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「投資信託の運用で収入を増やして…」多額の借金を抱える50代夫婦の“あまりに危険”な返済計画

Finasee / 2024年5月2日 11時0分

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Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

世帯年収1500万円という高収入にもかかわらず、多額の借金を抱えて苦しむ中田さん夫婦。彼らの悲劇は、教育費や生活費の負担が大きくなり、キャッシングに頼ってしまったことから始まりました。

「今回だけは」という軽い気持ちで始めたキャッシング。最初はたった10万円という金額でしたが、その後も返済のために次々と別のキャッシングを利用する悪循環で、とうとう借金は500万円にまで膨れ上がってしまいました。

2人の子どもを私立中学・高校に通わせ、教育費の負担が大きかったのも借金の原因の1つですが、その後も生活水準を落とさなかった結果、ローン残高が増え続けてしまったようです。

●前編:【「老後が不安で仕方ありません」世帯年収1500万円なのに“借金生活”へ転落…50代共働き夫婦が抱える苦悩】

ぜいたくしているつもりはないのに…家計はなぜ赤字?

次に筆者は、ローン以外の家計状況を確認しました。夫婦2人の手取りを合わせると毎月約70万円あります。それでも毎月カツカツ、またボーナスで臨時費用や学費を支払っているため、貯蓄は全くできていません。支出割合の大きな項目を洗い出したところ、以下の費用が該当しました。

家賃 16万円
車維持費(駐車場代・ガソリン代・車検など込み)7万円
借金返済7.5万円
食費 15万円
ペット3万円
レジャー3万円
長男への仕送り6万円

中田さんご夫婦は「特に服も買わないし、物欲はないんですよね。ぜいたくはしないように心がけています」と言います。たとえば、子どもが食欲旺盛なため外食に行くなら食べ放題に行く。旅行は車で行って車中泊をする。また長男は一人暮らしをしているけれど、仕送りは6万円で我慢してもらっているなど、次々と例をあげてくれました。

老後破綻を防ぐために不要な支出を改善

確かに「ぜいたく」と聞くと高級バックやブランド品を買うイメージがあるかもしれませんが、ぜいたくとは必要以上にお金や物を使うことを言います。つまり、収入にあった支出でないなら、それはぜいたくにあたるのです。

その点で言うと「食べ放題だからぜいたくしていない」とは言い切れません。食べ放題でも家族全員で行くと1回1万円は超えます。年に1〜2回イベントとして食べ放題に行くのは良いですが、そもそも外食が日常化していることが現在の中田さんの家計に合っていないと言えます。また旅行も車中泊で費用を抑えていると言いますが、気軽に旅行に行ける環境が、さらに支出を増やしてしているのかもしれません。

また、長男の一人暮らしも必要かどうか考えないといけないでしょう。中田さんの自宅は千葉、大学は東京で通学に2時間かかるそうです。長男の希望で一人暮らしをさせているようですが、現在の家計ではそれを許せる状況ではありません。4年生にもなると、授業への出席日数も減る傾向にあります。長男に自宅からの通学を検討してもらう余地はあるでしょう。

中田さんは、最初にキャッシングを利用した時は「ちょっと怖かった」そうですが、今となっては、お金が足りないなら借りればいいという考えが身についてしまっています。しかし、「足りなければ借りる」という思考こそが、借金生活を抜け出せなくなる思考です。

本来は、収入の範囲で生活しないといけません。旅行など収入を超える支出を望むなら、まずはためないといけないのです。これができない限り、老後破綻は現実となるでしょう。

中田さん夫婦には、まずは支出項目を洗い出して不要な支出がないか確認し、ご自身で改善できそうなところを考えていただきました。

「借金返済のための投資」が危険な理由

中田さん夫婦は、その後、食費節約のためにランチをお弁当にしたり、外食や旅行の頻度を減らしたりするなど支出を削減させる計画を立てました。同時に、「投資信託の運用で収入を増やし、増えたお金を借金返済にあてたい」と言います。しかし、その考えは間違っています。

運用の王道は長期積立ですから、運用で利益が出たとしても、それは数年後の話です。今の生活は楽になりません。

仮に、5万円を投資して2カ月後に運よく20%の利益を獲得できたとすると1万円増えることになり、返済の足しにすることはできますが、その状態がずっと続くでしょうか? 損失が出ることも当然あります。中田さんの考えは、損失を考慮していない考えであり、非常に危険です。

家計が苦しいため、資産運用をしてお金を増やしたいと言う気持ちは分かります。しかし、資産運用をしたいなら、優先すべきはローンを返済して老後に借金を持ち込まないようにすること。少なくとも、今は資産運用にまわせるお金は全くありません。

そして、返済と同時に、これ以上ローンを増やさないために手元資金を増やす必要があります。中田さんの現在の貯蓄は約13万円。できれば、生活費の6カ月分は緊急資金として手元に備えておきたいところですが、「まずは100万円を目指しローンに頼らなくても緊急資金で耐えられる家計作りをしましょう」と提案しました。

赤字改善には夫婦の連携プレーが最も有効

赤字家計を改善するには、夫婦がその目的と方法を共有し協力することが重要です。この点、中田さん夫婦は素晴らしい連携プレーを見せてくれました。

長男に自宅通学をお願いする際は夫婦2人で説明を行いました。副業が許されている妻は、土日数時間のバイトを始めたそうですが、その間、家事は夫がフォローし、支出の見直しも1カ月ごとに夫婦で行ったそうです。

そのかいがあり、手元の緊急資金は半年で50万円たまりました。今後は残り50万円をためて、キャッシングに頼る生活を終わらせることを目指します。

また、ローンは計画通り返済していますが、「余裕が出たら繰り上げ返済して、返済のスピードを上げたいんです」と中田さんはうれしそうに語ってくれました。家計の改善を実感すると同時に、不安だった将来を変えられる楽しさも実感しているようです。

まだ完済まで数年かかると思いますが、ローンを完済し資産運用できる状態になったら、また相談にきますとのこと。楽しみに待っています。

前田 菜緒/ファイナンシャルプランナー

FP事務所AndAsset代表。ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)。大手保険代理店に7年間勤務後、独立。子育て世代向けにライフプラン相談、セミナー、執筆などを行っている。子連れでセミナーに行けなかった自身の経験から、子連れOK、子どもが寝てから開催するなど、未就学児ママに配慮した体制で相談やセミナーを実施。経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたいとの想いを持ち、活動中。

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