ストローが使えなくなる!? プラスチック製品問題

2018年7月25日更新

最近、スターバックスなどプラスチック製ストローの廃止を決定する企業が相次いでいます。海外では国全体でストローなどプラスチック製品を禁止するところも。なぜストローを廃止するのか、これまでの各国・各企業の動きと併せてご紹介します。

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プラスチック製ストロー廃止までの概要

プラスチック製品が海洋汚染につながる理由

陸地や川で捨てられたプラスチックごみが海に流れ着く

どれだけのプラスチックごみが海に出ているのかは分からないと同誌はいうが、ジョージア大学のジェンナ・ジャムベック教授は、沿岸地域だけで年間480万トンから1270万トンと推定している。そのほとんどは、陸地や川で捨てられた後、風や水の力で海に流れ着いたものだという。

海の中でプラスチックは細かく溶解される

小さなプラスチック製品が海に捨てられると、海の中でプラスチックは細かく溶解し、海水に溶け出します。そして1ミリ以下の小さなゴミになって海水の中を浮遊します。この状態になったプラスチックをマイクロプラスチックと呼んでいます。マイクロプラスチックは、食物連鎖の中に入り込み、プランクトンが食べ、小魚が食べ、魚が食べ、海鳥が食べ、といった具合に様々な生物の体内に取り込まれます。

マイクロプラスチックについて詳しくは後述します。

プラスチック製品のなかでもストローが注目される訳

※下の動画にはカメが出血するシーンが含まれます。

動画の拡散によりストローが海洋汚染の象徴となった

コスタリカ沖でテキサスA&M大学の海洋生物学調査チームが鼻に何かを詰まらせたヒメウミガメを発見。鼻から取り除いてみると、詰まっていたものはプラスチック製のストローでした。3000万回以上再生されたこの痛々しい動画により、ストローは海で暮らす生物を脅かしているプラスチックごみの象徴になったのです。

ちなみに、このウミガメの出血はしばらくすると止まり、1時間ほど後に海に戻すと元気そうに泳いでいったということです。

スタバ、マック…企業が続々とストロー廃止へ

スターバックスがストロー全廃へ

2020年までに世界中の全店でプラ製ストロー廃止

世界各国のレストランやコーヒー店でプラスチック製ストローの廃止に向けた動きが広がるなか、米コーヒーチェーン大手スターバックスは7月9日、約2万8000店に上る世界中の全店で、2020年までに従来のストローの使用をやめる方針を発表した。

リサイクル可能なプラスチック製のふたを導入

新タイプのふたは、すでに米国とカナダの約8000店で使用されている。吸い口が一体化されており、その部分から直接飲む形状になっている。また、開発中だという新素材のストローは、紙製になる可能性が高いとみられる。

マクドナルドは2025年までにリサイクル可能な資源へ

ストローだけでなく全てのパッケージをリサイクル可能な資源に

米McDonald'sも6月15日に、英国とアイルランドの計1361店舗で9月よりプラスチック製ストローから紙製ストローに順次切り替えると発表した。
さらに、25年までには全世界の全店舗で、プラスチック製ストローの廃止に加え、ハンバーガーを包む包装紙や箱、袋――など、顧客に提供する全てのパッケージや製品をリサイクル可能な資源に切り替えることを目指すという。

日本マクドナルドのコメントは?

日本マクドナルドの広報担当者は、日本での運用については具体的なスケジュールはまだ決まってないとしつつ、「ヨーロッパでのテスト運用などの結果を見極めつつ、日本も取り組んでいきたい。マクドナルド全体としての目標は2025年なので、日本もそれまでに切り替えを検討する」と見通しを述べた。

アメリカン航空もプラ製ストローなどを廃止予定

7月から別素材のストローや木製スティックを提供

米アメリカン航空は10日、同社のラウンジと機内でプラスチック製使い捨てストローや、飲み物をかき混ぜるためのスティックの廃止を予定していると発表した。
今月から、空港内ラウンジではプラスチック製ストローの代わりに生物分解可能な素材でできたストローや、木製スティックを提供。機内では11月から、環境に優しい竹製ストローやスティックを提供する。ラウンジで使う食器も、環境に配慮した素材の商品に切り替えていくという。

米航空会社の廃止を受けJAL・ANAは?

