「劇場に足を運ぶ人口を増やしたい」城田優が新たに手掛けるエンターテインメントショーへ向けた“覚悟”
CREA WEB / 2024年4月16日 11時0分
肩書“entertainer”の城田優さんが、また新たな挑戦でエンターテイメント界を湧かそうとしている。城田さんは、実力派クリエイター&キャストと共に「東京」をイメージして創り出す、歌とダンスのオリジナル・エンターテインメントショー『TOKYO~the city of music and love~』を、プロデュース・制作・出演するのだ。
東京、さらにはシンガポールで開催する本公演について、「何でも聞いてくださいね!」と城田さんは屈託のない笑みを浮かべた。音楽ライブではない、芝居の演劇でもない、“ショー”という空間に、城田さんは希望を抱いている。果たして、どのような世界が彼の手によって生み落とされるのだろうか。インタビュー前篇では、エンターテイメントの力を信じる城田さんの強い信念を聞いた。
世界レベルで、クオリティの高いものを作っていきたい
――城田さんが新たに手掛けるショー『TOKYO~the city of music and love~』ですが、タイトルには『TOKYO』と入っています。その背景から、教えていただけますか?
「世界に通用するような、世界に飛び出す、日本を代表するようなショーをたくさん作っていきたい」というお話を東急シアターオーブさんと、キョードー東京さんからいただきました。東急シアターオーブさんも、キョードー東京さんも海外作品をたくさん上演されていらっしゃるし、僕自身もそういった世界レベルで、クオリティの高いものを作っていきたいという気持ちで、日々エンタテインメントに取り組んでいるので、「ぜひ」とご一緒することになりました。
タイトルについても、変なひねり方をせず、東京から発信するショーなので『TOKYO』とつけました。『TOKYO』に続く『the city of music and love』は「音楽と愛の街」という意味です。いずれ世界中で公演することをイメージして、このタイトルになりました。
――ご自身の中で抱く東京のイメージは、『TOKYO』とどういうふうにつながっていきますか?
あくまでショーの中の『TOKYO』なので、「僕、東京のことをこう思っています!」ということとは結びつけていないんですよ。
ショーに関しては、日本の音楽やポップスも多くやりますし、世界中の様々なミュージカル曲、ディズニーの楽曲まで歌わせていただきます。
すごくいい劇場でこれから立つのが楽しみ
――日本では「ショー」というジャンル自体、少ないように感じます。「ショー」として見せるということにおいて、今どう考えていますか?
おっしゃる通りで、ミュージカルやコンサートは僕も出たことも見たこともありますけど、ショーはなかなかないんですよね。ストーリーは今回僕らサイドでは持っていますが、それをあえて皆さんにお伝えすることはしません。
確実にお伝えできることは、「このジャンルって…何に当てはまるんだろう?」と見た後に感じることができるものにする、ということです。これまで皆さんが見たことのない、歌、ダンス、音楽、そこに映像や照明、いろいろないわゆる裏方のクリエイター的な部分が混ざって、最終的にひとつのショーになっていくと思っているんです。
あと、僕が期待しているのは、シアターオーブを出た後に東京・渋谷の街を歩くのがちょっと楽しくなるようにできたら、と。「日本っていいな、東京っていいな」と誇りに思ってもらえるようなコンセプトのものにしようと、絶賛いろいろ練っているところです。
――すでにシンガポールの劇場Esplanade -Theatres on the Bayにも行かれたと伺っています。劇場の印象はいかがでしたか?
シンガポールという街自体、僕は何度も何度もプライベートでも仕事でも行っていて、とても親しみのある場所なんです。僕の人生でも回数的にはトップクラスに入るくらい…たぶんスペインに行っている回数よりもシンガポールに行っている回数のほうがもしかしたら多いんじゃないか、というくらい(笑)、なじみのある場所です。
劇場のEsplanadeも、日本でももっとこんな素敵な劇場を作ってほしいと思うくらい、本当に素晴らしかったです!
――どんなところがEsplanadeのよさ、違いだったんでしょう?
お客さん目線で言うと、座席の構成のおかげですごく舞台が見やすいんです。座ってみてすぐに「うわ、すごい」と上質さを感じましたし、外観もとにかくすごくキレイです。
裏方目線からだと、劇場が本当に使いやすい。とにかく大きいんですよ! 舞台の奥行きがものすごくあるので、あんなに奥行きがあって広い劇場、なかなかないと思います。広いことは、作品をやる上でいろいろなアイデアが生まれやすいんです。大体のことはアイデアがあっても実現できる空間がないので。そういった意味でも、すごくいい劇場でこれから立つのが楽しみです。
「この人面白い、この人うまい」と思った人たちをキャスティング
――出演アーティストの皆さんに関しては、城田さんが直々にオファーされたんですよね。どういった観点で選出したか、教えていただけますか?
