バフェットの次を行く投資術 トレーダーの最高の仕事は「何もしていないように見える」 短期売買は表面的に儲かっているようでも…手数料で損
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月10日 15時30分
私がクレディ・リヨネ銀行のトレーダーであったとき、抜群の成績をあげる仲間が何人かいた。その中には、短期売買を繰り返す人間もいた。
しかし、表面的に儲かっているように見えても、実は(回数の多い取引のための)手数料を差し引くとたいして儲かっていないどころか、実は損をしているなどということもしばしばあった。銀行によっては、手数料を損益計算に入れずに「包括的経費」=「銀行全体の経費」として処理するため、そのような「実態のない利益」が計上されるわけである。
逆に、長期取引をするトレーダーは、ほとんど手数料を支払わない。それどころか、仕事をしているようにさえ見えない。
例えば、あるトレーダーは、10年物金利スワップの素晴らしいポジションを獲得した。そのポジションによって、毎年のその銀行の支店の経費をすべて賄ったうえにおつりが出るほどの利益を得ることができたのだ。つまり、たった1回の取引をすると、10年間何もする必要がないということになる。
実際、そのトレーダーは10年間、一応オフィスに出社をしてはいたが、することがなく、暇そうにしていた。だが、それでも、他のどのトレーダーよりも稼いでいたのである。
また、別のトレーダーは、3年くらいの長期的取引を得意としており、一度取引をすると、相場がどのように動こうと意に介さず、オフィスにもたまにしかやってこない。やってきたとしても、昼頃出てきて3時には帰るという「重役出勤」である。相場が急変したときなどは、上司が慌てることもあったようだが、結果的にはいつも多額の利益を生みだしているので、多くの成功報酬を得ていた。
「投資」は非常にシビアで、「結果がすべて」である。いくら端末を叩いて売買を繰り返しても、まったく評価されない。バフェット流も、売買回数が極端に少なく「何もしていない」ように見えるが、実は大きな利益を生んでいることは、言うまでもない。 (人間経済科学研究所、国際投資アナリスト・大原浩) =敬称略
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