特集2017年2月6日更新

台湾南部地震から1年…日台の相互支援

ちょうど去年の今日2月6日、台湾高雄市を震央としたマグニチュード6.6の大きな地震が発生しました。震災時の現地の様子や、その後起こった熊本地震被災地への台湾からの支援について、台湾人の方への取材・インタビューを交えながら振り返ります。また、台湾現地での日本人に対する友好的な反応についても、台湾に在住経験のある方に伺いました。

2016年台湾南部地震から1年

2016年台湾南部地震

地震の概要と台湾現地被災者の体験

2016年2月6日、台湾時間の午前3時57分に発生。震源地は高雄市美濃区。台南市新化で最大震度7を記録しました。当時、台南市の中心部にある実家に帰省していた台湾人女性によると、大きな揺れとともに実家の建物の壁に大きな亀裂(ヒビ)が入るなどの被害があったといいます。
台南市内では9棟が全壊、5棟が傾き、500人以上が負傷し、16階建てのビルが倒壊した事故では115人が死亡。また、震源に近い新化では京城銀行のビルが傾くなどしました。
その他、台南市の北側に位置する嘉義市でも震度5を記録し、同市に実家のある台湾人男性によると、棚から物が倒れて破損するなどの被害があったとのことです。

台湾南部地震被災地への日本からの支援

日本政府からの支援

この大地震を受けて、日本政府は調査チームを高雄市に派遣。そして100万ドル規模の支援を表明しました。また民間でも募金活動が始まるなど多くの支援活動が行われました。実際に台湾では多くの感謝の声があがり、今回インタビューした台湾人の方もそれを肌で感じていたようです。

[台湾人の方(女性)へのインタビュー]

― 2016年台湾南部地震の時、日本からの支援(義援金、応援メッセージ、ネットのコメントなど)を感じることはありましたか?

かなり支援があったように思います。Yahoo!基金などで多くの支援募金が集まったことは私も認識しています。「大紀元」など台湾の各メディアでも報道されていたのをよく目にしましたね。

応援メッセージや募金活動

台湾南部地震後、Yahoo!基金にて災害の救援活動、被災地、被災者の支援を目的に支援募金の受付が開始されました。
・寄付総額(概算) 126,535,860円
・寄付人数 125,673人

日本全国各地で台湾南部地震被災地への応援メッセージが寄せられ、募金活動が行われました。仙台市市長からの手紙、宮城県南三陸町からの救援物資、日本でもネットで話題になりましたが、高須クリニックの高須院長が1,000万円を寄付したことなど、各地での活動が現地のメディアでも報道されていきました。

台湾の東森新聞のFaceboookでは義援金を集める様子が報道されました。このように日本各地での活動が台湾全土でも報道されていたようです。

2016年熊本地震

熊本地震被災地への台湾からの支援

台湾南部地震の後の2016年4月14日、今度は日本の熊本県と大分県を中心に九州地方を大きな地震が襲いました。それを受けて、今度は台湾から日本への大きな支援の輪が広がりました。そもそもが1999年の台湾大地震や2011年の東日本大震災などお互いに支援する活動が繰り返されており、現在に至るまでそれが続いている状態にあります。熊本地震の際の台湾現地の様子についても伺ってみました。

[台湾人の方(女性)へのインタビュー]

― 熊本地震が発生した当時の台湾の雰囲気(義援金、応援メッセージ、周りの台湾人の方たちの反応やテレビなどマスコミの反応)はどのようなものだったのでしょうか?

大統領をはじめ、みんなFacebookなどのSNSで、数えきれないほどの応援メッセージを書き込んでいました。マスコミは一日中、何度も熊本地震のことを報道していて、随時、情報は更新されていました。政府や民間が迅速に募金活動進めて、周りの台湾人たちは救助活動や被災状況にいつも関心を示していました。

台湾からの多くの義援金

最初の地震が起こった際、馬英九政権は1,000万円の支援を申し出ました。その後、「本震」と言われる大地震が再び起こると、台湾内からの「少なすぎる」との声を受けて、馬英九政権は支援額を6,400万円に増額。
もちろん蔡英文次期総統は、馬英九よりも早く哀悼の意を述べ、民進党の党費から1,000万円の支援を決定しました。
さらに、台湾の中国信託金融ホールディングが3,300万円の寄付を表明し、屏東(へいとう)県も救援隊を結成していつでも救援の要請に応じられる準備をしているそうです。

高雄市長の陳菊市長はFacebookに、熊本県のご当地キャラクターである、くまもんとの2ショットの写真を掲載し、市民からの義援金の受付を開始するとともに、自身の給与の1ヵ月分を義援金にあてることを表明しました。同様に、台南市の頼清徳市長、台中市の林佳龍市長、桃園市の鄭文燦市長も、いずれも1カ月分の給与を寄付することを表明しました。

見舞いのメッセージ

台南氏の賴清德市長や、台北市の柯文哲もSNSでそれぞれが日本語で見舞いのメッセージを送っています。

日台の相互支援の歴史

地震が多いことで同じ状況にある日台。これほどまでに互いに熱心に支援し合うのは長い相互支援の歴史があるからです。近代では1995年の阪神大震災からお互いを支援する活動が繰り返されており、八仙水上楽園の爆発事故など地震以外の災害も含め、その相互支援が続いている状態にあります。

