【名古屋大学】紙とともに去りぬ ~怒りを「書いて捨てる」と気持ちが鎮まることを実証~
Digital PR Platform / 2024年4月10日 14時5分
名古屋大学大学院情報学研究科の川合 伸幸 教授、金谷 悠太(研究当時:博士後期課程学生)らの研究グループは、怒りを抑制する方法を新たに発見しました。
家庭や職場で怒りを抑制することは重要です。怒りは暴力を生み出し、人間関係を破壊することがあります。怒りの抑制のために、上手に怒りと付き合うための心理トレーニングである「アンガーマネジメント」という経験的な知恵に基づくスキルが知られていますが、これは実験や客観的事実に基づいた手法ではありません。いくつかの怒り抑制手法がありますが、いずれも認知負荷が高く、怒りの最中に実践するのは困難で、効果的な抑制手法が求められていました。
本研究では、実験参加者が書いた文章に対して低い評価を与えることで怒りを生じさせ、その後で怒りを感じたときの状況を客観的に紙に書かせた後に、その紙を丸めてゴミ箱に捨てると、侮辱される前と同程度まで怒り得点(注1)が低下し、書いた紙を捨てずに保持した参加者の怒りはそれほど下がりませんでした。また、ゴミ箱に捨てる代わりにシュレッダーで裁断すると怒りは減少し、箱に入れただけでは減少しませんでした。
この手法を応用することで、職場や家庭で簡単に怒りを抑制できるようになることが期待されます。
本研究成果は、2024年4月9日19時(日本時間)付ネイチャー・パブリッシング・グループのオンライン総合科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。
【本研究のポイント】
・怒りを抑制する新たな方法を発見・実証した。
・怒りを感じた状況をなるべく客観的に紙に書いて、その紙を捨てる(実験1)か、シュレッダーで裁断(実験2)すると怒りが消失した。
・科学的な事実に基づいた怒り抑制方法として、簡便で効果的な手法を開発した。
【研究背景と内容】
怒りは暴力を生み出し、人間関係も壊すこともあるため、怒りを効果的に抑制する方法が求められていました。怒りを抑える手法として広く知られる「アンガーマネジメント」は、客観的なエビデンスに基づいた怒り抑制法ではありません。感情のコントロールに用いられる「再評価」(注2)や「自己距離化」(注3)という手法は、怒りを抑制することが証明されていますが、どちらも怒っている最中にするには難しく、簡便で効果的な怒り抑制手法はありませんでした。
本研究では、自分の捨てたい思いを皿に念じ封じ込めて割ることで、自分の気持ちを捨て去ることができるという「はきだし皿」(注4)と同じように、怒りを感じた状況を紙に書き、その紙を丸めて捨てる(実験1)か、シュレッダーで裁断する(実験2)と、怒りが収まることを示しました。
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