日本代表の戦いぶりを、世界はどうみたか

2018年7月3日更新

8年ぶりの決勝トーナメント出場を果たした日本代表。世界ランキング3位のベルギー代表相手に、ボールを支配されながらも後半途中まで2点差をつけ優位に試合を進めましたが、終盤に3点を奪われての逆転負け。史上初のベスト8入りは果たせませんでした。しかしその勇敢な戦いぶりに世界中から称賛の声が聞こえてきます。今回の特集ではこの歴史的な一戦に対する、海外メディアや相手チームなどの反応を紹介します。

ベルギーに一時2点差つけるも痛恨の逆転負け

日本代表史上初のベスト8入りはならず

日本代表史上初のベスト8入りをかけて挑んだ決勝トーナメント1回戦は、世界ランキング3位のベルギーに一時2点差のリードをつけながら、終盤に立て続けに失点。最後はアディショナルタイム4分、ラストワンプレーで日本のコーナーキックからベルギーのカウンターを受け失点、逆転負けを喫しました。決勝トーナメントで2点差を90分でひっくり返されたのは、なんと52年ぶりのことだったとか。

「AP通信」によれば、W杯の決勝トーナメントで2点差がひっくり返されたのは、1970年大会で西ドイツ(当時)が延長戦の末にイングランドを破った試合(準々決勝/3-2)以来、48年ぶりのことだったという。また、90分間での決着では、1966年大会の準々決勝でポルトガルが北朝鮮を破って以来(5-3)、52年ぶりのことだったと伝えている。

日本代表の戦いぶりを、海外メディアはどう報じた?

試合前は「ベルギーの勝利は95%」「日本は最弱」

世界ランキング3位と61位の戦いは、試合前はベルギーの楽勝ムード一色でした。いくつか紹介します。

英紙「ベルギーが余裕をもって通過」

「ワールドカップ16強ガイド:準々決勝に進むのはどこだ。そして、マッチアップのキープレーヤーは?」と特集したのは、英紙「デイリー・メール」だった。
「茶番のような形で決勝トーナメント進出を決めた。フェアプレーで上回ることを知っていた彼らはポーランドに勝たせることを決めた」
さらに記事では、勝敗についてもこう断言。「裁定:ベルギーが余裕をもって通過」とベルギーの快勝を予想している。

米紙「日本は16強で最弱のチーム」

米国のスポーティングニュースは「ワールドカップの16強優劣、予測、選択」の見出しで決勝トーナメント1回戦に関する記事を発信。その中で日本対ベルギーの対戦を「可能性がないということはないが、シミュレーションではベルギーが95%近くで有利となっている」と伝えた。
日本については、「試合早々の退場とペナルティーキックでコロンビア戦で番狂わせを起こし、セネガルからは引き分けを奪ってグループリーグを通過した。質の高い選手数名を揃え、勤勉に戦うチームだが、今大会では、16強で最弱のチームのようだ。香川真司、本田圭佑、岡崎慎司は、魔法のような瞬間を作り出すことができるが、日本はベルギーに圧倒されそうだ」と厳しい見解を記した。

他にも試合前の分析を紹介している記事はあったのですが、いずれも「日本が最弱チーム」という点では一致していました。しかし、ベルギー戦後、この評価が一変します。

ベルギー戦後、世界が“手のひら返し”で称賛!

英紙「衝撃的な試合の衝撃的な結末」

英紙「インディペンデント」は「衝撃的な試合の衝撃的な結末」と綴り、「イヌイは世界の舞台で強烈なインパクトを残し、ピッチで最も危険な存在となった」と2点目を決めた乾に賛辞を送りつつ、「日本はタレントの潤いを見せつけた」とチームの健闘を称えた。

英TV局「マジカルな試合」

英BBC局は「マジカルな試合」と表現。同局はポーランド戦終盤の日本のボール回しを酷評していたが、イングランド代表以上の“プレミアリーグオールスター”という顔ぶれの優勝候補を追い込んだ日本の奮闘を「なんという試合。アメージングな逆転。アメージングな決着。しかし日本のハートブレイク」と表現した。

スペイン紙「秩序と忍耐、知恵で対抗」

スペイン紙「マルカ」は「ベルギーの高さに直面し、日本は秩序と忍耐、知恵で対抗した」とFWロメル・ルカクら大会屈指の攻撃陣に食らいついた守備陣を称賛。また原口と乾のゴールについては「7分の間に日本は考え抜かれたゴールでベルギーを打ちのめした」と多彩なアタックにも拍手を送っている。

欧州衛星放送「腹の据わったパフォーマンス」

欧州衛星放送「スカイスポーツ」は「日本の腹の据わったパフォーマンスにもかかわらず、ベルギーが3度目の準々決勝進出を決めた。勇敢な試みにより続いた日本のワールドカップ8強到達の旅は徒労に帰した」と健闘を称えている。

