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是が非でも楽天にプラチナバンドを渡したい総務省

ASCII.jp / 2022年10月31日 9時0分

楽天モバイル・矢澤俊介社長 筆者撮影

 プラチナバンドを巡る議論が紛糾している。

 総務省は10月21日、「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース(第14回)」を開催した。

 プラチナバンドとはスマートフォンやケータイで繋がりやすい電波の周波数帯のこととなっているが、現在、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクしか所有せず、新規参入した楽天モバイルはプラチナバンドを所有していない。

 4Gに関しては1.7GHzという周波数帯のみでネットワークを構築しなくてはいけないため、屋内や地下街、山間部など、どうしても繋がりにくい場所が出てきてしまう。楽天モバイルとしては、プラチナバンドを手にすることで、これまで繋がりにくかった場所を一気にエリア化したいと考えている。

 しかし、もはや楽天モバイルに割り当てられるプラチナバンドは残っていない。そこで国はすでに使っているキャリアのプラチナバンドに利用できる期間に制限を設け、そのプラチナバンドを欲しがっている事業者が、すでに持っている事業者よりも「電波を有効利用できる」と判断した場合に、周波数帯を欲しがっている人に渡す、というルールを作ったのだった。

 まさに楽天モバイルのための法律と言える。

楽天「フィルター不要論」展開

 楽天モバイルは3キャリアに対して、それぞれ5MHzずつ電波を分けてほしいと案を出してきた。3社とも痛み分けとはなるが、楽天モバイルとしては「3社で公平に」という配慮からの提案だ。

 しかし、新たに法律ができ、簡単に周波数帯を召し上げられ、ほかの事業者に獲られてしまうなんて、3キャリアは納得できるわけがない。

 3キャリアは「5MHzを別のキャリアに割り当てる場合、電波の干渉が起きてしまい、通信品質が下がってしまう。フィルターと呼ばれる機械を全国の基地局に導入しないといけない」と反論。一方で、楽天モバイルは「フィルターなんて不要だ」と3キャリアを突っぱねた。

 そこで、第14回のタスクフォースでは3キャリアから「フィルターの有効性についての実験結果」が発表された。3キャリアとも「フィルターがないと通信品質が落ちる。フィルターは必要だ」だと数値的な根拠を持って示してきた。フィルターを設置するには当然、コストが発生する。3キャリアとも数百億円規模を見積もっており「周波数を欲しがるキャリアが工事費を負担すべき」と主張した。

 一方で楽天モバイルは、実験結果に対して「実際にユーザーが体感する程度のものなのか」と疑問視したのだった。

 楽天モバイルとしては「フィルターは不要」という主張を変えていない。実験結果を受けて、3キャリアが「フィルターは絶対必要」というのであれば「それぞれ3キャリアが工事の費用を負担して、フィルターを設置すべき」(楽天モバイル・矢澤俊介社長)としている。

矢澤社長「絶対勝てるのでは」

 楽天モバイルと3キャリアの議論は平行線をたどったままだ。しかし、総務省としてはそろそろ決着させようと目論んでいるようだ。

 当初、3キャリアから周波数帯を返還させ、楽天モバイルに新たに割り当てるのに楽天モバイルは「1年でできる」と主張していたのに対して、3キャリアは「7年から10年はかかる」と反論していた。

 この件に対しても、楽天モバイルが「この場所から工事したい」という計画を公表し、それに応じて3キャリアが対応するという、1年ごとにエリアを限定して工事を進めることになりそうだ。そうすることで楽天モバイルは早期にプラチナバンドのエリアを開始しつつ、10年かけて全国に展開することが可能となる。

 楽天モバイルがここまで強気に出ているのはなぜなのか。

 矢澤社長は「競願はこれから出すことになるが、絶対に勝てるのではないか」と胸を張る。楽天モバイルと3キャリアで「どちらが電波を有効活用できるか」という視点で、審査されるのだが、3キャリアがすでに計画を実行しているのに対して、楽天モバイルはその計画値を見た上で、それよりも上を行く計画を出すことが可能だ。つまり、かなり有利な「後出しジャンケン」ができるというわけだ。

 ただ、海外を俯瞰すると4キャリアあった国でも最近は合併が進むなどして3キャリアに減っているところも多い。日本も4キャリアから3キャリア体制に戻れば寡占市場となり、料金が値上げ方向に行く可能性もある。

 日本国内での競争環境を維持するという意味でも、総務省としては楽天モバイルに是が非でもプラチナバンドを渡したいのだろう。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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