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国産初のカセットテープからスマホ電池で世界首位のTDK株が人気の理由

Finasee / 2024年1月9日 17時0分

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Finasee(フィナシー)

TDKの株価が好調です。電池事業が順調に伸びており、売上高は2023年3月期までに3期連続で過去最高を更新しています。2024年3月期は減収減益の予想ですが、投資家の期待は高いようです。

【TDKの業績】

  売上高 純利益  2022年3月期 1兆9021億円 1313億円  2023年3月期 2兆1808億円 1142億円  2024年3月期(予想)   1兆9700億円  1050億円

※2024年3月期(予想)は同第2四半期時点における同社の予想

出所:TDK 決算短信

【TDKの株価(月足、2018年11月~2023年11月)】

出所:Investing.comより著者作成

TDKは市場評価性の高さから「JPXプライム150指数」にも選ばれています。投資家から高い評価を集めるのは、同社が順調に成長してきたからかもしれません。

TDKはどのように成長してきたのでしょうか。同社が繰り返した事業転換の歴史を振り返りましょう。

電子部品大手 カセットテープが代表作

TDKはフェライトの実用化を目指して設立された企業です。フェライトとは磁性を持つ素材で、東京工業大学で1930年に発明されました。TDKは1935年に東京電気化学工業として誕生します。創業初期は無線通信機やラジオ向けのアンテナコイルなどにフェライトが使われました。

フェライトが活用された製品で代表的なものがカセットテープです。TDKが1966年に初めてカセットテープの国産化に成功しました。これが世界的にヒットし、TDKの知名度は大きく向上します。その後もビデオテープやDVD―Rなどの記録メディアで大きなシェアを獲得しました。

しかし記録メディアのニーズは徐々にHDDへ移り、TDKが得意とした磁気テープや光ディスクなどの需要は減退します。これを受けTDKは記録メディア事業をブランドごと2007年8月に譲渡しました。

その後はHDD用磁気ヘッドが主力となり、現在は自動車や通信機器向けの受動部品やスマートフォン向けのリチウムイオン電池が収益を支えています。

【セグメント売上高(2023年3月期)】

  主な製品 売上高  受動部品  コンデンサ、インダクタ 5759億円  センサ応用製品  磁気センサ、モーションセンサ 1695億円  磁気応用製品  HDD用磁気ヘッド、マグネット 2006億円  エナジー応用製品   リチウムイオン電池  1兆1734億円  その他  フラッシュメモリ応用デバイス  614億円

出所:TDK 決算短信

TDKの売り上げはおおむね右肩上がりに増加していますが、時代に合わせてラインナップを柔軟に変化させる姿勢が奏功したのかもしれません。

【TDKの売上高の推移(2001年3月期~2023年3月期)】

出所:TDK 決算短信より著者作成経営不振のATLを買収 世界トップの電池メーカーへ転身

TDKの近年の成長はエナジー応用製品が担っています。同セグメントの主要な製品はスマートフォンやタブレット向けの小型リチウムイオン電池です。

エナジー応用製品セグメントの売り上げは、2018年3月期までは受動部品と同程度でした。そこから5期で2.6倍に増加し、TDKの重要な収益源となっています。

【セグメント別売上高の推移(2018年3月期~2023年3月期)】

出所:TDK 決算短信より著者作成

TDKの電池ビジネスは比較的新しい事業で、参入したのは2005年です。香港のリチウムイオン電池メーカーであるATL(アンプレックス・テクノロジー)の買収がきっかけでした。

当時のATLは競合の台頭から経営不振に陥っていました。ATLの創業者であるロビン・ゼン氏がTDKグループに勤めていたこともあり、同社はTDKに出資を求めます。これに応じ、TDKはATL全株式を1億ドル(107億円)で取得しました。

ATLの買収は僥倖でした。ATLは買収後に目覚ましい成長を遂げ、スマートフォン向けバッテリーで世界トップのシェアを獲得しています。2023年3月期では5000億円以上の売り上げと900億円以上の純利益を稼ぎました。

【ATLの業績推移(2018年3月期~2023年3月期)】

出所:TDK 有価証券報告書より著者作成

TDKとATLは2021年、車載向け電池で世界首位のシェアを握るCATL(コンテンポラリー・アンプレックス・テクノロジー)との提携を発表しました。実はCATLもロビン・ゼン氏が設立した企業です(出所:Contemporary Amperex Technology Co., Limitedとの業務提携及び合弁会社の設立に関するお知らせ

ATLとCATLは家庭用や産業用の中型二次電池を開発する合弁会社を設立するほか、車載用でTDKとCATLの協業を模索するとしています。世界で高いシェアを持つ企業同士の提携を受け、TDKの電池事業にはさらなる期待が集まります。

売り上げが倍増 芽吹きだしたセンサ事業

TDKが次に拡大を目指すのがセンサ事業です。磁気ヘッドの技術を活用し2009年からTMRセンサ(磁気センサ)の開発に着手しました。また2017年には慣性センサ大手の米インベセンスを買収し事業を強化しています。

TMRセンサは高温への耐性や精度の高さから特に自動車向けに需要が伸びています。ニーズの高まりを背景に、2023年4月にはTMRセンサの増産を発表しました。同年10月にはTMRベースの次世代センサ開発で電流センサ大手のスイスLEM社と提携しています(出所:TDKの磁気センサの生産体制強化についてTDKとLEM、TMRベースの次世代半導体型電流センサの開発で連携

TDKはセンサ事業を重点領域の一つに位置付けています。TDK全体から見るとセンサ事業はまだ小規模ですが、成長スピードが早く、売り上げは2023年3月期までの5期で2.2倍に増加しました。センサ事業が電池事業に並ぶ収益源へと育つのは意外に早いかもしれません。

【センサ応用製品セグメントの売上高の推移(2018年3月期~2023年3月期)】

出所:TDK 決算短信より著者作成

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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