豪ニュースサイト「究極的な恍惚」

オーストラリアの総合ニュースサイト「News.com.au」は圧倒的に守勢に回った前半を0でしのいだ後、後半の開始直後に奪った2得点を称えている。
「日本がハーフタイムの直後に2点を決めた瞬間は、最も辛い苦しみの後にくる究極的な恍惚だった」

英紙「圧倒的に輝かしかった」

しかし、英紙「ガーディアン」は、最後まで真っ向から優勝候補に挑んだ日本の姿勢を高く評価している。
「なんて後半戦だったんだ。圧倒的に輝かしかった。最高のスピリットで立ち向かった。そして2-0となっても、日本は時間稼ぎに出なかった。時間を一切無駄にはしようとせず、茶番を駆使することもなかった。それもあり、代償を払うことにもつながってしまっただろう。だが、その挑戦は最高に称えられるべきものだった」

独ポータルサイト「サムライは勇敢に戦った」

オンラインポータルサイト『ONE Football』では、「ベルギーがセンセーショナルな決勝弾でベスト8へ」と見出しを掲げつつ、日本の戦いを称賛。「先制点の後もサムライは勇敢に戦い、それが乾の得点につながった」と記している。

世界から注目と称賛を浴びた選手たち

ここからは出場選手の評価を紹介します。中でも特に2点目となるスーパーゴールを撃った乾貴士への注目が集まっているようです。

世界中から賛辞を集めた乾のスーパーゴール

“赤い悪魔”を絶望の淵に追い詰めるスーパーシュートだった。後半7分、ペナルティーエリア付近でボールをキープしたMF香川真司からパスを受けた乾が右足を一閃。ベルギーの守護神ティボー・クルトワの必死のセーブも及ばず、強烈な無回転ミドル弾がゴール右隅に突き刺さった。

このシュートに対して、世界中から賛辞が集まっているようです。英国のTV局「BBC」は、敗れたにもかかわらず乾を「マン・オブ・ザ・マッチ」に選出しています。

英TV局「日本にとって輝ける存在」

日本の左サイドから脅威となった乾だが、衝撃的な逆転負けを喫した後は人目をはばからずに号泣した。惜しくも金星を逃したが、「BBC」ではその活躍に最大級の評価を与え、この試合の「マン・オブ・ザ・マッチ」に選出。「傷心の終演となってしまったが、タカシ・イヌイは日本にとって輝ける存在だった。ゴールと左サイドでの躍動で」と寸評では絶賛されている。

イタリア紙「日本で最もクオリティーが高かった」

『Foxsports.it』は乾について「日本で最もクオリティーが高かった選手。(ティボー)クルトワを打ち破る、正確無比で非常に美しいゴールを右足で叩き込んだ。素晴らしいプレーを披露し、左サイドの長友(佑都)とのコンビ、起点として見事に機能した。(新天地の)ベティスは早く乾のプレーを見ることを望んでいるだろう」と評価した。
また『ガゼッタ・デッロ・スポルト』も乾に対して「日本代表の全ての起点はほとんど彼の足から出発した。最初のゴールで起点となり、追加点をマーク。インスピレーションを与えるプレーだった」と、高い評価を与えている。

米スポーツ専門局「最も控えめ、かつ傑出した個人」

米スポーツ専門局「ESPN」は試合の経過を追う記事の中で、「日本のイヌイがまた輝いた」と大会2点目を挙げた背番号14を称賛している。
「このワールドカップでは多くの素晴らしい個人の活躍が見うけられる。ハリー・ケイン、フィリペ・コウチーニョ、アレクサンドル・ゴロビン、クリスティアン・エリクセン、ルカ・モドリッチ、他にも多くが注目を集めた。しかし、最も控えめ、かつ傑出した個人はタカシ・イヌイかもしれない。ロストフで、そして大会を通して日本のキーマンだった」

FIFA「ただただ素晴らしいゴール」

下馬評を覆し、ベルギーを追い詰める奮闘を見せた日本。そして乾の鮮やかな一撃をFIFAも公式サイトのマッチレポートで拍手を送っている。
「日本は準々決勝進出で歴史が作れるのがわかっていたが、フェライニの同点ゴールでそれはかっさわれてしまった。最後の瞬間をものにしようという思いはありながらも、大きな代償を伴ってしまった」
「イヌイのゴールは勇ましい敗北を抜きにしても、ただただ素晴らしいものだった」

またFIFAの公式ツイッターでは「気絶させるほどの一撃」、「FOXスポーツ」ブラジル版の公式ツイッターでは「2メートルのクルトワですら不十分」と彼のゴールを絶賛しています。

移籍元チームと移籍先チームが乾をめぐりやりとり

彼のゴールに反応したのが、今季まで乾が所属していたエイバル。移籍先のベティスに「タカを大事にして」とツイッターで呼びかけています。

鮮烈な印象を残した小柄なアタッカーを誇ったのは、今季まで3シーズンにわたってレギュラーとして活躍したエイバルだ。
「敗北してしまったとはいえ、タカシ・イヌイを誇りに思っているし、彼の新天地での幸せを祈っているよ! ベティスの人々、タカのことを大切にしてあげてくれ。君たちは素晴らしいサッカー選手を獲得したのだから」

