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列島エイリアンズ 安いニッポン編(2)昼食代600円の日本人と2000円の中国人 国内は「超円安」で留学生のアルバイトが集まらない

zakzak by夕刊フジ / 2024年4月24日 11時0分

34年ぶりの円安水準は、ついに1ドル=155円に迫る勢いとなっている。海外からの訪日客が、予想外のバーゲンセールに浮かれているのとは対照的に、輸入物価上昇にさらされている日本人の多くは、身も細る思いを強いられている。

そうしたなか、「中国の現地採用の若手スタッフとの経済力が逆転した」と話すのは、メーカー勤務の40代男性だ。

「先月、中国の現地採用スタッフを訪日させ、私が指導員の1人として数日間にわたる研修を行ったのですが、彼らは毎日、昼食時に2000円以上する焼肉ランチや回転寿司を食べていた。指導員の私はもっぱら600円の弁当です。『なんでそんなに余裕があるの?』と思って彼らの給与を調べたのですが、本社採用の新入社員と比べても、それほど差がなかった。10年ほど前まで、弊社の現地採用スタッフの給与は月10万円程度でしたが、2倍近くになっていたんです」

しみじみと、そう語り、「これは現地の人件費が高騰していることに加え、円安によるところも大きい。私の給与は10年間で全く変わらないのに…。月の小遣い4万円の私より、自由になるお金は単身の彼らの方が多いでしょうね」と自虐的に振り返った。

もともとは、低廉な人件費を目当てに生産拠点などの海外移管を進めたはずが、急激に進んだ円安のせいで、期せずして「世界同一賃金」へと向かいつつあるようだ。

一方で、都内にある〝ガチ中華〟の経営者は、円安を背景にした人手不足に悩まされているという。

「コロナ前までは、アルバイトの募集などしなくても人手に困ることはなかった。自ら『働かせてください』と言ってくる中国人留学生がたくさんいたから。でも円安の今は、飲食店でアルバイトするより、転売ヤーとか訪日中国人相手に白タクのドライバーでもして人民元を稼いだ方が儲かるので、ネットで求人広告を出してもほとんど応募がない。コロナ前に1100円だった時給を1300円にまで上げたけど、それでもダメ。人手が足りないから、元の席数を半分に減らして営業している」

日本人の資産や収入の相対的価値を下げるだけでなく、社会にゆがみをもたらす目下の超円安は、一体いつまで放置されるのだろうか。 =この項おわり

■外国人材の受け入れ拡大や訪日旅行ブームにより、急速に多国籍化が進むニッポン。外国人犯罪が増加する一方で、排外的な言説の横行など種々の摩擦も起きている。「多文化共生」は聞くも白々しく、欧米の移民国家のように「人種のるつぼ」の形成に向かう様子もない。むしろ日本の中に出自ごとの「異邦」が無数に形成され、それぞれがその境界の中で生きているイメージだ。しかしそれは日本人も同じこと。境界の向こうでは、われわれもまた異邦人(エイリアンズ)なのだ。

■奥窪優木(おくくぼ・ゆうき) 1980年、愛媛県出身。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国で現地取材。2008年に帰国後、「国家の政策や国際的事象が、末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに取材活動。16年「週刊SPA!」で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論され、健康保険法等の改正につながった。著書に「ルポ 新型コロナ詐欺」(扶桑社)など。

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