ。

「過労死ライン」企業が2割超

それによると、1か月間の残業時間が、労災認定の目安で「過労死ライン」とされる80時間を超えた正社員がいる企業は22.7%にのぼり、とくに情報通信業が44.4%で最も高かった。

過労・残業問題に対する政府、社会の対策

厚生労働省による過労死防止対策

この総合対策では、
(1) 時間外・休日労働時間の削減
(2) 年次有給休暇の取得促進
(3) 労働時間等の設定の改善
(4) 労働者の健康管理に係る措置の徹底

を主な柱としており、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないようにするため、労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することを事業者に求めています。

11月は「過労死等防止啓発月間」

厚生労働省では、11月の「過労死等防止啓発月間」を中心とした期間に、過労死等の防止のための活動を行う民間団体と連携して「過労死等防止対策推進シンポジウム」を42都道府県(43回開催)で開催します。

なぜ過労死は起きる?

知らぬ間に「奴隷」にならぬように

働く人のメンタルヘルスにかかわっていると「自分が休んだら仕事が回らない」あるいは「休んだら周囲に迷惑をかける」という思い込みの強い人に対して、どう説得するかに頭を悩ませることがある。どれだけ疲労し自分の体が悲鳴をあげていても、なかなか休むことに納得できないのだ。月100時間を超える残業と過酷なノルマで、自殺するケースも多い。

なぜ日本人は有給休暇を取らない?

日本の労働者の有給休暇の平均取得率が改善されていない理由としては、過去に比べて祝日の数が増えたことや「完全週休2日制」が少しずつ普及されることにより、全体的な休日数が増えたことも一つの原因として考えられるものの、根本的には職場や同僚に迷惑をかけることを意識したり、上司が休まないので有給休暇を取らないケースが多い。また、人事評価への影響を懸念して有給休暇を取らないケースもあるだろう。

なぜ「仕事が大変なら辞める」にならないのか?

「退職という考えに至らない人がいるのです。高橋さんは電通に憧れ、同社に入るために努力して東大を受けたのかもしれません。こういう人は念願の会社にやっと入れたという喜びが強いあまり、つらいことがあっても退職しようという考えが持てない。だから何とかしようと頑張る。だけど、忙しい上に上司は厳しい。こうなると仕事と上司のことで頭がいっぱいになり、冷静な判断ができなくなります」

転職しない日本

10月16日付のニュージーランド・ヘラルド紙は、日本人が過労死してしまう理由のひとつには、日本では転職が世界と比べてあまり行われないことが挙げられると指摘する。「労働者の大半が一度企業に入社を果たせば、会社やキャリアそのものをめったに変えることがない」日本のような国は、「従業員たちの労働時間が不健康であるとして悪名高い」と。

欧米では考えられない「残業無制限」

EU加盟国では「7日ごとの平均労働時間が、時間外労働を含めて48時間を超えない」(EU労働指令)こととされている。
この48時間は日本の法定労働時間とは意味が違う。
残業時間を含めて法定労働時間を超える48時間以上働けせてはならないとする“絶対的規制”なのだ。日本のようにザル規制などなく、週8時間の残業しか許されないのである。

あなたが過労死しないために

個人レベルでできる?過労死対策

SNSには自殺防止のための「通報」機能が

「あなたのアカウントに自殺や自傷行為の可能性が疑われるコメントが投稿されているのを目にしたユーザーが、心配してTwitterに報告してくれました。つらいときに誰かと話をしたくなったら、現状への対処についてサポートできる専門家に相談すると助けになる場合があります。あなたが気づいている以上にあなたを気にかけている人がいることも忘れないでください」

Facebookの場合は

友人の投稿で、「これは不安だな」と思うものがあったら投稿の右上からメニューを開き、「この投稿を報告」を選択します。すると、「理由を選択してください」という項目が出てくるので、「Facebookに載せるべきではないと思う」→「脅し、暴力的、または自傷行為をほのめかすものである」→「自傷行為または自殺」と選択を進めます。そうすると、具体的に友人に対してどのようなアクションを起こしたらいいか選択肢が表示されますので、適切なものを選択しましょう。

「会社の英雄」になることの危険性

重要な締め切りの直前、プロジェクトの立ち上げ時、緊急のトラブル対応。初めての深夜残業や週末労働には、こうした理由があったことでしょう。自分がやらねばならない、という思いに突き動かされて仕事をし、目的を達成したときに得るものは「自分は会社の英雄だ」という満足感です。
しかし、自分が「会社の英雄」だと一度感じてしまうと、自分の働き方に大きな期待を抱くようになります。つまり、過去に成し遂げた仕事量を基準にして、仕事をするようになるのです。自分自身に対する期待に応えようとするあまり、頻繁に長時間の残業や週末労働をするようになります。

残業時間の証拠を残す4つの方法

一番簡単な方法は、日記をつけることです。毎日つけていれば、証拠として証明力は高いと判断されます。毎日つけずに気付いた時だけつけている場合だと、証明力は弱いです。
面倒でも毎日つけることです。今は、スマホで簡単に日記をつけられますので、利用すると良いです。日記には、上司とのやりとりや気付いたことも書いておくことです。労働時間の記録だけではなく、セクハラやパワハラの証拠にもなります。

用事があるのに残業オファーがあった時の答え方

そもそも、冒頭の質問のように「できる/できない」や「YES/NO」で聞かれても、必ずしも2択で答えなくてもいいんです。
このような質問は、本来自分の義務ではないことまで「YESと答えざるをえない」空気に飲まれ、無理やりYES(またはNO)に導かれてしまうことが多々あります。でも、これはわなです、気をつけて!
このようなときも、無理に空気に飲まれず、言い方に少し気をつけて答えることで、両方がトクをできる方法があります。

ページ内で触れたように、11月は厚生労働省の定める「過労死等防止啓発月間」であり、同時に「ゆとり創造月間」でもあります。過労死事件とそこにある問題を振り返るとともに、過労死しないための、「ゆとりある労働」を考えてみませんか。

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