よくぞ聞いてくださいました! 純粋に自分が「この人面白い、この人うまい」と思った人たちをキャスティングしました。本当に歌が上手くて尊敬できるのに、僕の周りの人たちも、僕も知らなかった実力のある人たちがいっぱいいます。彼らの個性が目立つのであれば、もっと注目されるべきだと思うんです。埋もれてしまっていることはなんてもったいないんだろう、と。
だから、とにかく「いい、面白い、うまい」と感じる方たちをキャスティングしました。本当に素晴らしいので期待していてください!
――演出家またはプロデューサーとして、城田さんのやりたいことはそうした才能を世に知らしめることも一つあるということですよね。目標ややりがいを見出している部分はどこでしょうか?
今回の公演だけに限らず、自分が演出やプロデュースしていく上で大事にしたいのは、お客さまにいいものを見ていただくことです。お客さまは、高いチケット代を払って、労力と時間をかけて劇場に足を運んでくださっているんですよね。そんな方々に、僕目線ではありますけど、いいものを見ていただき、良し悪しをきちんと判断してもらえたらと思っています。
僕自身、ラスベガスで、ニューヨークで、ウエストエンドで、たくさんのショーを見てきました。評価されないものはすぐ終わるし、いいなと思ったものは日本に入ってきますし、それくらいわかりやすく実力主義、クオリティ主義なんですよね。そこを僕がプロデュースや演出するときは、なるべく目指していきたいと思っています。
……とここまで話すと、「さあ、じゃあ城田、お前はどれぐらいのものを見せてくれるの?」と思われますよね(笑)。覚悟の上で話しています。
話したからには、めちゃくちゃいいものを作るしかないわけなので。いいものを作って、その結果、日本のエンターテイメント界が、話題性ばかりが先行されるのではなく、出演者とスタッフたちが作り上げた作品が結果的にビジネスになっている、というようにしていきたいと思っています。
とにかく劇場に足を運ぶ人口を増やしたい
――城田さんご自身が観客に期待していることや、今後こうなっていけばいいと感じていることはありますか?
若者のエンタメ性が少し変わればいいな、と思うことがあります。海外だと、家族連れや若い人同士で劇場に行くんですよ。日本は、「ミュージカルを見に行こうよ」と、デートに誘っている人はあまりいないなと思うんです。僕は、そういうのがあって当たり前なのに日本ではなかなか普及していないなと思っているので、少しでも家族連れや若い人同士で劇場に来ていただければいいなと思うんです。
そのためにも今後僕がもっとやっていきたいのは、新しい客層の取り込みです。これからの日本を担っていく若者には、若いうちからいいものに触れて、自分で良し悪しを決められるようになってほしい。目を肥やしてもらって、とにかく劇場に足を運ぶ人口を増やしたいと、そういう思いでやっています。
――自分の目で見て感じる、判断する、城田さんも若いときにそうした経験をされて今があるということですよね。
僕自身の中での一番大きな出来事だと、20歳のときに初めてニューヨークに行ったことだと思います。当時、ブロードウェイミュージカルを4日間で7本くらい見たんですね。日本でそれまでもミュージカルをたくさん見ていたつもりだけど、衝撃を受けました。それからたくさんの作品に触れて、いいか悪いかは自分が見て比べてみないとわからないと思いました。その数が増えていけばいくほど、「何のどこが好きか、何のどこが嫌いか」が、おのずと引っ掛かっていくと思うんです。
何かに対して「好き、嫌い」だけで終わっても、それでもいいと思います。けど、もう一歩先に、もう1個上にいくためには「なぜ」好きなのか、嫌いなのか、知るために思考することが大事だと思うんですね。特にこういう仕事に就いている人間は「なぜ」を知ることで、より上質なものが知れたり、作ることができると思うので。どんなジャンルのことをやるにしても「なぜ」をわかったほうが、確実に豊かになるはずだと僕は思っています。
城田優(しろた・ゆう)
1985年、東京生まれ。2003年に俳優デビュー。以降、テレビ、映画、舞台、音楽など幅広く活躍。近年の主な出演作に、NKK大河ドラマ「どうする家康」、NHK連続朝のドラマ小説「カムカムエヴリバディ」(語り手)、Amazon Primeドラマ「エンジェルフライト~国際霊柩送還士~」、映画「コンフィデンスマンJP英雄編」等がある。舞台では、第65回文化庁芸術祭「演劇部門」新人賞を受賞する等様々な賞を受賞。2016年に「アップル・ツリー」で演出家デビュー。ミュージカル「ファントム」では、演出・主演に加えてもう一役を務めるという異例の三刀流に挑み、話題に。
衣装クレジット
ジャケット 174,900円、シャツ 44,000円、
パンツ 130,900円(全て アミ/アミ パリス ジャパン 03-3470-0505)その他スタイリスト私物
文=赤山恭子
写真=原田達夫
ヘアメイク=Emiy(エミー)
スタイリスト=山中有希奈
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