ブーム来る? 「和文バリアブルフォント」の世界
ITmedia NEWS / 2024年4月23日 18時14分
4月10日はフォントの日なんだそうである。フォー(4)とトウ(10)でフォントなのだろうが、マジか。
そんな事もあり、4月10日は新しいフォントがいくつか発表された。今年の目玉はなんといっても「和文バリアブルフォント」であろう。
われわれが普段使用するフォントは、同じデザインでも細いもの、太いもの、横が詰まったものなどがそれぞれ個別のフォントとして提供され、1つのファミリーを形成している。
一方バリアブルフォントは、そうした文字の変形を1つのフォントで提供していこうという比較的最近のフォントフォーマットで、米Adobe/米Apple/米Google/米Microsoftが共同開発した。フォントパラメータとして、太さや字幅がバリアブルで変更できるため、従来はファミリーで提供しなければならなかったフォントデータが、1つのフォントで小さく提供できるというメリットがある。
もちろんデザインする側も、細いか太いかの2択ではなく「中間」も選べるし、縦長、横長も選べるので、表現の幅が広がるわけである。ただこれまでバリアブルフォントは英文フォントが中心で、和文フォントは極端に少なかった。和文フォントでは、少なくともJIS規格で定められた6879文字をデザインしなければならず、開発に時間がかかる。
そんな和文バリアブルフォントだが、モリサワから「DriveFlux」、Adobeから「百千鳥(ももちどり)」の2書体が発表された。とはいえ現在はまだ開発発表であり、実際の提供はもう少し後になる。
Adobeでは同日、記者発表会を開催し、「百千鳥」の詳細が明かされた。バリアブルフォントで何ができるのか、従来のフォントでは何が問題だったのか、資料をもとに探ってみたい。
●フォントの考え方が変わる
百千鳥をデザインしたのは、Adobeでフォントフェイスデザイナーを務める西塚涼子氏だ。2023年12月に公開された「貂明朝アンチック」に続く作品ということになる。
かつて日本で多くみられたホーロー看板やロゴ、見だしの文字は、一定の幅や面積を均等に埋めるように描かれていた。これは手書きだからなせる技である。書体のスタイルは統一しながら、太さ、縦横比を巧みに変えて文字をデザインするという考え方である。
こうした圧縮表現は、印刷・出版がデジタル化され、フォントに頼るようになると、難しくなっていった。これをフォントでやれないかという着想は15年前からあったそうだが、技術が追い付かなかった。だがバリアブルフォントが企画化され、エンジンが進化することで、やれる見通しがたった。フォントデザイン自体は完了しており、あとはエンジンのチューニングが残っている。このため、現時点では発表だけ、という格好になっている。
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