特集2017年1月12日更新
どん底から復活!V字回復した企業特集
一時は米国本社からの株売却まで噂されていた日本マクドナルドが、2016年度は黒字となり、復活のきざしを見せています。マクドナルドだけでなく、どん底状態から復活した企業は他にもあります。今回はそんな企業をご紹介します。
リンガーハット
2009年に過去最大の24億円の赤字を計上したリンガーハット。「野菜たっぷりちゃんぽん」など、今ではリンガーハットを代表する商品戦略で復活を遂げた。
2009年、サービスの質低下で過去最大赤字
長崎ちゃんぽん唯一の全国チェーン店として知られているリンガーハットですが、外食産業全体の低価格競争の波に巻き込まれ、人件費を削ったことでサービスの質を落とし、ついには「ブランド力の低下」を招いて2009年に過去最大となる24億円の赤字を計上していました。
2016年、過去最高の業績を更新
16年2月期(通期)の売上高は前期比3.5%増の395億円、営業利益は15.9%増の26億円。ともに過去最高を更新する見込みだ。年間配当は1株当たり15円(15年2月期は13円)に増配する。09年2月期に24億円の最終赤字を出し無配に転落した苦境から、ようやく完全に立ち直った。リンガーハットは外食の復活組の1社だ。
復活の要因
復活をもたらしたのは100%国産野菜をウリにした「野菜たっぷりちゃんぽん」だ。国産野菜7種類を480グラム使っている。柚子こしょうドレッシングをかけて食べる「野菜たっぷりちゃんぽん」は、野菜がたくさん取れると女性を中心に人気が出た。カロリーを気にする女性客から「麺抜きにしてほしい」との要望を受けて、今年4月から「野菜たっぷり食べるスープ」をメニューに加えた。折からの健康志向の高まりで、野菜たっぷりのメニューが女性客に受け入れられ、復活をもたらした。
ゼンショー(すき家)
深夜のワンオペレーション、人手不足問題により閉店や営業時間短縮を余儀なくされていた「すき家」を運営するゼンショー。当時ブラック経営と批判された経営体制を改善し大幅赤字から回復している。
2014年、ワンオペ廃止で巨額損失
一連の「ブラック問題」の余波から、問題視されていた深夜の一人勤務体制「ワンオペ」を廃止した牛丼大手・すき家が、このほど2014年4~12月期の連結決算で、25億円にものぼる巨額の純損失を出したことが明らかとなり、注目を集めている。
2016年、大幅赤字から回復
2016年3月期では、ゼンショーが純利益40億2600万円と前年の大幅な赤字からV字回復を成し遂げた。すき家では「New Value」をコンセプトとした牛丼の商品設計を見直し、具材をボリュームアップさせるとともに、並盛の価格を税込み291円から350円に値上げ。さらに牛丼とサイドメニューとのセットを充実させ業績アップにつなげた。
復活の要因
すき家も昨年の人手不足ショックから、回復してきている。深夜のワンオペレーションなど、人手不足問題がネット上でやり玉にあがり、閉店を余儀なくされる店もあったほどだ。外国人の積極採用で人手不足は解消したようで、既存店の伸びが目立ち始めた。同社は牛丼やカレーのバリュエーションで勝負している。
良品計画(無印良品)
2001年から2003年にかけて業績が悪化した「無印良品」を運営する良品計画。
2001~2003年ごろに業績悪化
2001年から2003年にかけて業績が悪化しました。01年は、営業利益が前年同期比13.8%減となりました。02年は、売上高は増加したものの、営業利益は52.4%減と大幅な減益となってしまったのです。03年には、好調だった売上高が前年割れ(4.0%減)となっています。
2016年、国内・海外ともに順調
「無印良品」を運営する良品計画が好調です。11月の全社売上高(海外供給除く)は前年同月比12.4%増となっています。10月は9.8%増、9月は10.2%増、3~8月は9.0%増で、2016年2月期では全ての月で増加しています。
良品計画の16年3~8月期連結決算は、売上高は9.7%増の1,617億円、本業のもうけを示す営業利益は22.9%増の197億円と大幅な増収増益です。
日本国内の無印良品が好調ですが、海外の無印良品も好調です。海外では「MUJI」ブランドで展開しています。
復活の要因
無印良品は消費者と協働して商品を開発する戦略へと舵を切りました。このことが功を奏し、低迷していた業績がV字回復したのです。売上高は03年から16年まで一貫して増加しています。営業利益も増加傾向を示しています。
