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列島エイリアンズ 観光公害編(2)コンビニ越しの〝映える〟富士山、訪日外国人が殺到 公道カート同様の突発型、行政が〝資源〟の景観ごと潰す皮肉

zakzak by夕刊フジ / 2024年5月8日 11時0分

「富士山ローソン」の目隠し幕用のポールを立てる工事が始まっている=1日、山梨県富士河口湖町(夕刊フジ)

訪日外国人から一定額を徴収する実質的な「観光税」の導入を検討中の大阪府。税収は観光資源の保護やオーバーツーリズム対策に充てるとしている。しかし、現在、日本で巻き起こっている観光公害が、カネでは解決できないことは前回、「公道カート」を例に出して指摘した通りである。さらにその後、観光公害に対する行政の「お手上げぶり」を象徴するような事例が話題となった。

山梨県富士河口湖町にあるコンビニエンスストア店越しに見える富士山が、訪日外国人に撮影スポットとして人気を博した結果、車道への飛び出しやゴミのポイ捨てなどの迷惑行為が続出。これに対し、地元住民から苦情が相次いだため、行政サイドは向かいの歩道に沿って高さ2・5メートル、幅20メートルの目隠しシートを設置し、富士山の姿を遮ったというのだ。苦肉の策だろうが、観光公害の対策として〝資源〟である景観ごと潰してしまうとは、皮肉というほかない。

一方で、この一件には日本各地で発生している観光公害の特性が凝縮されている。それは「日本人がさほど注目していなかった場所」が、「海外のSNSで話題となり、突然のように訪日外国人が殺到するようになった」結果、引き起こされているという点だ。

富士河口湖町によると、くだんの〝富士山コンビニ〟周辺が、訪日外国人でにぎわい始めたのは2022年末ごろから。きっかけは、海外のインフルエンサーがSNSに投稿した現地の写真がバズったことだった。

ほかにも人気アニメの舞台として知られる江ノ島電鉄の鎌倉市内の踏切や、小舟の保管庫を一階に備えた木造の「舟屋」が立ち並ぶ京都府の伊根などで指摘される事案も、このパターンで発生したものだ。

ベネチア(イタリア)やバリ島(インドネシア)、あるいは京都市の中心部のような、いわば恒久的な観光地で発生しているオーバーツーリズムであれば、観光税などによって確保した予算を投入することで、ある程度の問題は解決するだろう。オーバーツーリズムの発生源は特定されているし、そもそも地元住民の多くが観光客との共存に慣れているからだ。

しかし、日本各地で住民の生活を脅かす「海外SNSをきっかけとした突発型オーバーツーリズム」に対しては、公道カート同様にカネで解決できることは少ない。予算を組んでできることといえば、目隠しシートの設置や警備員の配備程度だろう。これでは住民の不満を解消する根本的な打開策にはなり得ない。

そして観光公害が放置されれば次に起きるのが、観光による受益者と被害者の分断だ。 =つづく

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