裁判はしたくない……でも、泣き寝入りはイヤ。どうすればよい?
ファイナンシャルフィールド / 2022年12月14日 2時0分
「友人が貸したお金をなかなか返してくれない」「夜中までうるさい店があるが近隣に配慮してもらえないだろうか」などといった、身近なトラブル。争いごとの解決方法といえば、「裁判」を思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。 しかし、後々の関係性を考えるとそこまで大ごとにしたくない場合もあるでしょうし、争いが長引くと時間や費用の負担が大きくなるかもしれません。だからといって、何もせずに泣き寝入りはしたくありませんよね。
裁判外紛争解決手続き(ADR)という方法
「裁判」という方法以外に、裁判外紛争解決手続き(以下、ADRと表示)があります。
ADRとは、裁判が紛争解決手続きの利用の促進に関する法律により、「訴訟手続きによらずに民事上の紛争の解決をしようとする当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続き」とされています。
手続きの方法としては、「調停」「あっせん」「仲裁」等があります。
「あっせん」は、あっせん人が公正な第三者として仲介して、当事者が解決に向けて話し合います。「調停」は、調停人が仲介し作成した調停案に双方同意すれば解決となりますが、気に入らなければ拒否することもできます。強制力はありません。
一方「仲裁」は、当事者が公正な第三者である仲裁人の判断に従う合意をして、その仲裁人者が判断しますが、この仲裁判断には裁判同様の強制力があります。判決は控訴・上告ができますが、仲裁判断は不服申立ができません。
裁判は相手の同意は必要ありませんが、ADRは裁判と違って相手の同意がなければ始めることができません。また、裁判は公開されますが、ADRは非公開です。
裁判外紛争解決手続き(ADR)のできるところは、裁判所、国民生活センターなどの行政機関の公的機関の他に、弁護士会や業者団体などの民間組織が行うものがあります。
しかし、弁護士会はともかく、民間組織での手続きは不安になりますよね。
「かいけつサポート」は法務大臣が認証
法的トラブルを民間業者が解決に導く「かいけつサポート」は、法務大臣に認証を受けた民間事業者が行う紛争解決サービスです。話し合いによって解決できる民事上の紛争を、当事者間の契約に基づき、和解の仲介を行います。仲裁やこれに類する手続きは、話し合いによる解決ではないため、認証の対象外です。
法務大臣の認証を取得するためには、公正中立であるよう裁判外紛争解決手続きの利用の促進に関する法律(ADR法)で定められた基準を満たさなければなりません。基準の主なものとして
(1)トラブルの内容に応じた専門家を紛争解決の手続きを進める人(調停人)として選任できるよう、専門的人材を確保しているか
(2)当事者のプライバシーや営業秘密などを守るための体制は整っているか
(3)当事者と利害関係のある人が調停人とならないような仕組みが備わっているか
(4)手続きを利用する前に、手続きの内容や費用など、法務省が定めた事項を説明することとしているか
などが定められています。
(出典:法務省 かいけつサポート)
安心して利用できそうです。
かいけつサポートとメリット・デメリット
かいけつサポートを利用するメリットとしては、
●利用する前に手続きの内容や費用が分かるので、利用するかどうかの判断ができます。
●秘密は守られます。
●専門家により、迅速な解決を図ることができます。
●話し合いでお互いが納得できる解決を得られます。
その他に、手続きの場所や時間を柔軟に対応してくれる事業者もいるため、平日の日中は仕事で時間が取れなくても、利用が可能です。
かいけつサポートには法的効力がないのが大きなデメリットです。よって、なかなか話し合いが進まず、そうこうしている間に時効が……ということもあり得ます。
しかし、かいけつサポートを利用していれば、一定の場合に本来の時効期間を過ぎていても時効が完成しない(時効の完成猶予)、訴える前に調停の申立が必要な場合もすぐに訴えが可能である(調停の前置の特則)、訴訟手続きを中止して認証を受けた機関との調整が可能(訴訟手続きの中止)という、ADRの法的特例を利用できます。
詳しくは、法務省「かいけつサポート」のサイトをご覧ください。
出典
法務省 かいけつサポート 認証紛争解決サービス
法務省 かいけつサポート 認証紛争解決サービス(令和4年度版)
厚生労働省 ADRを利用するメリットは?
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者
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