月収46万円・45歳の大卒サラリーマン夫死去、痛恨のミスで「遺族年金70万円」もらい損ね、妻、悶絶【子のない夫婦の悲劇】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月6日 7時15分
難しい日本の年金制度。実際に年金を受け取る際、書類の記入を進めていくと「はて、これはどういうこと?」と手が止まることもしばしば。このとき訳も分からず、とりあえずで進めていくと、後悔することも。みていきましょう。
45歳の夫死去…子のない妻、もらえる遺族年金はいくら?
一家の大黒柱が亡くなったとしたら……遺族のための社会保障が遺族年金です。万が一のときに備えて生命保険に加入するように、どれくらいの遺族年金が支払われるか、知っておいても損はありません。
まず国民年金に由来する遺族基礎年金。これは子育て中の家族に万が一があったときの社会保障。そのため「子がいること」が前提となります。年金額は令和6年4月分から「816,000円+子の加算額」(昭和31年4月2日以後生まれの場合)。子の加算額は1~2人目が各23万4,800円、3人目以降が各7万8,300円です。
次に厚生年金に由来する遺族厚生年金。遺族基礎年金のように子の要件はなく、より受給対象はより広くなります。その年金額は死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額になります。さらに子どもがおらず遺族基礎年金が受け取れない40歳から65歳の妻は、中高齢寡婦加算として、年61万2,000円(令和6年度)を受け取ることができます。
では実際に遺族年金はどれほどになるのか、子どものいない45歳夫婦を例に考えてみます。夫は大卒で、平均的な給与を手にしてきたサラリーマン。年金加入期間は、国民年金の納付期間が3年(36ヵ月)、全額免除期間が3年(36ヵ月)、厚生年金の加入期間が19年11ヵ月(239ヵ月)だとします(計311ヵ月)。
大卒サラリーマンの夫、社会人のスタートは少々遅く、20代後半になってから。給与は月収で28.3万円、賞与も含めた年収が474.0万円。年齢とともに給与は上がっていき、亡くなる直前には月収46.7万円、年収774.5万円ほどになっていたと考えられます。
【年齢別・大卒サラリーマンの平均給与】
20~24歳:243,200万円/3,561,800万円
25~29歳:282,700万円/4,740,000万円
30~34歳:325,600万円/5,493,600万円
35~39歳:378,500万円/6,455,400万円
40~44歳:424,100万円/7,041,500万円
45~49歳:467,400万円/7,745,000万円
50~54歳:505,700万円/8,396,500万円
55~59歳:532,300万円/8,791,200万円
60~64歳:449,100万円/6,901,400万円
※数値左より月収/年収
遺族年金の請求「短期要件か、それとも長期要件か」どちらが得か?
では具体的に計算していきましょう。
まず遺族基礎年金。子どもがいないので、受給対象外となります。仮に小学生の子どもが2人いたとしたら、年128万5,600円、1ヵ月あたり10万7,133円を受け取ることができます。
次に遺族厚生年金。実は請求時の選択により70万円近い差となります。どういうことなのでしょうか。「遺族年金の請求書」(年金請求書 様式第105号)のなかには、以下、ア~オについて「はい・いいえ」で答える項目があります。
ア 死亡した方は、死亡の当時、厚生年金保険の被保険者でしたか。
イ 死亡した方が厚生年金保険(船員保険)の被保険者もしくは共済組合の組合員の資格を喪失した後に死亡 したときであって、厚生年金保険(船員保険)の被保険者または共済組合の組合員であった間に発した傷病 または負傷が原因で、その初診日から5年以内に死亡したものですか。
ウ 死亡した方は、死亡の当時、障害厚生年金(2級以上)または旧厚生年金保険(旧船員保険)の障害年金(2級相当以上)もしくは共済組合の障害年金(2級相当以上)を受けていましたか。
エ 死亡した方は平成29年7月までに老齢厚生年金または旧厚生年金保険(旧船員保険)の老齢年金・通算老齢 年金もしくは共済組合の退職給付の年金の受給権者でしたか。
オ 死亡した方は保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間(死亡した方が大正15年4月1日以前 生まれの場合は通算対象期間)を合算した期間が25年以上ありましたか。
さらに『アからウのいずれかに「はい」と答えた方で、エまたはオについても「はい」と答えた方』に対して、以下からいずれかを選択するように促されます。
□年金額が高い方の計算方法での決定を希望する。
□指定する計算方法での決定を希望する。
⇒右欄のアからウのいずれか、またはエもしくはオをOで囲んでください。
ここが重要な分かれ道となります。
遺族厚生年金には上記ア~ウの要件である「短期要件」と、エ~オの「長期要件」があり、「短期要件」は保険料納付要件*もあわせて満たしている必要があります。
*死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あるか、または死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料滞納期間がないか、いずれかの条件を満たすこと
実際に遺族厚生年金額を計算する際、「短期要件」では、厚生年金加入期間が300ヵ月に満たない場合には300ヵ月として計算し、「長期要件」では実際の被保険者期間で計算します。また中高齢寡婦加算は長期要件での請求の場合、亡くなった夫の厚生年金の被保険者期間が240ヵ月以上でなければなりません。
それらを加味して単純計算すると、短期要件の場合、中高齢寡婦加算がされ「110万5,290円」。長期要件の場合、夫の厚生年金被保険者期間が239ヵ月なので中高齢寡婦加算はなく「39万2,987円」。前述の通り、年間70万円近い差が生じるわけです。
これはあくまでも一例で、どんな場合でも「短期要件」を選択したほうが良いというわけではありません。実際に請求する場合は、年金事務所に相談するか、「年金額が高い方の計算方法での決定を希望する。」にチェックをいれるほうがよいでしょう。
[参考資料]
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