長年夫婦2人で稼いだのに「遺族年金」はゼロ?これって不公平じゃないの? 30年間二人三脚で稼ぎ続けた“パワーカップルの誤算”とは?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月3日 2時20分
被保険者が亡くなったとき、残された家族が受け取れる遺族年金。しかし、受給要件が定められているので遺族年金を受け取れない場合もあります。そこで本記事は、遺族年金の仕組みや目的について解説します。
30年間二人三脚で稼ぎ続けたパワーカップルの誤算?
今回は、30年連れ添った妻と死別したAさんから意見が寄せられました。23歳のときに結婚したAさん夫妻は、30年にわたり共働きを続けてきました。しかし53歳を迎えた昨年、妻のリエさん(仮名)は事故で帰らぬ人に。2人の間に子どもはいませんでした。死別時の年金加入状況は以下のとおりです。
●Aさん:厚生年金に加入(未納期間なし)
●リエさん:厚生年金に加入(未納期間なし)
遺族年金とは、国民年金もしくは厚生年金の被保険者が亡くなったとき、遺族が受け取れる年金のことです。子どもがいない夫婦でお互いが会社員の場合、遺族が受け取れる遺族年金は次のようになっています。
●妻(30歳以上):生涯にわたり遺族厚生年金を受給できる
●妻(30歳未満):5年間のみ遺族厚生年金を受給できる
●夫(55歳以上):60歳から遺族厚生年金を受給できる
●夫(55歳未満):受給できない
※年齢は配偶者の死亡時
Aさんのケースでは、53歳で死別したため対象外になった形です。さらに子どもがいないので、遺族基礎年金も受給できない状況です。「30年も共働きで年金を払い続けてきたのに、僕の性別と年齢が理由で遺族年金を受け取れないとは思いませんでした。同じ共働きでも僕が妻の立場なら年金を受け取れたかもしれず、不公平な制度だと感じます」と、Aさんは憤りを隠せません。
遺族年金の仕組みと目的を知ればもらえない理由が見えてくる
なぜ遺族年金は、遺族の性別と年齢で受給可否が変わってしまうのでしょうか。それは、遺族年金の仕組みや成立目的から見えてきます。
残された家族の生活を支えるのが目的
遺族年金は、働き手を失った家族の生活を支えるのが目的の制度です。つまり、亡くなった人に生計を支えられている場合でなければ、遺族年金は支給されないのです。また、遺族厚生年金の受給資格があっても、以下に該当する場合には受け取れません。
●年収850万円以上もしくは年間所得655万5000円以上あるとき
●老齢厚生年金が始まり、かつ、遺族厚生年金の支給額を上回るとき
老齢厚生年金と遺族厚生年金は、併給されません。したがって、65歳までは老齢厚生年金と遺族厚生年金のどちらをもらうか自分で選択します。65歳以上は、老齢厚生年金と遺族厚生年金を比較して高いほうが支給されます。
夫に対する遺族年金が手薄な理由
妻に先立たれた夫が遺族年金をもらえるのは、子ども(18歳になる年度末まで)を養育している期間か、60歳から自身の老齢厚生年金の受給がスタートするまでの期間だけです。なぜそのように仕組みになっているのか、厚生年金の成り立ちを振り返ってみましょう。
厚生年金保険法が定められたのは1944年です。この時代、夫は仕事・妻は専業主婦として家事育児に専念するのが一般的な家族の形でした。
共働きだとしても男女間の賃金格差は現代よりも大きく、夫婦が同等に稼いでいるパワーカップルは制度の設計時点であまり考慮されていませんでした。妻には収入がないか低賃金であることが前提の制度なので、夫に対する遺族年金は手薄となっているのです。
遺族厚生年金の見直しが進められている
2023年7月、厚生労働省の諮問機関が遺族年金制度の男女格差解消に向けた議論を開始しました。働き方の多様化が進んだことで、Aさんのケースのように男女間での受給要件の差を是正すべきという声が相次いでいるためです。2025年までに改革案をまとめ、通常国会へ提出する方針です。
まとめ
現行の年金制度では、共働きの夫婦は遺族年金を受け取りにくい仕組みになっています。特に妻に先立たれるケースでは、夫が遺族年金を受け取れるケースはあまり多くありません。こういった男女格差を是正するため、遺族年金制度の見直しが進められています。今後の議論の方向性に注目していきましょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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