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アドビCPO ベルスキー氏にFigma買収の理由やこれからのAdobeについて聞いた

ASCII.jp / 2022年10月31日 9時0分

米ロサンゼルスで開催された、クリエイター向けの年次イベント「Adobe MAX 2022」では、「Adobe Express」のアップデートについても多くの時間が割かれた

 アドビが展開するクリエイター向けの製品群は、ここ数年で大きくそのカバレッジを広げている。「Adobe Creative Cloud」に含まれるPhotoshopやIllustratorといった代表的な製品で、iPad版やウェブ版などのマルチデバイス化が進む一方、昨年末からは、豊富なテンプレートを用いて誰でも簡単にコンテンツを作成できるウェブ&モバイルツール「Adobe Express」の提供も開始されている。

 さらに昨年は、3D制作ツール群として「Adobe Substance 3D Collection」を発表。ウェブベースの動画制作ツール「Frame.io」を買収して、Premiere Proとの連携を進める一方、今年9月には新たに、ウェブベースのUXデザインツール「Figma」の買収も発表された。

 それぞれの製品のターゲットや狙い、Adobe Expressの役割について、アドビ最高製品責任者(CPO)スコット・ベルスキー氏を取材した。

Creative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高製品責任者(CPO)のスコット・ベルスキー氏

──Figmaの買収について教えてください。基調講演にはCEOのディラン・フィールド氏も登壇しましたが、アドビがFigmaを必要とする理由は何でしょうか?

スコット・ベルスキー氏 今、製品デザインと開発は垂直統合されつつあります。Figmaのユーザーの30%は開発者でFigmaは開発者をはじめ、すべての関係者が製品開発に参加できるソリューションです。我々にはAdobe XDがありますが、これは画面のデザインのみに焦点を当てたデスクトップ製品で、ウェブベースではないし、製品の設計や開発に適したソリューションではありません。

 一方でアドビは、アセットを作るビジネスを展開しています。イメージやビデオ、オーディオ、アニメーション、3Dといったアセットの多くは、Figmaで作られるようなインタラクティブな製品体験に行き着きます。クリエイターがアセットを作り、開発者はそのアセットを使って製品体験を作る。この2つのプロセスをつなげることで、より生産性を高められると考えています。

「Adobe MAX 2022」の基調講演には、Figmaのディラン・フィールドCEOもゲストとして登壇した

──3Dはメタバースだけでなく、幅広く活用できるコンテンツとして注目されるようになってきています。「Adobe Creative Cloud」と「Adobe Substance 3D」を分けているのはなぜですか?

ベルスキー氏 今3Dの革命が起こっていて、すべてのブランドがこれをどのように活用できるか考えています。将来の没入型体験のためだけでなく、すでにマーケティングや製品開発、日々使われるイメージや動画にも活用され始めています。ですので、私たちはSubstanceの製品をCreative Cloudと一緒に使えるようにしています。しかしラインは分けるべきだと考えています。それはSubstanceだけを使いたいというお客様も多いからです。

「Adobe MAX 2022」にあわせて、VR空間でモデリングができる「Adobe Substance 3D Modeler」が発表された

引き続き主力製品では iPad版とウェブ版の両方へシステムを展開

──iPad向け製品のついてどのように考えていますか? Premier ProのiPad版は考えていないのでしょうか?

ベルスキー氏 Photoshop、Illustrator、Fresco、ExpressもiPad向けに製品を展開して大きな成功を収めています。いずれもお客様にとって重要な製品になっているので、引き続きこれらの主力製品では、iPad版とウェブ版の両方へシステムを展開していきます。また他のセグメントについても、探求を続けています。

 たとえばビデオ製品のお客様は、依然精度やパフォーマンスを求めていて、Premier Proが好まれています。また一般向けにはAdobe Expressでも、ウェブやiPadでビデオ編集ができる機能を提供しています。iPadは我々にとってとても重要なプラットフォームですが、お客様が何を望むんでいるのかが一番大事なことなので、状況を見極めていきたいと考えています。

──Adobe Premiere Rushはどのような位置づけですか?

ベルスキー氏 Rushはビデオの製品の中間的な位置づけです。プロ向けでもなければ、ソーシャルメディア向けの動画を素早く作成したい一般のお客様向けでもない。YouTuberなど、Premire Proのパワーも使いたいけれど、もっとモバイルで使い勝手の良いものを求めているお客様向けです。ただ将来的にAdobe Expressがもっとパワフルで高性能になってくれば、そこへブレンドしていくということは考えられると思います。

──Photoshop Expressなど、モバイル向けの製品についてはどうでしょうか?

ベルスキー氏 モバイルのアプリには、いくつかの異なる役割があると思います。たとえば「Adobe Capture」は私のお気に入りのアプリです。色やフォント、ブラシやテクスチャー、マテリアルをキャプチャーすることができ、Creative Cloudのライブラリに取り込んで、IllustratorやPhotoshop、Substance、Premire Proで使うことができます。これはアプリを使って取り込んだものをデスクで使用する、優れたユースケースだと思います。

 一方でPhotoshop Expressは、Photoshopを学ばずにそのパワーの一部を使いたいと思っている、より一般のお客様向けで、Adobe Expressと同じカテゴリーの製品だと考えています。将来的にはPhotoshop ExpressとAdob​​e Expressを連携させる作業を進めています。

 モバイルアプリには流行り廃りがありますし、我々はいろいろなアプリを作るということはしたくありません。お客様はもっとパワフルなものを望んでいると考えるからです。

──しかし特に若いユーザーは、モバイルでもっとAdobeのアプリを使いたいと思っているのではないでしょうか?

ベルスキー氏 我々は「Generative AI」を、モバイルで使えるAdobe Expressに積極的に導入したいと考えています。Generative AIはプロのクリエイターにとっても重要ですが、プロにとってのそれはオプションを増やすことです。試せるオプションが多ければ多いほど良いものが作れますが、時間には限りがあります。Generative AIを使えば、短時間で様々な探求ができます。

 プロではないお客様は、Generative AIを使うことでより速く成功を実感できます。これはAdobe Expressを使っていただく上で重要なことです。

──Adobe Expressでできることが増えると、さらにCreative Cloudを使いたいと思う人が減ってしまうのではないですか?

ベルスキー氏 Adobe Expressが対象にしているのは、最初からPhotoshopを学ぶような忍耐力がないお客様です。しかし、そういうお客様にAIを使って成功してもらうことで、Creative Cloudのお客様になっていただける可能性も高まると考えています。

 Adobe Expressがちょうど漏斗の上のように広い入り口になっていて、その下に様々なクリエイティブツールがあります。今まではこの下しかなかったわけですが、広い入り口からアクセスできるようにしたことで、これまではアドビのお客様ではなかった人たちにも、今、その入り口に立っていただけるようになりました。

 Adobe Expressは、多くのお客様にとってクリエイティブなタスクのスタート地点です。ですのでよりシンプルで使いやすく、Adobeのすぺてのパワーにアクセスできるようにしていきたいと考えています。

 

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