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アングル:民間機に重大な影響及ぼすGPS妨害、世界で急増中

ロイター / 2024年5月1日 15時9分

 軍隊が敵の航空機やドローンに偽のGPS信号を送り、正常に機能させないようにすることを「スプーフィング」と呼ぶ。単なる妨害よりも破壊的で、危険とみなされるケースが多い。写真はロシア国防省が4月20日に公開した、軍用ドローンのデモ飛行の様子(2024年 ロイター)

Anne Kauranen Joanna Plucinska James Pearson

[ヘルシンキ/ロンドン 30日 ロイター] - エストニアのツアフクナ外相は29日、同国領空内でロシアが全地球測位システム(GPS)を妨害していると非難した。これに先立ちフィンランド航空は、電波障害のためエストニア東部タルトゥへの航空便運航を1カ月停止すると発表している。

特に昨年以降、世界中でGPSの動作が妨げられているとの報告が増加。航空機が通常の航路を外れて事故が起きる懸念が高まりつつある。

<GPS妨害とスプーフィング>

GPSは、船舶や飛行機から自動車に至るまで、地球上のあらゆるものの測位や運行などに使われる、人工衛星網と受信装置のネットワークだ。特に航空分野ではより重要な航法手段の一つで、飛行機の着陸誘導無線を送信する高価な地上装置の代わりになっている。

ただ市販されている道具を使用すれば、GPS信号を遮断したり歪めたりすることは比較的簡単にできる。軍隊も、そういった技術に投資してきた。

「GPS妨害」は周波数発信装置を使って無線通信を遮断もしくは妨害する手法で、通常は人工衛星からの信号よりも強力な信号を地上から送ることで可能になる。

軍隊が敵の航空機やドローンに偽のGPS信号を送り、正常に機能させないようにすることを「スプーフィング」と呼ぶ。単なる妨害よりも破壊的で、危険とみなされるケースが多い。

だが民間航空会社にとって問題なのは、旅客機のGPS受信装置がその偽信号を拾うと、間違った時刻や座標が警告もなく表示されるため、パイロットや航空管制が混乱する恐れがあることだ。

<発生地点>

昨年12月にはフライト運航助言会社OPSGROUPが、イラクやイラン、イスラエルと黒海周辺でスプーフィングの影響を受ける民間機の数が急増していると警鐘を鳴らした。

スプーフィングは自爆ドローンを軌道から外すために使われる技術であり、戦争地域の近くにはこうした影響が及びやすい。

バルト海諸国は、特に2022年にロシアがウクライナに侵攻を開始して以来、この問題を報告し続けている。

フィンランドの乗務員安全・保安委員会トップのラウリ・ソイニ氏は、過去半年において、バルト海でGPS妨害が激化したと明らかにした。

ソイニ氏によると、妨害は現在ポーランドからバルト海諸国、スウェーデン、フィンランド沿岸地域にまで広がっており、低い空域や船舶の航行にも影響を与えている。

このバルト諸国周辺で起きたGPS妨害の「主犯」はロシアだというのが各国の政治家や当局者の見方だが、複数の専門家は、米軍や英軍など西側の軍隊も世界のどこかでこうした技術を使っている可能性があると話す。

<航空業界にとっての問題>

最先端の旅客機はGPSに加え、さまざまなセンサーや装置を搭載して自機の位置を測定しているため、GPSが妨害されても飛行は可能だ。

ただパイロットや業界専門家に聞くと、航空各社は依然として「まずはGPS頼み」という面がある。それが妨害されたり、スプーフィングに遭遇したりすれば機器の電源を切らざるを得ず、多くの場合、飛行中にはリセットできない。

離着陸の一定の手続きにもGPSが機能することが必要とされているため、遅れが生じるなどの悪影響が出ることもあり得る。また一部の民間ジェット機は、ナビゲーションにGPSしか利用できない。

もっともラトビア国営航空会社エア・バルティックのジャニス・クリストプス氏は、フィンランド航空によるタルトゥへの運航停止は異例で、主要空港の大半はGPSが機能しなくなっても利用できるさまざまなナビゲーション手段を持っていると述べた。

一方でGPS妨害やスプーフィングに利用される機器は多種多様であり、航空業界がリスクを最小化するための包括的な対抗技術を生み出すのは難しい。

その代わりに当局は、パイロットがいち早く妨害やスプーフィングを認識するための訓練を行う考えだ。

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