JALの広報担当者は「現段階では何も決まっていないが、検討はしている」と回答。廃止する企業が増えていることは把握しているといい、「周りの様子を見つつ、必要があれば今後も検討を進めていく」とした。
全日本空輸(ANA)の広報担当者は「まだ何も決まっていない」と述べた。

世界最大手ホテルチェーンのマリオット・インターナショナルやハンバーガーチェーンのA&Wカナダなどもプラスチック製ストローの廃止を発表しています。

米、英、台など世界的に広がるストロー廃止の流れ

州や都市によって対応が異なるアメリカ

シアトルでプラスチック製ストロー等を使用禁止

シアトル公共事業局によると、シアトル市はアメリカの主要大都市としては初めて、食品サービス業での使い捨てのプラスチック製ストロー・食器類の使用禁止へと踏み出す。
シアトル市を本拠とするスターバックスを含め、市内5,000の飲食店では今後、再利用または堆肥化が可能な食器類、ストロー、カクテルピンの提供が義務付けられる。シアトル市はさらに、事業者に対し、ストロー提供を完全に廃止するか、または生分解性プラスチックよりも分解性に優れた紙製のストローに切り替えることを推奨している。

カリフォルニアでも規制を検討

ニューヨーク、サンフランシスコなど、アメリカ国内の他の都市でもプラスチック製ストローの禁止が検討されている。
カリフォルニア州議会では現在、州レベルでのストロー規制を検討している。ただし、そこで今検討されているのは全面禁止ではない。条例案では、各飲食店における基本サービスとしてのプラスチック製ストローの提供を止めさせる一方、顧客からリクエストがあればひとり1本、ストローの提供が可能としている。条例案はすでに州議会の下院を通過し、現在は上院での可決待ちとなっている。

フロリダ州のマイアミ・ビーチやカリフォルニア州のマリブなどの一部小都市では、すでにプラスチック製ストローの使用が禁止・制限されています。

イギリスは使い捨てプラスチック全面禁止へ

早ければ2019年からプラスチック製品の販売禁止

イギリスが使い捨てのプラスチック製品の販売を禁止する。禁止対象にはストローや綿棒なども含まれ、早ければ2019年から施行される。

レジ袋に課税等でプラスチック削減に成功

イギリスではこれまで、レジ袋に対する課税やマイクロビーズの禁止によってプラスチックの削減に成功している。食料品店などで使われるレジ袋に課税したことで、その使用率は90%も下がり、90億枚の使用を減らした。

マイクロビーズとは、歯磨き粉や洗顔料に含まれるスクラブ剤などで、工業生産された特に小さなマイクロプラスチックを指します。

女王が宮殿内のプラスチック製品使用を禁止

5月に、エリザベス女王はプラスチック製のストロー、マドラー、綿棒の、バッキンガム宮殿内での使用を禁ずると発表した。メイ首相も使い捨てプラスティック禁止の法制化を発表。

環境保護に熱心な台湾「でもタピオカミルクティーは?」

ビニール袋は有料、CO2削減の努力も

台湾は九州ほどの小さな島国でありながら、環境保護に対しては高い意識を持つよう努力してきました。スーパーで配っていたビニール袋を有料にしているのはもちろん、地球温暖化防止への取り組みとしてCO2削減の努力もしています。

2030年までに使い捨てプラスチック製品の全面禁止へ

一定規模以上の飲食業者を対象に、店内で飲食する客への使い捨てプラスチックストローの提供を来年から禁止する方針で、2030年までに使い捨てプラスチック製品の使用を全面的に禁じる考えだという。

全面禁止に至るまで、使い捨てストローの提供は大手レストランチェーンなどでまず2019年に禁止され、2020年に対象を全飲食店に拡大するということです。

台湾発祥のタピオカミルクティーはどうなる?

