小林製薬の「紅麹」問題 「機能性表示食品」見直しの背景に何があるのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月10日 6時13分
小林製薬が大きく揺れている、背後に何が?
「未知の物質がどうやって混入したのか究明すべき」という話が、いつの間にやら別の「犯人」を吊(つる)し上げる動きにすり替わってしまったようだ。
小林製薬のサプリメント健康被害問題を受けて3月末から、こんな論調のマスコミ報道が増えてきている。
「小林製薬『紅麹』も分類 増える機能性表示食品、問われるモラル」(『毎日新聞』 3月27日)
「紅麹など『機能性表示食品』始まりは安倍政権の『経済成長戦略』 トクホより緩い規制、企業には便利」(『東京新聞』 3月28日)
「機能性表示食品のデータベース 約15%半年以上更新されず」(『NHKニュース』 3月30日)
このタイミングでここまで分かりやすく「犯人」扱いされれば当然、行政も動く。4月2日には、消費者庁が機能性表示食品制度のあり方について検討を進める対策チームを立ち上げた。現在およそ7000ある機能性表示食品の届出をしている1700の事業者に対して、健康被害の有無などの点検結果を取りまとめ、課題などを検証してその結果を5月末をめどにまとめていくという。
ただ、冷静に考えると、これはかなりダイナミックなミスリードだ。
ご存じのように今、健康被害を引き起こしていると言われているのは、製品と紅麹から検出された「未知の成分」だ。これは青カビからできる毒性の高いプベルル酸という可能性も浮上して、混入経路や成分特定が進められている。
一方、諸悪の根源とされている「機能性表示食品制度」は読んで字のごとくで、パッケージや広告における「表示」のルールにすぎず、そもそも製造工程の安全性をチェックするものではない。
「紅麹」という成分そのものが人体に危険だという話ならば、「怪しい成分を商品名にして効果をうたいやがって」とボロカスにたたかれるのは理解できる。が、今回はそういう話ではない。
にもかかわらず、「犯人」扱いされてしまっている。これは、本制度が安倍政権時につくられたことと無関係ではない。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ではないが、安倍元首相を糾弾する人たちは、その政策もすべて「悪」としてたたかないと気が済まないものなのだ。
●事業者からすれば「経営リスク」にもつながる
これは機能性表示食品を扱う事業者からすればとんでもない「とばっちり」であることは言うまでもないが、それに加えて「経営リスク」でもある。
『日本農業新聞』が2月に報じたところによれば、2023年の機能性表示食品の市場規模は前年比19.3%増の6865億円。人口減少で多くの市場がシュリンクする中、右肩上がりで増えている有望市場だ。ただ、それは裏を返すと、この成長に依存している事業者もかなりいるということだ。
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