地味な無地ワンピースに合わせるなら…おしゃれ度が一気に爆上がりする「若い頃に買ったあのアイテム」とは【74歳の着こなし術】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月30日 11時15分
20代の頃の服を工夫して着こなし、素材の味を活かした料理を楽しむなど、そのライフスタイルが多くの人の支持を集めている美術エッセイストの小笠原洋子さん。「一生着られそう」な服選びを意識しているという小笠原さんのおしゃれ術について、著書『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』(扶桑社)から、内容を一部抜粋しご紹介します。
安くておしゃれなチープシックって?
おしゃれは、お金をかけなければできないものではありません。値札をつけて出歩くわけではないので、一つ見た目の演出を試みてみてはいかがでしょう。
私は20歳の頃、「チープシック」という言葉を知りました。わかりやすく言うならば、「品のよい安物」。お金をかけずにおしゃれを楽しむとして、1970年頃に提言されました。それ以来、これが私の服装のテーマです。
実際、20歳のときの服を今でも着ているほどです。これを実現するためには、衣服は非流行、反流行をとり入れることが重要です。ブティックで、憧れの人が着ていた素敵な服を見つけても、トレンドのデザインや、ブランド品に目が奪われそうになっても、足早にそこをスルーして「それ以上」の服を探すのです。それは、自分だけが着こなせる服です。それには感性が問われますので、自分で自分自身が見えていないと探しにくいでしょう。「それ以上」を探すことは、センス磨きと自己表現の実験現場かもしれません。
探すべきは、第一にありふれていないもの。できれば装飾過多ではなく、落ち着いた色合いで、素材感が生きている服。でも私の場合、いちばん大事にしてきたのは、「一生着られそう」な服選びです。成人式の晴れ着の代わりに買ってもらったハーフコートは、とくに長く着ることを意識した最初の服選びでした。時代を超えて着るのだからこそ、今流行しているスタイルやデザインではなく、どの時代にも着られてきた基本的な形で、ベーシックな色を選んだのです。そういう意味で、「流行には敏感であれ!」です。
大事なのは素材です。高価であれば、だいたい外れがありません。しかし安くても、たまたまいい繊維だったり、とても上質に見える生地も見つかるものです。安かろう、悪くもなかろう。ここが服選びのテクニック。そしてチープシックの肝ですね。
では、うっかり衝動買いし、めったに着ない服はどうするのかと言えば、リメイクにチャレンジし、一部を変えるなどして、着られるようにします。また、
母のお古で地味すぎて着なかったワンピースも、帽子についていたコサージュを外して襟元に留め、平凡なベルトバックルを取ってリボン結びにしてみたりすると蘇ることも。新調できなくても、こんなふうに今あるもので創意工夫して着回しをしても、新鮮な装いを楽しめると思います。
チープシックは洋服以外でも言えます。たとえば、切り干し大根であれ、お豆腐であれ、気に入った器に体裁よく盛れば、おいしそうに見せられるでしょう?
100円ショップにも、気の利いたデザインの小物が出回っているものです。安物のオーナメントでも、場違いなところ(姿見のいちばん上など)に飾ってみると、センスが価格を超えます。そして高っぽく見せるためには、単独で飾ったり置いておいたりするのがいいのです。そのためにも複数を買い込まない。それを置く周辺もさっぱりと片づけてみましょう。
普段着をパターン化。少ない服で着回し上手に
おしゃれは、多くの服を持っていればできるわけでもありません。最小限の服でやりくりするには、今持っている服をしっかり管理することです。先に述べたとおり、私はワードローブを、ジャケット、スカートやブラウスなどジャンル別にカードに書き出して管理しています。おかげで一目瞭然、パッと着回しが思い浮かぶようになっているので、外出時も慌てません。
ところで、カーディガン一枚でも、中に着るのがセーターとシャツとでは、まったく印象が違いますよね。あるいは赤いカーディガンに白いセーターを合わせた場合と、青いシャツの場合は、完全に別の装いです。私は同系色を組み合わせることが多いのですが、あるときピンクのセーターに水色のカーディガンを、じつに上手に合わせていた人を見て驚きました。つまり服装は全体とのバランスが重要で、そのバランスの内訳には、着る人の髪型やアクセサリー、そしてなによりその人本体から醸し出されるものが含まれているのです。
また、ワンピース一着でもいろんな着回しができます。地味な色の無地なら、ちょっと派手めのベストも合いますし、デザイン力のあるアクセサリーにも挑戦できます。若かりし頃の私は、とにかくオリジナル性のある衣類に惹かれていたものです。当時の服もリメイクすれば、70歳を過ぎた今でも着られているわけです。老いてもまだわくわくしながら着てみるのは精神的な幼さでしょうか。
幼稚さのおかげで、服を新調しなくとも、無限のコーデが思い浮かぶようです。まさに「チープシック」のなせる業です。
小笠原洋子 美術エッセイスト
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