"見た目はそっくり、中身は違う"(C-グリコシド型)擬複合糖質を開発 -分岐合成法の確立と生物活性が大きく異なる多様なアナログ群の創出- 摂南大学
Digital PR Platform / 2024年1月12日 20時5分
(図2)光酸化還元カップリング反応によるフルオロビニル-C-グリコシル化反応:光エネルギーを利用した温和な反応条件により、広範なブロモ糖とBrFオレフィンを直接連結できるようになりました。糖供与体には、様々な保護パターンを有するグルコース、ガラクトース、マンノースの計8種、糖や脂質から2工程で合成できるBrFオレフィンの計13種が利用可能であることを示しました。
合成したフルオロビニル-C-グリコシドからのCH2-、(R)-CHF-、(S)-CHF-グリコシドの分岐合成は、触媒制御により達成できると考えました(図3)。触媒を徹底的に検討した結果、白金炭素触媒やロジウムアルミナ触媒はCH2グリコシドを、水酸化パラジウム触媒は(S)-CHF-グリコシドを、Crabtree触媒は(R)-CHF-グリコシドを与えることを見出しました。開発した手法によって、それぞれ3種ずつの炭素連結型イソマルトースおよびα-ガラクトシルセラミドの合成を達成しました。
(図3)触媒制御による化学および立体選択的な水素添加反応:フルオロビニル-C-グリコシドの水素添加反応では、白金系の水素添加触媒を用いるとフッ素が除去されたCH2-グリコシドを与える傾向があることがわかりました。一方、水酸化パラジウム触媒(Pearlman触媒)では、立体的に空いた面から水素添加が進行することで(S)-CHF-グリコシドを与え、Crabtree触媒はヒドロキシ基の配向効果により(R)-CHFグリコシドを構築できました。
連結部位編集戦略の概念実証のため、合成した炭素連結型イソマルトースおよびα-ガラクトシルセラミドの生物活性を評価しました(図4)。天然型イソマルトースは糸状菌Aspergillus nidulansのアミラーゼ生産を誘導する活性があることが知られています。これに対しCH2連結型イソマルトースは、天然型よりも大幅に高いアミラーゼ生産誘導活性を示すことが明らかになりました。天然型α-ガラクトシルセラミドは、マウス樹状細胞上のCD1dに提示され、T細胞受容体を介してiNKT細胞を活性化することが知られています。一方、(R)-CHF連結型α-ガラクトシルセラミドはCD1dへの提示は示唆されたものの、iNKT細胞を逆に活性化せず、むしろ不活性化することを見出しました。これらの結果より、連結部位編集戦略が多様な生物活性を有する擬複合糖質の創出に有効な戦略であることを実証しました。
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