近年の相互支援の例は、例えば1995年の阪神淡路大震災、1999年の台湾大地震、2011年の東日本大震災、2015年の台湾新北市八仙楽園での大爆発、2016年2月の台湾高雄での台湾南部地震。

1999年台湾大地震(921大地震)

1999年9月21日に台湾中部を襲った「台湾大地震」で、日本が各国のなかで最大規模の緊急援助隊を最初に派遣してくれ、さらに、それに続く民間ボランティアと学生ボランティアがぞくぞくと被災現場に到着したことでした。 テレビを通じて見た日本の救援隊に対し、台湾の人びとが最も感動したのは、真っ先に駆けつけた日本救援隊がハイテク機器を駆使して瓦礫の下から生存者を探し出し、昼夜を問わず救助活動にいそしむ一方、運悪く助からなかった遺体の前では整列して頭を垂れて黙祷するという一幕だったのです。「死者への悼み」の姿が台湾人の心を打ったのです。

※「1999年台湾大地震(921大地震)」… 1999年9月21日、台湾中部の南投県集集付近を震源としたマグニチュード7.7の大地震が発生。約2,000名が亡くなり、1万棟近い建物が倒壊する被害があった。

2011年東日本大震災

東日本大震災のときに台湾が200億円以上という巨額の支援を申し出たことで注目されました。
金額の多さだけではない。台湾からは震災後、直ちに2つの救援隊が来てくれた。1つは李登輝元総統が派遣したNGOのレスキュー隊「捜救隊」で、震災2日後の13日、医師2人を含む35人が日本に到着し、岩手県大船渡市で捜索活動を開始している。
翌14日には台湾政府の派遣した28人からなる救援隊が到着し、宮城県名取市や岩沼市で救援活動を行った。支援物資も560トンもの膨大な量に上った。

2015年八仙楽園事故

2015年6月に起きた八仙楽園事故(台湾新北市のウォーターパークで起きた粉塵爆発事故。15人が死亡)の際にも、日本側から人口皮膚の提供を迅速に行うなど、すばやく必要に応じた支援ができます。

※「八仙水上楽園爆発事故」… 2015年6月27日、台湾新北市の遊園地「八仙水上楽園」で発生した粉塵爆発事故。音楽イベントでステージ上から観客に向かってカラースプレーを吹き付ける演出がされていたが、そのスプレーのパウダーが引火し大爆発。日本人2人を含む525名が負傷、15人が死亡する大事故となった。

日台の友好関係

最後に元台湾在住者の方が現地で感じた、台湾人の方々が友好的で親日であることが伝わるエピソードについても触れてみます。

元台湾在住の方の経験談

妊婦と老人と子供に優しい台湾

台湾の人々は妊婦に対して超優しい。うちの妻が電車に乗ろうものなら、すぐに妊婦だと気付いて「ここ座んなよ」「いや、こっち座んなさい」と乗客たちの席譲り合戦がはじまる。それだけではない、すでに座っている人に向かって「妊婦がいるんだから、あんた立ちなさい!」と席を空けさせることは日常茶飯事。中には、わざわざ隣の車両からやってきて「こっちに席が空いてるわよ」と強引に腕を引っ張って座らせる人まで。台湾人は妊婦と子供と老人に対して「超」がつくほど優しい。

日本人を見ると話しかけてくる若者

旅行で訪れたときも、住んでいるときも、私が日本人だとわかるらしく、日本語で話しかけてきて道を案内しようとしてくれた学生が何人もいた。また、タクシーに乗ると日本人とわかるやいなや、テレサテンを知っているか、この演歌歌手をしっているか、と話しかけ、ラジオで流れてる曲を説明したり、わざわざ日本のCDをかけてくれる運転手は多かった。

街中の店でも

ローカルなパン屋さんや、八百屋さんでも、日本人と知ると笑顔になる。周りにいる別の客に、この人たち日本人だって、日本人が来てくれたよ、と話しているのを聞いたことが何度かあった。

台湾の「ひまわり学生運動」と日本

個人的に、台湾の国会を占拠して中国との不利な貿易協定を阻止しようとした学生を応援するためメッセージを届けた。すると多くの台湾人に感謝され、200人近い人たちに握手を求められたり、謝謝と言いながら立ち去ったり、話しかけられたり、果物をくれた人もいた。東日本大震災のときの御礼として、応援メッセージを出した甲斐があった。


最後に冒頭でコメントをいただいた台湾人の女性の方に、日台の相互支援と友好関係についてメッセージをいただきました。

― 日本と台湾の友好についてメッセージをお願いいたします。

ご存知のように台湾には日本に親しみを感じている人が多いです。311東日本大震災から、日本との友好はさらに深まってきたかと思います。
歴史の面でも、政治の面でも、さらに自然環境までも、台湾と日本はまるで兄弟みたいに親密な関係にあるので、どちらかが窮地にある時は互いに助け合わなければならないと思います。ちょっと大げさかもしれませんが、これからも助け合って互いに安定すれば、さらに他のアジア圏にも良い影響が与えられると信じています。これからも引き続きよろしくお願いします。