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俺は一体どうすれば…〈メタボ体質〉50歳男性、「年金繰上げ受給」決めるも「繰下げ」にも後ろ髪…それぞれのメリット・デメリットは?【社労士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月6日 13時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

独身のAさん(58歳)はメタボ体質で、50歳を過ぎると健康診断にいつも引っかかるようになりました。自身の生活習慣からして長生きできないだろうと思い、年金は60歳で受け取ることを考えます。しかし、想定以上に長生きした場合、年金だけで医療費・介護費を賄えるか不安が残ります。そこで本記事では年金の「繰上げ・繰下げ受給」それぞれのメリット・デメリットについて、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・角村俊一氏が解説します。

繰上げる? 繰下げる? 年金いつからもらうか問題

メタボ体質のAさん(58歳)は、50歳を過ぎたころから会社の健康診断でいつも引っかかります。

ここ数年は血圧や尿酸値、コレステロール値がとても高く定期的に通院はしていますが、医者から処方された薬は面倒で指示通りに飲めていません。独身のため外食が多く、お酒も大好き。がんの家系ということもあり、あまり長生きできないのではないかと思っています。

先日、会社で受講した「定年後の生活設計を考えるリタイアメントセミナー」で年金の繰上げ・繰下げ受給の話を聞き、どうせ長生きできないだろうから60歳になったらすぐに年金をもらおうと考え始めました。

一方で、思った以上に長生きしてしまった場合、医療費や介護費が心配でなりません。少しでも年金の受給を遅らせて、その額を増やそうかとも考えます。

「いったい俺はどうすればよいのだろうか……」とAさんは頭を抱えてしまいました。

増える年金、減る年金

年金の繰上げ・繰下げ受給のメリットとデメリットとして真っ先に挙げられるのが、年金の増額と減額です。

年金を増やす方法として知られるのが受給開始年齢の繰下げ。本来の受給開始年齢である65歳で受給せず、66歳以降に受給を繰下げた場合、年金は1ヵ月あたり0.7%増額されます。これが繰下げ受給のメリットの1つです。

受給開始を75歳まで繰り下げると増額率は84%です。たとえば、年金額が月15万円(年180万円)の方が75歳まで繰り下げた場合、受給できる年金額は月27.6万円(年331.2万円)まで増額されます。

一方、本来の受給開始年齢である65歳を待たずに前倒しで年金を受給した場合は年金が減額されます。これが繰り上げ受給のデメリットの1つです。減額率は1ヵ月あたり0.4%(昭和37年4月1日以前生まれの方は減額率0.5%)なので、60歳から受給すれば年金額は24%減になります。

たとえば、年金額が月15万円(年180万円)の方が60歳から受給した場合、受給できる年金額は月11.4万円(年136.8万円)まで減額されます。

繰上げ受給のデメリットはいろいろ

繰上げ受給の場合、65歳まで待たずに年金を受給できること自体はメリットだといえるでしょう。しかし、その額は減らされるというデメリットがあります。また、その他にもデメリットがありますからいくつか挙げてみましょう。

  • 一度繰上げ請求をすると取り消すことはできず、減額された年金を一生涯受け取ることになる。
  • 繰上げ受給は老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金(厚生年金)を同時に行う必要があるため、柔軟な老後の生活設計ができない。65歳以降であれば、たとえば、65歳から老齢厚生年金を受け取り、老齢基礎年金は繰下げ待機をして年金額を増やすということが可能。
  • 繰上げ受給をしたあとに障害状態になった場合でも、原則として障害年金を受け取れない。
  • 老齢厚生年金に加給年金が付く場合でも、加給年金は繰上がらない(65歳になってからの受給)。
  • 繰上げ請求すると国民年金に任意加入できず、また、保険料免除や納付猶予を受けた期間の追納もできなくなる。

そして、気になるのは繰上げた場合の受給総額です。60歳から受給した場合の総額と65歳からの受給総額がほぼ同額となるのは80歳~81歳。ここまで長生きできないのであれば繰上げて受給したほうがよいということになりますが、寿命は誰にもわかりません。

繰下げ受給はメリットだらけ?

では、繰下げ受給にはデメリットはないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。繰下げ受給のデメリットをいくつか挙げてみましょう。

  • 長生きできなければ、65歳から受給した場合の年金総額のほうが多くなる。年金を繰下げた場合、65歳から受給したときの総額とほぼ同じになる目安が11年~12年。
  • 繰下げ受給により年金額が増えると、税金や社会保険料も増えてしまう。思った以上に手取り額が少なくなる可能性も。
  • 一度繰下げ請求をすると取り消すことはできず、さらに増額を図ることはできない。
  • 老齢厚生年金の繰下げ待機期間中には加給年金も受給できない。
  • 老齢基礎年金を繰下げる場合、繰下げ待機期間中に振替加算は加算されない。
  • 加給年金と振替加算は繰下げても増額されない。

年金は損得ではないが…

年金は社会保険制度なので損得で考えるべきではありませんが、65歳から受給せずに70歳や75歳から受給を開始して数年で亡くなれば、やはり損したと捉える方が多いでしょう。

人の寿命は誰にもわからないので、繰下げ受給がメリットになるかどうかは運命次第。たとえば、70歳から受給すれば81~82歳くらいまで生きた場合、75歳から受給すれば86~87歳くらいまで生きた場合に65歳から受給した場合とほぼ同額になります。

年金を何歳から受給するかについては、預貯金などの資産状況はもちろん、自身の健康状態や各年齢時点における平均余命などから検討することになるでしょう。

参考までに、昨年末に公表された「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(厚生労働省)から、年金の繰上げ・繰下げ受給の状況をみてみると、繰上げや繰下げをしている方はそれほど多くありません。

寿命という誰にも分らない要素があるため、本来年齢で受給する方がほとんどであると考えられます。

人生100年時代。Aさんは会社で受講したセミナー資料を手元に、定年以降の生活設計を真剣に考えようと思ったのでした。

角村 俊一 角村FP社労士事務所代表 特定社会保険労務士/CFP

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