特集2017年8月9日更新
最近増えてる、SNS発の小説・漫画が人気
ネットから書籍化といえば、一昔前の『電車男』『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』といった作品を思い出す方も多いかもしれませんが、近年ではSNSからの書籍化が珍しいことではなくなってきています。以前はツイートをまとめただけのような書籍も多かったのですが、最近はツイートを原作とした漫画化、Twitterで連載されていた小説の書籍化、本格的な文学作品が生まれる等々、ネット発の書籍も進化しているようです。今、読むべきSNS発書籍化作品、なぜSNS発作品が人気なのかなどをまとめてみました。
目次
・ ニーチェ先生
SNS発の書籍が売れている
今なぜ人気なのか?
拡散力が大きい
SNSの普及もあり、話題の作品はたちまち拡散されるようにもなった。そしてその中から、読者が面白いと思った作品・作家が支持されるという、人気投票のような図式ができあがったというわけだ。
作者と読者の距離が近い
「ブログ、pixiv、Twitterはもちろん、noteやInstagramでもエッセイ漫画を投稿する人気ユーザーが現れています。テーマが作者の身の回りの出来事や体験なので、作者と読者の距離が近くて、共感度が高い作品だとあっという間にネット上で拡散されていく」とのこと。
「ネット上で人気を集めれば、デビュー作がいきなりベストセラーになることも珍しくありません。普段から漫画を描いていなくても、エッセイ漫画であれば絵日記のような感覚で描けるので、これからも描き手の数はどんどん増えて、そこから新たなヒット作も生まれていくと思います」
ネットの拡散効果は無視できないものだと出版社も早くから理解はしていたようですが、以前は人気ツイートをただ集めただけの書籍も少なくなく、そうした書籍は売り上げもふるわないことが多かったようです。現在では、書籍化するにあたって書き下ろしを増やしたり、SNSでの拡散効果を狙った施策を打ち出すなど、以前よりも明らかにSNS活用が進化しています。
出版社のウェブへの取り組み
ウェブで全文公開、キャッチコピーを募集
最近話題になった試みがこちら。『アントレース』もネームを全公開し作画担当を公募していましたが、こちらは何と、小説を全文公開してしまいました。期間限定とは言え大胆な企画です。内容がSNSを題材としたものなので、SNSユーザーの反応を期待してのことでしょう。実際、5000件を超えるキャッチコピーの応募があったようです。
新潮社は、まだ刊行前の“すごい小説”を全文公開し、読者に向けてキャッチコピーを募集する特設サイトを公開しました。
小説のタイトルは「ルビンの壺が割れた」。ある日突然、無名の著者(宿野かほる氏)から送られてきた小説で、同社の担当編集が「すごすぎて、いまだコピーをつけられずにいます」として、今回出版前にも関わらず全文公開とコピー募集に踏み切ったとのこと。
「書籍出版」もあるSNSやウェブサイト
拡散力が大きく、そのために炎上することも多いSNSですが、人気作品の評判が一気に広まるのもこちらのSNSの特徴です。Twitter上で直接発表された作品が直接書籍化されるだけではなく、他のSNSやサイトへのリンクが貼られたツイートが広がりを見せ、販促につながるパターンも多いです。
pixiv
小説も投稿されていますが、イラストや漫画のイメージが強いSNSです。言語依存しないイラストなら、海外のユーザーとも幅広くコミュニケーションできるのが嬉しいですね。出版社からの注目度も高いようです。
cakes
こちらはSNSではなくウェブサイト。多くのクリエイターが連載を持っており、最近のヒット作はこちらの連載から、というパターンも増え始めています。
小説家になろう
日本最大級、完全無料の小説投稿サイト。携帯電話からの投稿文字数の制限をなくした初めてのサイトで、アニメ化もした『魔法科高校の劣等生』などの名作が書籍化されています。
ツイートが漫画化
ニーチェ先生 ~コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた~
もとは1つのツイートがきっかけだった
「お客様は神様だろぅ!?」とお怒りになったお客さんに対して、淡々と「神は死んだ」と返した期待の大型新人が夜勤にやってきました。ゆとり世代ならぬさとり世代である彼の今後の活躍に期待したいところです。
— 松駒 (@matsu_koma) 2012年4月16日
この発言は、なんと1万リツイートを記録。そして、その呟きを元にしたマンガが出版されるという事態に。そう、それが『ニーチェ先生~コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた~』(松駒、ハシモト:著/KADOKAWA メディアファクトリー)である。ニーチェ先生と呼ばれる大学生・仁井智慧が、コンビニに押し寄せるクレーマーたちをバッサリと斬る姿は痛快そのもの。
人気俳優主演でドラマ化もされ、こちらも好評
松駒原作の漫画「ニーチェ先生~コンビニに、さとり世代の新人が舞い降りた~」を、若手注目俳優・間宮祥太朗と浦井健治のW主演でドラマ化したもの。