大きめのタピオカを吸い上げるには、専用の太いストローが必要ですが、そのストローの使用を規制する法案が台湾当局で検討されているというのです。
消費者からは、タピオカミルクティーが飲めなくなるとの不満が噴出しており、それに対して環境保護署の担当者が、「スプーンで食べればいい」との発言をしたことが、さらに消費者の反発を招いたという火に油状態です。

記事では、すでに代替品のストローも登場しており、プラスチック製ストローがなくなったからといってタピオカミルクティーが消えることはないと述べています。

EUではプラスチック使用の禁止や規制が進む

使い捨てプラスチック製品の使用禁止を提案

EUではすでに2015年からビニール袋の削減に取り組み成功を収めているが、新たに10品目の使い捨てプラスチック製品の使用禁止を目指している。規制の対象となるのは、すでに代替品のある、綿棒の軸、ナイフやフォーク、ストロー、飲み物のマドラー、風船に取り付ける棒などだ。飲料の使い捨て容器に関しては、キャップやふたが容器に取り付けられ外せないものだけを許可するとしている。

このルールが適用されると、EU加盟国は2025年までにプラスチック製飲料ボトルの90%を回収することが義務づけられるということです。

2018年6月のG7サミットでの「海洋プラスチック憲章」

2040年までにプラスチック包装リサイクルの100%回収を目指す

今年のG7サミットでは、環境問題に熱心なカナダが議長国だったこともあり、プラスチック包装のリサイクルについて、2040年までに100%回収を目指すなどの数値目標や具体的な行動を促す「海洋プラスチック憲章」が発表された。
G7サミットでの「海洋プラスチック憲章」には、カナダ、欧州諸国とEUが署名したが、日米2国だけは署名を拒否した。「生活や産業への影響を慎重(しんちょう)に検討する必要がある」というのが理由だ。同じ署名を拒否した米国でも、マイクロビーズの製造は禁止している。

日本のプラスチック製品への対策は…?

プラスチック資源の循環利用を目指す

政府は、使い捨てプラスチック製品の削減や再利用、リサイクルを徹底する総合的な戦略「プラスチック資源循環戦略」を2019年夏までに策定する方針だ。(1)使い捨て容器包装などの削減、(2)使用済みプラの徹底的な回収とリサイクル、(3)植物を原料にしたバイオプラスチックの開発と化石燃料由来のプラからの転換策――を3本柱としてプラ資源の循環利用を目指すというが、どの程度の具体的な中身が盛り込めるかは未知数だ。

「海岸漂着物処理推進法」は今夏から施行へ

2018年6月15日にマイクロプラスチックの使用抑制を企業に求める「海岸漂着物処理推進法改正案」が参院本会議で可決、成立しました。2018年夏に施行される見通しです。

プラスチック製ストローによる海洋汚染問題とは

プラスチック製ストローの問題点

再利用が困難で埋め立て処分されることが多い

プラスチックごみ全体に占めるストローの割合は比較的小さいが、再利用が困難なことからしばしば埋め立て処分となり、紙製品に比べて分解率がはるかに低いという問題がある。

環境保護団体などの訴えは

環境保護団体などは、プラスチック製ストローはリサイクルが不可能で、最終的に海へと流入して水質を汚染し、海洋生物 にも害を与えるとして、レストランその他の事業者に対して使用を中止するよう訴えてきた。

プラ製ストローの廃止は海洋プラスチック問題解決の第一歩

プラスチック製ストローを廃止するだけでは海洋汚染を完全に防止することは不十分だが、廃棄物処理と海洋保護の議論を始める第一歩になるという見解もあります。

プラスチック製ストローが鼻に詰まったカメの動画により、プラスチック製ストローが海洋生物に与える害について関心が高まりました。さらに、細かいプラスチックが魚介を通じて人体にも影響を及ぼすという研究結果もあり、ストローなどプラスチック製品全般への問題意識につながったということのようです。

マイクロプラスチックとナノプラスチック

5ミリ以下のプラスチックがマイクロプラスチック

海に流出したプラスチックごみは、漂流中、そして海岸に打ち上げられたあと、紫外線を浴びて劣化していきます。そうして波に洗われているうちに、5ミリ以下の小さなプラスチック=マイクロプラスチックと呼ばれるものになるのです。

目に見えない大きさに分解されるとナノプラスチック

マイクロプラスチックはナノプラスチックという目に見えないレベルの大きさに分解される。これらが空気、水、食べ物を通じて人体に入り込み、健康被害を与えることを欧州委員会は懸念。対策に乗り出そうとしている。

マイクロプラスチック、ナノプラスチックが人体に影響するかどうかは、まだ研究段階ではっきりとはわからないと伝える記事もありました。

サステナビリティ(持続可能性)とプラスチック製品

プラスチック製ストローの廃止には、海洋環境汚染を食い止めるためと伝える記事がある一方で、サステナビリティに特化したマーケティングが理由にあると伝えている記事もあります。プラスチック製品がサステナビリティとどう関係するのでしょうか?

