日経平均株価が史上最高値を更新 それでも「サラリーマンの懐が温まらない」3つの理由
J-CASTニュース / 2024年3月2日 18時0分
日経平均株価の史上最高値が話題に
2024年2月22日、ついに日経平均株価の史上最高値が更新された。これまでの最高値は、バブル経済真っ盛りの1989年12月29日の3万8915円。これが新たに3万9098円に塗り替えられた。さらにその後も、連日の最高値更新となっている。
とはいえ、株価が上昇しても「経済が上向いたという実感はない」という人がほとんどで、「給料もぜんぜん上がっていない」と嘆く声もよく聞かれる。なぜなのだろうか。
「トヨタの海外販売比率は85%超。日本市場はもはや傍流」
都内のIT企業に勤めながら株式投資を長年行っている男性Aさんによると、投資界隈では3つの理由が考えられているという。1つ目の理由は「株価好調の背景にある企業の好業績は、海外市場によるものだから」。
ANN NEWS(テレビ朝日系列)の報道によると、企業の純利益は1989年度の約18兆円から2022年度の約74兆円へと約4倍に増加。一方、労働者の平均給与は1989年の約402万円から2022年の約457万円になったが増加率は1.1倍に過ぎない。
会社が儲かっているのに給与が上がらないのはおかしいと思ってしまうが、Aさんは「時価総額ランキング1位のトヨタで見てみれば、それが勘違いだとわかる」という。
企業サイト「トヨタ自動車75年史」によると、トヨタの海外販売比率(台数)は、1975年には38%、1989年には48%にとどまっている。それが2002年になると70%、2007年には80%を突破。直近では85%を超えている。
もはやバブル期とは同じ会社とはいえないほど状況が変化しているが、本社は日本にあって社長も日本人。海外の稼ぎを日本人の手柄にして業界の給与水準をもっと上げてもいいのではと思うが、そうはいかない事情があるという。
「自動車メーカーはGAFAのようなIT企業と違って、1台1台に多額の製造原価がかかるし販売にも人手がかかるので、生産・販売台数に応じたかたちで収益を分配する必要があるのです」
日本市場の割合は15%未満ということは、世界的に見てもはや傍流ともいえる。Aさんは「このまま減っていけば、日本人社員の給与が減るおそれすらあるのではないでしょうか」と懸念を示す。
「FAメーカー栄えて労働者が泣く」なんてことも?
2つ目の理由は「日本が得意とする自動化の分野は、働く人を削減する方向に機能するから」というものだ。
「これは時価総額4位のキーエンスや、同43位のファナック、60位のニデックなどからの連想ですけど、ファクトリー・オートメーション(FA)、つまり工場の自動化が進むと、製造業の会社は生産性が上がって儲かりますが、工場労働者の需要は減りますよね。FAメーカー栄えて労働者が泣く、なんてことがあるんじゃないかと。とはいえ、すでに人手不足が深刻な現場もあるので、AIの活用を含め、完全自動化の流れは今後急速に進むでしょうね」(※時価総額は2024年3月1日現在/以下同)
3つ目は、元も子もない話だが「日経平均株価」という指標自体があてにならない、というものだ。
「そもそも日経平均株価とは、旧東証一部の東証プライム市場に上場する約2000銘柄のうち流動性の高い225銘柄を、日本経済新聞が選定して算出したもの。銘柄の入れ替えも結構あって、現在時価総額4位のキーエンスが村田製作所や任天堂とともに日経平均に採用されたのは、2021年とごく最近の話なんです」
3位の東京エレクトロンが採用されたのは2000年、7位のファーストリテイリングは2005年、9位のソフトバンクが2004年。「日経平均の連続性なんてほとんどないし、バブル期と比較する意味もないんです」というのがAさんの見方だ。
トヨタよりファストリの影響を大きく受ける「問題」も
また、Aさんによると「平均株価」は細かな調整はあるものの、基本的に「銘柄の株価合計÷銘柄数」で算出されるため、株価が高い銘柄ほど日経平均株価におけるウエイトが高くなり、指数に与える影響も大きくなる問題があるという。
日経平均株価におけるウエイトが最も高い銘柄はファーストリテイリングで、株価は4万円を超えているが、時価総額では7位にとどまる。ウエイトが2番目に高い東京エレクトロンの株価は3万5000円を超えているが、時価総額は3位だ。
一方、時価総額1位のトヨタ自動車の株価が3500円あまりなので、構成比率の上位には入っておらず株価への影響も小さい、という奇妙なことが起こっている。
このように「そもそも市場や景気の動向を見る指標として、日経平均株価はかなり問題があるというのが投資家の間ではほとんど常識になっています」とAさん。これではサラリーマンの懐が温まるはずがない。
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