さとり世代の新人コンビニ店員“ニーチェ先生”こと仁井智慧(間宮)と就職浪人中の松駒(浦井)を中心に、深夜のコンビニで働く店員たちの日常をコミカルに描いてきた。
ラブホの上野さん
著者 | 博士、上野 |
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出版社 | KADOKAWA |
公式サイト |
上野 ラブホスタッフさん
/
Twitter
続編決定!ラブホの上野さん【ドラマ公式】 / Twitter |
もとは恋愛に関するツイートが人気のラブホスタッフアカウント
男性の服屋の袋を持った彼女様が彼氏様を引きずるようにご来店されたことが御座います。
— 上野 ラブホスタッフ (@meguro_staff) 2017年1月20日
お帰りの際は彼氏様のファッションは見違えていましたが、ここまでしてくれる彼女様は根気と行動力に溢れる方なのでしょう。
ええ、お部屋のゴミ箱には来店の際の服が捨てられておりました(下着を含む)
昨今の恋愛において非常に重要なLINE
— 上野 ラブホスタッフ (@meguro_staff) 2017年3月12日
今回はLINEの会話の問題点を添削させて頂きました
メッセージをクリックすると問題点が表示されますので是非、お楽しみ下さいませ
※本人(2人)の許可を取っておりますhttps://t.co/rlvQoElshd#恋愛赤ペン先生 pic.twitter.com/OkS07cKyKJ
もともとはラブホテルの職場裏話や恋愛にまつわるツイートが中心でしたが、反響が大きくなるにつれ、現在はウェブで恋愛指南コラムなども執筆しており、コミケにも出展し話題になりました。
2014年ごろTwitter上に突如出現し、ラブホテルや恋愛にまつわるツイートを行うアカウント「上野 ラブホスタッフ」(@meguro_staff)の内容を原案に描かれた人気マンガ『ラブホの上野さん』。物語は、ラブホテル「五反田キングダム」のスタッフとして働く上野さんが、恋や性の問題で悩む男女にアドバイスを与え、ラブホテルに来てもらおうと奮闘するコメディー作品だ。
ドラマ化も。シーズン2は今秋放送
2017年1月から地上波放送され放送され好評だった『ラブホの上野さん』の続編が、『ラブホの上野さん Season2』 として フジテレビが運営する動画配信サービス『FOD』で2017年秋より先行配信後、地上波にて放送されます。
『ラブホの上野さん』は五反田の繁華街にたたずむラブホテル「五反田キングダム」で働くスタッフ・主人公の上野さんが、様々な恋の悩みやトラブルを解決してゆくドラマ。
Web漫画を書籍化
鴻池剛と猫のぽんた ニャアアアン!
著者 | 鴻池 剛 |
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出版社 | KADOKAWA |
公式サイト | 鴻池 剛さん / Twitter |
Twitterで話題の猫マンガを書籍化
Twitterで大人気となった、鴻池剛氏の猫マンガ。猫マンガと言えば可愛らしい絵やエピソードが多い中、こちらは猫がふてぶてしいルックスで描かれ、どちらかと言うと可愛くない行動を描いていることが多いのですが、それが不思議と可愛くて癖になるんです。猫のぽんたグッズも発売される人気ぶり。
こちらは9月に発売予定のぽんたクッション。ぽんた本人が見たらどんな反応をするのか、見てみたいところですね。
アントレース
著者 | 春瀬 隼、かっぴー |
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出版社 | 集英社 |
公式サイト | かっぴー/アントレース原作さん / Twitter |
『左ききのエレン』作者原作のファッション漫画
「絵はうまくないのに引き込まれる」と大反響を読んだ人気ウェブ漫画『左ききのエレン』を連載中のかっぴー氏が、ウェブ上にネームを公表し、作画担当を公募したことで話題になった今作品が、満を持してジャンプスクエアクラウン誌上に登場。アンケート結果によっては連載化もあり得るそうで、楽しみですね。『左ききのエレン』は現在cakesで連載中。紙の書籍化はされておらず、Kindleでのみ単行本を読むことが出来ます。
『左ききのエレン』
『左ききのエレン』は、大手広告代理店でデザイナーとして働く朝倉光一と、光一が学生時代に出会った天才・エレンを中心に、才能とは何か?を問い続ける作品です。8巻の舞台は2009年の広告代理店。
cakesで連載中のウェブ漫画、『左ききのエレン』。実際に広告代理店での勤務経験のある作者が描くリアルな業界の裏側、人物の丁寧な心情描写、映画を思わせる構図などが評判となっています。
8月31日までTwitterでキャラクターの人気投票を開催しており、ハッシュタグ『#左ききのエレン』をつけて好きなキャラクターをツイートすると、1位になったキャラクターのスピンオフ作品が後日公開されるそうです。3人まで投票していいそうですが、たくさんの魅力的なキャラクターから3人を選ぶのはなかなか大変ですね。
#左ききのエレン 特別編です。
— かっぴー/アントレース原作 (@nora_ito) 2017年8月4日
これまで登場した全キャラクターの相関図と、
キャラクター人気投票を実施します!