するとこれにベティスも反応。

「エイバルは素晴らしい“腕利き”を送ってくれた。罪悪感を感じてしまうのは、彼が素晴らしいサッカー選手かつ人物で、その価値はあなた方によるところもある。リーガの他クラブにとっての模範だよ! 追伸:この日本人選手について、今後も手助けください」

2点目ゴールを演出した香川真司

乾のゴールの起点となったのが香川。彼はパスやキープで攻撃のアクセントを作り出しただけでなく、チームトップの走行距離で献身性もアピールしました。そんな彼を、イタリアメディアがあのスーパースターに例えて賛辞を送っています。

伊メディア採点 「大空翼のよう」

試合の採点を行ったイタリアのサッカー専門メディア「カルチョメルカート・コム」は、MF香川真司を「大空翼のようだ」と絶賛した。
日本チームは採点に大きなばらつきがあったが、最高点の「7点」を得たのが香川だった。そして、そのプレーはイタリアでも大人気である日本のサッカー漫画「キャプテン翼」の主人公である大空翼にたとえられている。
「彼は試合のオープニングシュートを放ち、ボールを配りながら全ての攻撃を司る存在として君臨した。そして、乾には上手くボールを残した。まるで、彼がデザインした大空翼のコレオグラフィーを見ているようだった。ピッチ上のどこにでもいた」

守備に奮闘、吉田麻也も高評価

ルカクを始めとするベルギーの屈強な攻撃陣に立ちはだかった日本のディフェンスリーダー・吉田に対しても、ヨーロッパの衛星放送・スカイスポーツは(ベルギーの選手ではなく)マン・オブ・ザ・マッチに推し賛辞を送っています。

「吉田はロストフ・アリーナで緊迫の90分を通じて、ベルギーのエース、ルカクを抑え、日本が根気強く抵抗を見せた守備の典型となった。サウサンプトンのディフェンダーは、プレミアリーグでの戦いでは、いつも大柄なストライカー相手に苦労していた。だが、この試合でルカクの好調が持続しなかった要因は、吉田が彼にスペースを与えなかったためだ。29歳(の吉田)は途方もないパフォーマンスを見せ、日本ゴールへ集中砲火を浴びせたベルギーの数えきれないシュートを体を投げだして防いでいた。大会前に優勝候補に挙げられたチームが勝利への道筋を見出した時、彼の奮闘は無駄になってしまった」と評した。

対戦相手の選手&関係者は…

続いては対戦相手の監督・選手、また各国の解説者による日本評を紹介していきます。

ロベルト・マルティネス・ベルギー監督

「乾・香川はとてもハイレベルだった」

「今日はシステムについて話さない。日本の準備は素晴らしかったし、侵入することができなかった。2点を奪われて、とても難しいゲームだった。今日は選手たちの諦めない精神にフォーカスしたい。今日は戦術的なことではなく、勝利への意志を褒めたい」
「ベスト16を日本が越えるために必要だと思うことは?」という質問に対し、「僕はアドバイザーではないけれど」と前置きしたうえで言葉を続けた。
「日本は組織的に素晴らしい。9試合前に戦ったけど、新しいものがあった。イヌイ、カガワのパフォーマンスはとてもハイレベルだった。どんなチームだって負けることはあるんだ」

ベルギー代表の主将エデン・アザール

「負けてもおかしくなかった」

「前半の20分くらいまでと後半の立ち上がりに間違った過ごし方をした。ただ、我々が見せたリアクションは素晴らしかったと思う。負けてもおかしくなかったと思うし、全員が喜んでいる」

ベルギー代表DFヴァンサン・コンパニ

「日本は衝撃的に良かった」

「僕が言わずにいられないのは、今日の日本は衝撃的に良かったということだ。彼らはとにかくハードワークを貫き、戦術的熟練者だった」

ベルギー代表MFケビン・デ・ブライネ

「針の穴から這い上がれた」

一方、決勝点の高速カウンターの起点となったMFケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)は、「なんとか針の穴から這い上がることができた。でもみんな反骨心を示すことができた」と、0-2という絶望の淵から生還できたことに安堵の声を上げていたという。

ゲリー・リネカー(元イングランド・W杯得点王)

「日本と当たらなくて良かった」

「(ベルギーと日本の試合は)面白かった。VARは試合中ほとんど触れられなかったね。フットボールはこうあるべきだ。ダイブや演技が無く、両チームが勝利を目指していた。とても素晴らしい試合だった!」
すると、リネカー氏は記者のツイートを引用して、同じく同試合を称賛するツイートを残した。
「完全に(記者のツイートに)同意する。フットボールはこうあるべき。スポーツマンシップというものだ」
J1名古屋でもプレーした90年イタリア大会のW杯得点王は「イングランドは日本と当たらなくて良かった」とツイート。G組のイングランドは決勝トーナメント1位通過すれば日本と激突だったが、結果的にベルギーに首位を譲り渡したことで対戦はなくなった。予想を覆す強さを見て、別組となったことを改めて安堵したようだ。