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マネー秘宝館 いま日本で生じている「人手不足」現象 大学生アルバイトが激減、給料だけではない「非金銭的報酬」がカギを握る時代へ

zakzak by夕刊フジ / 2024年5月8日 6時30分

深刻な人手不足に直面する飲食業。発想の転換が必要(夕刊フジ)

14世紀に大流行したペストのときもそうだったし、疫病が流行した後には必ず「経済のリセット」が起こります。旧勢力が没落して新勢力にとって変わられるとか、新たなビジネスが登場するとか。

このたび世界中で猛威を振るったコロナウイルスもそんなキッカケになったようで、街を歩くと日常のなかにさまざまな変化を感じます。

かつてのペストの時と同じく、いま日本で生じているのが「人手不足」現象。疫病流行で死亡者が増えると、必ずと言っていいほど「人手不足」の悲鳴が上がります。ペストの後にはそれが理由で多くの農場が閉鎖され、製造業が潰れました。今回もまたコロナ後の飲食店などでは深刻な人手不足が生じており、休日や営業時間短縮を余儀なくされる例が多数見られます。

多くの飲食店経営者から「アルバイトが取れない」という嘆きの声が聞かれます。何でも大学生アルバイトの応募が激減しているのだとか。

最近の大学生は昔よりまじめに授業に出ています。本人の意向とは関係なく、IT化によってキッチリ出欠が取られるため、「代返」などのズルができないのです。よって彼ら、バイトする自由時間が減っているのでしょう。また、すきま時間でも働けるタイミーのようなバイトアプリの普及によって、「今日の夜、バイトするところを探す」ことが可能になっています。これによって、1つのバイト先に長期的に勤めることが少なくなっている模様。「そのときの時間と気分でバイト先を選べる」のはむしろうらやましいです。

こうなってくると人手不足は飲食業だけの問題ではありません。アルバイトやパートによって何とか仕事を回してきた小売業、製造業、宿泊業、運送業、すべての業界で「店や工場を閉めねばならない」ほどの大ピンチを迎えているようです。いよいよここから「経済リセット」本番です。

人手不足だからといって「給料を上げれば人が集まる」という単純な問題ではありません。それは一時しのぎに過ぎません。必要なのは「働く人は何を求めているのか」という視点です。そこには金銭報酬だけでなく「非金銭報酬」が含まれます。例えば、給料は低めでも自分が成長できるとか、あるいは友だちに自慢できるとか。

某人気の外食チェーンではアルバイトの勤務初日に「welcome to ○○」というポーチをプレゼントしています。これは「われわれの仲間にようこそ!」という歓迎の印。ポーチを渡されたバイトさんは大いに気分が盛り上がるわけです。これこそは時給を超えた「非金銭的報酬」といえるでしょう。とてもうまいやり方だと思います。

ひるがえってわが国、バイトと言えば、「時給を上げればくるだろう」と高をくくっている経営者がほとんど。そろそろヤバいです。「金で人を釣れる」時代はすでに過ぎ去ったかもしれません。還暦すぎの私だって金のために働くのはイヤです。よい機会です、非金銭的報酬について見直してみませんか?

■田中靖浩(たなか・やすひろ) 公認会計士、作家。三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社勤務を経て独立開業。会計・経営・歴史分野の執筆・講師、経営コンサルティングなど堅めの仕事から、落語家・講談師との共演、絵本・児童書を手掛けるなど幅広くポップに活躍中。「会計の世界史」(日本経済新聞出版社)などヒット作多数。

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