1位のキャラクターで、スピンオフを執筆します。
投票、宜しくお願いします。https://t.co/UcN44hmPVi
やれたかも委員会
著者 | 吉田 貴司 |
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出版社 | 双葉社 |
公式サイト |
吉田貴司さん
/
Twitter
吉田貴司のオフィシャルなブログ |
Twitterで話題を呼んだ、男の甘酸っぱい妄想あるある漫画
男性なら甘酸っぱい過去を思い出し、女性ならツッコまずにいられない・・・Twitterで大ヒットし、新作が発表される度に物議を醸す漫画といえば「やれたかも委員会」。単行本化するにあたってクラウドファンディングで資金を調達し、特典として開催したイベントも大成功となった、大注目の漫画です。
あの時、もう一歩踏み出していたら、あの娘とやれたんじゃ……。
そんな甘酸っぱ~い思い出を『やれたかも委員会』が「やれた」のか「やれたとは言えない」のか判定するというこの作品は、新作が公開されるたびに「いや、やれただろう!」「ねーよ!」などのザ・不毛な議論がネット上でヒートアップし、作品外での盛り上がりも見せている。
クラウドファンディング出資者には『やれたかも』札が
この作品のファンであるInfoseekスタッフが、クラウドファンディングで出資したところ、なんと単行本と共に『やれたかも/やれたとはいえない』札がプレゼントされたそうです(出資コースによる)。イベントではリアルやれたかも委員会が開催され、大盛り上がりだったとか。札は今後、一般発売の予定もあるそうですよ?
Web連載を小説化
ニンジャスレイヤー
Twitter上で連載されていた人気小説を書籍化
Twitter上で連載開始された『ニンジャスレイヤー』は、瞬く間に多くのファンを獲得し、
今や連載更新時はTwitterトレンドワードに「忍殺語」が続々とエントリー。
書籍化にともない、その中毒者はさらに増加!
アニメ化も
フラッシュアニメ……かと思いきや、突然の大迫力かつ美麗なアクションシーン。やけに日本通なニンジャアニメが、いまツウの間で、話題もちきりとなっている。『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』は、サイバーパンクニンジャ小説をもとに、あの『キルラキル』で知られるスタジオ、TRIGGERがアニメ制作した。
ボクたちはみんな大人になれなかった
著者 | 燃え殻 |
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出版社 | 新潮社 |
公式サイト |
燃え殻さん
/
Twitter
ボクたちはみんな大人になれなかった|燃え殻 / cakes(ケイクス) |
Twitter発の本格的な文学作品
日々のツイートが文学的だと話題を呼び、いつしか『140文字の文学者』と呼ばれるようになった燃え殻氏。フォロワー数は98000を超え、10万に届く勢いです。2016年、cakesで連載されていた作品に加筆修正を加えたものが、新潮社より書籍として発売。発売初日から反響は大きく、多くの書店で品切れとなりました。
ツイッターで約9万人のフォロワーがいる燃え殻さんによる初の小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)が6月30日に発売されました。
燃え殻さんは、テレビの美術制作という“一般人”ながら、「日報代わりに始めた」ツイッターで多くの人の心をつかみじわじわと人気に。昨年、ウェブサイト『cakes』で連載された小説が話題を呼び、書籍化が決定。糸井重里さんら著名人からも支持を受けています。
エッセイ
深爪式 声に出して読めない53の話
著者 | 深爪 |
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出版社 | KADOKAWA |
公式サイト | 深爪@重版御礼「深爪式」絶賛発売中さん / Twitter |
一般主婦である辛口ツイッタラー深爪氏、初の紙書籍
絶妙な表現を駆使して“エロエッセンス”を振りかけるシモネタワザは、もはや職人の域(?)。そんな深爪氏、初の紙書籍『深爪式』(KADOKAWA)が先日発売されました。蛍光ピンクに金ピカ箔押しの表紙、極めつけにGLAYのギタリスト・HISASHIの帯コメントなど、何やら豪華絢爛な同書には、本人のセキララなエロ人生や、深爪流SNSとのつきあい方など、声に出して読めない53の話を掲載。共感反感なんでもアリなコラムが満載です。
たとえば、2016年を語るうえでは外せないキーワード“不倫”についても、「不倫の元凶は『ポジティブ』である」という、独自の切り口から攻め込んでいます。
SNSを利用している方なら、読んだことはなくても、何となく見たことがあるという作品が多かったのではないでしょうか。漫画やコミックエッセイの数がまだまだ多いですが、SNS発の文学作品も生まれている今、直木賞や芥川賞にSNS出身作家が名を連ねる未来もそう遠くはないかもしれません。