国の労災保険では不足!?「弔慰金制度」を整備した方が良い理由を解説
ファイナンシャルフィールド / 2022年7月9日 2時40分
中小企業経営者は、経営者自身が日々の業務に追われて仕事をすることが多いです。また、企業では、加入が義務付けられている労働者災害補償保険に加入しているので問題ないだろうと考えている人も多いでしょう。しかし、労働者災害補償保険だけでは全てを賄うことができません。 本記事では、中小企業において弔慰金制度を整備した方が良い理由を解説します。
弔慰金制度を整備した方が良い理由
国の労働者災害補償保険は、労働災害で従業員が死亡した場合などに給付されます。労働災害とは、業務上に起きた業務災害と通勤中に起きた通勤災害において、労働者が負傷、疾病、障害、死亡することです。
つまり、業務中や通勤中に起きた場合は補償されるものの、それ以外は補償されません。また労働者災害補償保険は、労働災害と認定されなければ給付されないため注意が必要です。
弔慰金制度とは
多くの企業において、従業員の福利厚生の一環として「弔慰金」を制度として設けています。従業員本人に不幸があった場合に会社からお金が支給される制度です。
弔慰金制度では、会社の従業員に不幸があった場合となるため、業務中だけではなく業務外においても対象とされています。
会社において弔慰金制度を整備しておくと、従業員本人や家族への安心感につながります。
弔慰金の一定額以下は非課税
弔慰金の額については、業務中または業務外で亡くなったかによって金額が異なり、また勤続年数の違いなどでも企業によって異なります。弔慰金の算出方法については、社内規定で定めておくことが大切です。
弔慰金は、一定額以下の場合非課税となります。その範囲は図表1のとおりです。
図表1
この非課税枠を超える場合、死亡退職金として扱われます。死亡退職金においても非課税枠があり、その金額を超えると相続税の課税対象になります。
弔慰金制度に活用できる生命保険
弔慰金制度に活用できる生命保険として、「総合福祉団体定期保険」と「養老保険の福利厚生プラン」をご紹介します。
総合福祉団体定期保険
総合福祉団体定期保険は、従業員を対象にした1年更新型の死亡を保障する保険です。1人よりも複数で加入することで、団体割引が適用されるため、1人当たりの保険料を安くできます。なお、従業員は全員加入する必要がある他、経営者を含めた加入も可能です。
契約形態は、次のようになります。
契約者:法人
被保険者:経営者・従業員(全員加入)
死亡保険金受取人:法人または従業員の遺族
定期保険は、掛け捨て保険となるため、会社の経理処理は全額損金計上として、経費の扱いになります。
養老保険の福利厚生プランとは
養老保険とは、保障される期間内に死亡した場合、死亡保険金を遺族が受け取ることができ、満期まで生存していれば満期保険金を法人が受け取れるため従業員の退職金に充てることができる保険です。活用するには、社内規定を定めておく必要があります。
契約形態は、次のようになります。
契約者:法人
被保険者:経営者・従業員(全員加入)または従業員のみ(全員加入)
死亡保険金受取人:被保険者の遺族
満期保険金受取人:法人
養老保険の福利厚生プランの経理処理は、支払保険料のうち、死亡保険金相当分を損金計上、満期保険金相当分を益金計上することになります。
弔慰金制度は従業員の福利厚生の一環
加入が義務付けられている労働者災害補償保険は、業務中や通勤中に従業員が亡くなった場合、労働災害と認定されれば給付されます。しかし、業務や通勤と認められない場合や業務外において給付はされません。
もし、何も給付されないとなった場合、遺族の会社に対する不満は高まる恐れがあり、家族を持つ従業員にとっても不安が残ることでしょう。従業員の安心感や働く満足度を考慮して、会社に弔慰金制度を整備しておくことをおすすめします。
出典
厚生労働省 労災補償に関する主な制度
厚生労働省 労災保険給付の概要
国税庁 No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い
国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
国税庁 第3節 保険料等 (養老保険に係る保険料)
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士
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