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そもそもサステナビリティとはなにか

サスティナビリティとは、「持続可能性」、すなわち、私たちの地球環境や社会に対して配慮し、保ち続けることができるという意味を持つ言葉。

日本では企業のCSR(企業の社会的責任)という文脈でも使われるサステナビリティという用語ですが、国際的には人間、社会、地球環境の諸問題解決を含めた「持続可能な発展」を意味しているそうです。

イギリスではサステナビリティは“売り”になる

百貨店セルフリッジの鮮魚類売り場には「弊社は海洋プロジェクトの一環として絶滅危惧種は売りません」という大きな看板がかかっている。ウォルマートでもサステナビリティを図る赤・黄・緑の表示があり、「サステナブルシーフード」と書かれた大きなサインも目を引く。
イギリスのマーケットは完全にサステナビリティを売り物にする時代となっている。
EU諸国でも非常に厳しい漁獲証明書の提出が義務付けられており、英国も離脱したとはいえ少なくとも2019年まではその法制度の下に漁獲管理がされている。

漁獲証明がどのようにサステナビリティと関係するのか

漁獲証明とは、水産物に関して漁獲から出荷までを政府が確認したことを示す書類を指し、乱獲や密漁などによる水産資源の枯渇防止につながるとされています。
これらを知ることで消費者は生態系や環境にダメージを与えない商品を選ぶことができるというわけです。

日本ではサステナビリティが付加価値となっていない

日本ではまだ漁獲証明もトレーサビリティ証明も法制度化されていない。世界の先進国のトレンドに完全に乗り遅れた状態で、日本製の水産製品はサステナビリティという付加価値がないために、国際市場で売り負けしていくうえ、日本近海の資源を枯渇させているのが現状である。

7月15日、ナマコの輸出に関する漁獲証明の導入について国内初となる罰則付きの法整備を検討していると報道されています。なお、トレーサビリティ(追跡可能性)とは、流通経路の記録を保管することにより生産履歴の追跡・調査が可能な状態を指します。

プラスチック製ストロー廃止に伴う課題も

身体の障害によりストローが必要な人も

専門家は「障害のある人にとってストローは必要なもの」

カナダの医療・公共政策評論家、アンドレ・ピカードはグローブ・アンド・メール紙に寄稿した記事で、こう指摘している。「ダウン症や認知症、まれな神経筋疾患、脳卒中の後遺症など、さまざまな健康問題を抱えた人々が、飲み物をより楽に飲むためストロー、特に曲がるタイプのプラスチック製ストローに大きく頼っている。障害のある人にとって、ストローはどうでも良いものではない。歩行補助装置を使う人にスロープが必須なように、これはアクセシビリティー(利用可能性)の問題だ」。

体に障害を持つライター自身がストロー廃止運動を「障害者の生活が困難になるという視点が全く反映されていない」と批判したとする記事もありました。

真の解決には「ごみの拡散を防ぐしかない」

リサイクルだけではなく埋め立てや焼却を

プリマス大学のリチャード・トンプソン教授は、真の解決法は、まずプラスチックを海に出さないことだと述べる。途上国ではごみ回収システムが整備されていないところも多く、短期的に結果を出すには、ごみ定期回収に力をいれ、リサイクルだけでなく、埋め立て、焼却などでごみの拡散を防ぐしかないとしている。資源エコノミストのテッド・シーグラー氏も同様の考えで、まずプラスチック用樹脂の製造に課税し、それを元手に途上国のごみ回収システムの整備を進めるべきだと提案している(ナショナル・ジオグラフィック)。

ストロー廃止運動に関してネットではさまざまな反応が

次々に企業から発表されるプラスチック製ストローの廃止。ネットにはどのような声が集まっているのでしょうか?

プラスチック製ストロー廃止に賛成の声

プラスチック製ストローの廃止へのその他の意見

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