特に消費者のニーズにあった商品を提供すべく、消費者の声を商品開発に反映する「モノづくりコミュニティー」のプロジェクトが功を奏した。
ジャパネットたかた
2012年には2年連続で大幅減収したジャパネットたかた。これまで販売していなかった商品の販売にも手を広げ、マーケティング戦略にもテコ入れをし、翌年には早くも業績を回復した。
2012年、大幅減収で創業最大の危機
しかし、その後、ジャパネットたかたは危機を迎える。売り上げの6割を占めていたテレビの販売が激減。地上デジタル放送に伴うテレビの買い替え特需の反動で、テレビの売り上げがピタリと止まった。10年のピーク時に月間200億円以上の売り上げがあった薄型テレビが、10億円程度しか売れない月もあった。カメラ機能を搭載したスマホに食われて、デジタルカメラやカーナビも苦戦した。11年12月期の売上高は1531億円、さらに12年同期には1170億円まで落ち込んだ。2年連続の大幅減収となり、創業以来最大の危機を迎えた。
2013年から盛り返し2014年は最高益
不退転の決意で臨んだ13年12月期は売上高は1423億円。経常利益は153億円で過去最高益を更新した。さらに14年同期の売上高は前期比8%増の1538億円、経常利益は13%増の174億円と最高益を達成した模様だ。
復活の要因
守りではなく、攻めに出た。掃除機や調理家電、ウォーキングシューズなど、これまで扱ってこなかった商材を積極的に取り入れ、12年8月には東京・港区に東京オフィスを開設して東京に本格進出した。東京を拠点にケーブルテレビやインターネット通販のテコ入れを行い、新聞折り込み、携帯電話向けサイトなども活用した。
日産自動車
日本経済のバブル崩壊とともに販売台数が減り始めた日産自動車。1999年にフランスの自動車メーカー「ルノー」の傘下に入ると、当時ルノーの副社長であったカルロス・ゴーン氏がCEOに就任。カルロス・ゴーン氏は目標設定の明確化と徹底した現場主義などにより業績回復に導いた。
1999年頃、巨額の赤字で瀕死状態
1999年頃、同社はまさに瀕死の状態だった。かつての人気車種の売上も陰り、社員の士気もこれ以上底はないというほど落ち込み、2兆円という巨額の有利子負債を抱え、上場企業としては史上ワースト記録となる6,844億円というとてつもない額の赤字を計上していた。
2002年には
日産は2002年度に連結売上高営業利益率10.8%を達成し、自動車事業実質有利子負債0も実現した。「日産180」計画も、見事にその目標を達成したのである。
復活の要因
ゴーン氏は日産に入社早々、各セクションから若手のエース級社員200人を集め、部署を横断して日産の問題点を洗い出した。そして、わずか3ヵ月で作り上げたのが『日産リバイバルプラン』だ。その内容は、以下の3点だ。
・ 2000年度に、連結当期利益の黒字化を達成
・ 2002年度に、連結売上高営業利益率4.5%以上を達成
・ 2002年度末までに、自動車事業の連結実質有利子負債を7,000億円以下に削減
そしてこの大胆な 3つのコミットメントを、強力なトップダウンのもと、すべて1年前倒しで達成したのである。
スカイマーク
2015年に事実上の経営破たんをしたスカイマーク。原油価格の下落や不採算路線から撤退により経営破綻からわずか1年余りでV字回復を遂げた。
2015年、事実上の経営破たん
国内航空3位スカイマークが1月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請して事実上経営破綻した。破綻の理由について、身の丈にあわない欧州エアバス製大型機「A380」の導入や、エアバスに支払う巨額違約金問題ばかりがクローズアップされているが、結局のところ「円安倒産」だったという視点は見逃されている。
2016年、驚異の回復で黒字化
経営破綻からわずか1年余り。スカイマークは、民事再生の手続きを終結し、V字回復を成し遂げています。
6月29日に公表された2016年3月期の決算では、売上高が721億円、本業の儲けを示す営業利益は15億円の黒字化を果たしました。
破綻前の2015年3月期は、9ヶ月間ですが、売上高643億円に対して、営業利益は113億円の赤字に陥っていたことを踏まえれば、急速に業績が回復したことがわかります。
復活の要因
1.外部環境の好転
高止まりしていた原油価格は、アメリカでこれまで困難とされてきたシェール層からの石油や天然ガスの抽出が可能になった「シェール革命」により、大きく下落することになります。
(中略)
2.不採算路線からの撤退による効率の向上
