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「100年ぶりパリ開催」の意義をIOCはどう考えるか アインシュタインとフロイトが導き出した戦争終焉の解【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月10日 9時26分

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五輪休戦宣言の署名式に出席したIOCのバッハ会長(C)ロイター

【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判】#2

 今から92年前に国際連盟が希代の物理学者アインシュタインに、「あなた自身が相手を選び、最も大切な問いについて手紙を書いて欲しい」と依頼した。彼は心理学者フロイトを選び、「人間を戦争のくびきから解き放つことはできるか?」を問うた。20世紀を代表する2人の知者がこの根本的問題を論じていたわけだが、その解は「文化の発展を促せば、戦争の終焉に動き出す」だった。第1次世界大戦が終わり、平和への希求の中で生まれた解だ。

 同時代、ひとりのフランス人もこの問題に解を求めた。それは新たに登場した「身体に関わる文化」だった。それはスポート(Sport)と呼ばれた。世界中の青年たちがスポートを通じてつながることで未来の平和な世界を実現しようとしたのだ。その人の名はピエール・ド・クーベルタン。1894年にパリで発足した国際オリンピック委員会(IOC)は古代ギリシャのオリンピア祭を復興させる。1924年第8回オリンピック競技大会がパリで開催され、第1次世界大戦の復興を象徴した。それは彼がIOC会長として果たした最後の仕事であった。

 その地で100年ぶりに7月26日からオリンピックが開催される。このオリンピックに求められるものは必然、「スポートによる世界平和構築」のメッセージであるべきだ。2022年北京冬季五輪閉会の4日後にロシアはウクライナに侵攻、オリンピックの平和構築装置の基幹である「オリンピック休戦」を打ち破った。IOCはロシアと同盟国のベラルーシに制裁を科し、同国選手は自国を代表しては五輪に参加できない。

 ウクライナ戦争に終わりが見えない今、92年前の問いはいまだに有効である。

■バッハ会長の呼びかけも…

 パリ五輪が実現すべきは「オリンピック休戦」である。しかし、IOCはパリ五輪を最もインクルーシブで最もサステナブルな大会として国連が推奨するSDGsを実現する優等生ぶりに胸を張るばかりだ。

 パリ五輪休戦決議は昨年11月、第78次国連総会で採択されている。五輪開催7日前からパラリンピック閉会7日後までの期間、加盟国に全紛争の休戦を求める。バッハ会長は4月15日にギリシャのオリンピアで五輪休戦宣言の署名式に参列。「平和や相互理解の実現を政治家や軍の高官に任すべきではない。決定権を持つ彼らを平和的解決へと導くため、みんなが役割を担っている」と呼びかけたが、それにはまずはIOC自らが必死に汗をかかねばならない。

 今、オリンピックの存在意義も問われているのだ。

(春日良一/五輪アナリスト)

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