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自主製作映画の収蔵から上映まで――「わらじ片っぽ」の軌跡【国立映画アーカイブコラム】

映画.com / 2024年3月10日 16時0分

「1970年代の日本には、劇映画では左幸子や浜野佐知、記録映画では宮城まり子や時枝俊江、実験映画では出光真子、久保田成子など監督をする女性は活躍していながらも、全体の趨勢のなかでは女性監督が大変少なかった時代に、環境破壊といった同時代的な主題に取り組むと同時に女性の抑圧の歴史も描くという、時空を超えた壮大なテーマを扱った本作は、まさに映画史のミッシングリンクといえます」

 ここからは、本作の上映に至る過程を、フィルムの基本的なご説明とともにご紹介します。まず、一般的にフィルムは明るいところが暗くなるように、明暗が反転して記録されます。これをもうひとつのフィルムにコピーすると反転の反転で、明るい部分が明るく見えるフィルムになります。明暗が反転している前者をネガとよび、後者をポジとよびます。カメラに入っていたフィルムを現像してできるネガをオリジナルネガとよび、最も情報量が詰まったものです。

 フィルムでの撮影では、一般的にフィルムカメラは録音ができないので、レコーダーを使っていました。なので、オリジナルネガには画を記録した「画ネガ」と音声を光学モジュレーションとして記録した「音ネガ」があります。この二つのオリジナルネガを専用の機材でまっさらなフィルムに焼き付けて現像すると、ポジ像が記録され音声トラックもついた上映に使用できるフィルムができます。したがって、一般的にフィルムの保存や復元にあたっては、オリジナルネガを見つけ出し、その状態を確かめることが何よりも第一歩となります。

 本作と国立映画アーカイブの出会いは、2018年に鵞樹丸監督から当館にお手紙が来たことに始まります。その当時の経緯について、最初に監督から相談を受けた研究員(当時)の江口浩さんは、以下のように語っています。

「本名の村上靖子さんのお名前で私に封筒が届き、そこにはご自身の監督作とのことで映画『きこぱたとん』のDVDが入っておりました。高校時代から愛読していた『キネマ旬報増刊日本映画監督全集』に、鵞樹丸監督の本名が村上靖子さんと記載されていたのを思い出しまして、当時のフィルムをお持ちですかとお聞きしました。後日、お宅にお邪魔しまして、『わらじ片っぽ』のオリジナルネガや上映用ポジから8ミリフィルムの作品まで、多くのフィルムが保管されていることを確認し、その後もやりとりを重ねて、2020年に国立映画アーカイブにご寄贈いただきました」

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