加えて、不採算路線から撤退し、搭乗率の向上を図ったことも功を奏したといえるでしょう。
スカイマークは破綻前、最高で月間5,334便の運航を行っていましたが、破綻直後は最低3,458便まで絞り込みます。結果として搭乗率は向上し、最近の9か月間は80%を超えるという好調を維持しているのです。
まるか食品(ペヤング)
一連の異物混入事件で主力商品であった「ペヤング」の販売中止を余儀なくされた、まるか食品。しかし販売再開後、待ち望んでいた消費者の購入により国内シェア1位を獲得するなど商品の人気は根強かった。
2014年、異物混入事件で販売中止に
ツイッターでゴキブリ混入の写真が出回ったのは昨年12月2日の夜。その翌日にまるか食品は混入が起きた現物を回収した。さらに、混入から9日後の11日には全商品の販売中止と自主回収を決めた。
2015年の販売再開後、シェア1位を獲得
「ゴキブリ混入」で昨年12月から今年6月初めまで販売を中止していた即席めん『ペヤングソースやきそば』(まるか食品)が、6月時点で即席カップめん分野での国内シェア1位を獲得。それまで絶対王者だった日清食品の『カップヌードル』を抜いた。
復活の要因
爆売れの要因は「市場が熱望していたから」だけではない。復活劇の要因は同社の危機管理の成功にある。すぐさま自主回収を決定し、さらには、丸橋嘉一社長が小売店へお詫び行脚を行なった。販売中止の間、社長は自ら工場に来て仕分けを率先して行ない社員を鼓舞するほか、社員の解雇も減給も行なわないなどモチベーションの維持にも努めたのだ。
日本航空
2010年、経営破たんした日本航空。徹底的なコスト削減、大幅なリストラなどによる経営のスリム化を実施し、2012年には東証一部に再上場した。
2010年、経営破たん
2008年のリーマンショックを契機とした不況の影響による乗客の減少、燃料費の高騰、組織の肥大化などによって、2010年に会社更生法を申請し、経営破綻しました。
2012年に再上場
京セラおよび現在のKDDIの創業者である稲盛和夫氏を会長に迎え、徹底的なコスト削減、大幅なリストラなどによる経営のスリム化を実施することでV字回復を達成。
2012年には東証一部に再上場を果たしています。
復活の要因
まず各本部の調達部門を1カ所に集めて、調達本部として組織し直し、お付き合いのあった業者さんに頭を下げにいってもらった。JALは再生に向けて今が苦しいときなので、業者の皆さんもぜひわれわれを助けてくださいと言って回らせたのだ。業者の方々は、こころよく引き受けてくださった。そして本当に必要なものだけ購入するという当たり前のことを徹底させた。
日立製作所
リーマン・ショック後、過去最悪の7873億円の赤字を計上した日立製作所。大幅な人員削減とグループ再編により営業利益を回復した。
低迷期
たとえば、日立製作所はもともと官僚主義的な経営が上手くいっていなかったところに、リーマン・ショック後の世界的な不況が追い打ちをかけることで、過去最悪の7873億円もの赤字を計上するに至ります。日立が生き残っていくためには、7000人の人員削減に加えて、採算が悪化したグループ企業の再編を断行せざるをえませんでした。インフラ関連の事業を中心とした選択と集中を行い、2009年に19社あった上場子会社グループを、3年後には11社にまで絞り込んでいったのです。
復活
その結果、14年3月期連結決算で5000億円の営業利益を想定し、これまでの最高である5064億円(1991年3月期)の更新が視野に入るまでに業績のV字回復を果たした。今後は経営再建から成長へと新たな段階に移ることになるが、経営の立て直しに追われている間に大きく差をつけられたGEやシーメンスの追撃のポイントとなるのが、今回のCEOとCOOの新設なのだ。
復活の要因
日立は思い切ってリストラに挑んだ。これは、川村隆さんというリーダーが偉大でした。あれだけの巨大な硬直した巨艦を思い切り舵を切って動かした。
実は彼は一度、子会社に出ていました。言ってみれば、一度“上がった人”だった。それだけに、周囲の期待は薄かった。しかし、一度上がって飛ばされて戻って来た人のほうが、実は思い切ったことをやるものです。
いつの時代も企業が好調を維持し成功者であり続けることは難しいものです。しかし業績悪化や経営破たんに陥ったとしても、そこで働く人々の弛まない努力と、熟考の末に見い出した戦略で見事にV時回復も可能であるという実例が見られました。逆境にも諦めずに復活を遂げたその姿は、仕事をする上でもぜひ参考にしたいものですね。